最近、我が家の冷蔵庫の横には一枚の紙が貼ってあります。
娘たちのお手伝いポイント表です。
毎日そこへ、今日獲得したポイントが書き込まれていきます。
最初は単なるお小遣い対策のつもりでした。
けれど今では、その紙を見るたびに、私は少し不思議な気持ちになります。
子どもたちの成長記録を見ているような気持ちになるのです。


そもそものきっかけは、物価高でした。
文具もお菓子も雑貨も、何もかも高くなりました。
娘たちからは、
「お小遣い増やして」
という要望が頻繁に飛んできます。
気持ちはよく分かります。
私が子どもの頃より、今の子どもたちの世界には魅力的なものがたくさんあります。
かわいい文房具。
推しグッズ。
友達とお揃いにしたい小物。
欲しいものは次々に出てくるのでしょう。

ただ、我が家の家計事情としては簡単に増額とはいきません。
夫は会社員ですが、私はフリーランスです。
仕事量によって収入が変わります。
だからお金の使い方には、どうしても慎重になります。
そんな時、いとこから聞いたのがお手伝いポイント制度でした。
家事をしたらポイントがもらえる。
ポイントはお小遣いになる。
単純ですが、なかなか面白い仕組みです。

私はすぐに導入しました。
すると娘たちは予想以上にやる気になりました。
正直、ここまでとは思いませんでした。
ゴミ捨て。
洗濯物運び。
食器下げ。
テーブル拭き。
次々に仕事を見つけてきます。
その様子を見ていると、少し仕事の現場に似ているなと思ったのです。

私は普段、カメラマンとして活動しています。
仕事は待っているだけでは来ません。
新しい撮影先を探したり。
SNSを更新したり。
企画を考えたり。
「これをやったら次につながるかもしれない」
ということを積み重ねています。
娘たちも同じでした。
最初は与えられたお手伝いだけしていたのに、だんだん自分で仕事を探し始めたのです。

ある日など、
「ママ、これもポイントになる?」
と聞いてきました。
見ると、散らかっていたリビングのクッションがきれいに並べられています。
私は思わず笑ってしまいました。
営業提案みたいです。
自分で新しいサービスを作って持ち込んできたのですから。

また別の日には、
「これもやっといたよ」
と洗濯物を畳んでいました。
以前なら頼まれても嫌そうな顔をしていたのに、今では自ら動いています。
お金の力は偉大です。
けれど、それだけではない気もしています。
自分が役に立ったことが目に見える。
それが嬉しいのかもしれません。

私は写真を撮る時、人の表情を見るのが好きです。
特に自然な笑顔。
作った笑顔ではなく、
「できた」
「楽しかった」
そんな瞬間に出る顔です。
娘たちがポイントを書き込む時にも、似た表情をすることがあります。
少し誇らしそうで、少し嬉しそう。
その顔を見ると、お金だけではない何かを得ているのだろうなと思います。

もちろん、母としては現実的な問題もあります。
月末のポイント集計です。
最初は大した金額にならないだろうと思っていました。
ところが計算してみると、なかなか立派な数字になっています。
私は電卓を見ながら、
「あれ?」
となりました。
娘たちは満面の笑みです。
私は内心、
これは想定外だったな。
と思いました。

けれど、その時ふと気づいたのです。
娘たちが頑張った分だけ、私も助かっていることに。
食器を片付けてくれる。
洗濯物を運んでくれる。
ゴミをまとめてくれる。
その積み重ねで、私の時間が少し増えています。


撮影準備をする時間。
原稿を書く時間。
写真整理をする時間。
ほんの十分、十五分かもしれません。
けれどフリーランスにとって、その時間は意外と大きいのです。
以前なら夕食後に慌てて片付けていた仕事を、少し余裕を持って進められるようになりました。
そう考えると、お手伝いポイントは単なる支出ではありません。
私の仕事時間を生み出してくれているとも言えます。


最近、新しい撮影案件の営業も少し頑張っています。
娘たちのポイント精算日に備えるためでもありますが、それ以上に、娘たちの姿を見て刺激を受けたのです。
娘たちは自分で考え、自分で動き、自分でポイントを増やしています。
だったら私も頑張ろう。
そんな気持ちになりました。
親が子どもを育てているつもりでも、実は親のほうが学ばせてもらっていることがあります。


今回のお手伝い制度も、まさにそうでした。
お金を稼ぐこと。
働くこと。
誰かの役に立つこと。
そんなことを、娘たちは遊びの延長のように学び始めています。
そして私は、その姿を少し離れた場所から見ています。
カメラのファインダーをのぞく時と少し似ています。
主役は被写体です。
私はその成長を見逃さないようにシャッターを切るだけ。

冷蔵庫横のポイント表は、今日も数字が増えています。
家計簿的には少し怖いです。
でも親としては、なかなか悪くない光景です。
来月もまた新しいポイントが並ぶのでしょう。
その頃には私も、新しい仕事をひとつ増やせているといいなと思っています。
娘たちに負けないように、母も頑張らなくてはいけませんから。