第1回では全体像と、ジャンルを問わず共通する最初の1本について書きました。第1回はこちら。
今回はそこから先、ジャンルごとの詳細に入ります。
エアライナー(定期旅客機)
エアライナーは定期旅客機のことです。定期的に運航して旅客を運ぶ飛行機で、一般にジェット機やプロペラ機を指します。
楽しみ方は、実際の運航手順をそのままなぞること。
運航の計画を立てて、管制とやり取りをして、プッシュバック、エンジンスタート。管制とやり取りしながらタキシングをして離陸。
そのあとは計器飛行でオートパイロットを活用して目的地まで飛び、着陸して、スポットまで機体を導く。
一連の手順を正確に踏んでいく積み重ねが楽しいジャンルです。
ヨークかサイドスティックかは、機体に合わせるのが大前提。エアバスならサイドスティック、ボーイングやエンブラエルならヨーク。
私はHoneycomb AeronauticalのAlphaヨークを使っていました。
スロットルは、その機体のエンジン数に合わせて軸数も揃えていると良いです。双発機なら2本、四発機なら4本という具合。
さらに、ジェット機やリバースを備えたプロペラ機の逆推力が使えるスロットルであれば、雰囲気はより高まります。着陸後にリバースレバーを引き上げる、あの動作が手元で再現できるかどうかは大きな差です。
私はHoneycomb AeronauticalのBravoスロットルを使っていました。レバーヘッドが交換式なので、エアライナー構成にも小型機構成にも組み替えられるのが便利です。
ラダーは想像以上に重要です。
離陸の際は横風によって針路がずれるので微調整が必要になりますし、着陸時も同様。
横風が吹いているときに機体の軸を風上にずらしたまま進入して、接地の寸前で滑走路の方向に合わせる。このデクラブという技法で着陸する場合には、繊細なラダー操作が要ります。
巡航はオートパイロットにすることが多いので、その数少ない手動操縦の場面をどれだけ味わえるかが満足度を左右します。
追加機材は、計器飛行をやるならオートパイロットの入力パネルがあると気分が高まります。
私はMiniCockpitのオートパイロットコントロールパネルを使っていました。高度や速度、ヘディングを物理的なノブで回せるようになると、操作の質が変わります。
さらに拡張するなら、無線用のパネルや、運航経路の入力用のパネル(FMS/CDU)も販売されています。
視界用の機材については、エアライナーでは素早い視界移動は必要ありません。
飛行時間が長くなるので、VRを使う人は少ないジャンルです。数時間のフライトの間ずっとヘッドセットを被り続けるのは現実的ではないので、マルチモニタやワイドモニタを使う人が多いでしょう。
ソフトはMSFS2020/2024か、X-Plane 12。
いずれも標準機体で飛べますが、このジャンルは有償アドオン機体が事実上の前提になりがちです。PMDGの737、FenixのA320などが定番。
まずは無料のFlyByWire A32NXから始めてみるのも良い選択です。
買い足す順番は、スティックのまま行くか、ヨークに進むかで必要な出費が大きく変わります。
エアバス系の機体を飛ばすのであれば、3-in-1スティックをそのままサイドスティックとして使い続けられます。ひねりでラダー、小さなレバーでスロットルが操作できるので、最初の段階では追加購入なしで飛べます。
ただし、ひねりのラダー操作ではデクラブ着陸の醍醐味までは味わえません。なくても飛べるが、楽しむためには必要。ラダーペダルはそういう位置づけです。
ボーイング系に進む場合はヨークが必要ですが、ここで話が変わって3点セットになります。
ヨークにはひねりラダーが存在しません。構造上、ヨークを回す動作はエルロンに割り当てられているので、ラダーの入る余地がないからです。そのためラダーペダルとの同時購入が必須になります。
3-in-1スティックはスティック・ラダー・スロットルが1台に統合されていますが、そちらのラダーは指で操作する方式でペダルではありません。デクラブを足で味わいたい向きには、結局ペダルが必要です。
エアバス系なら追加出費は少なく、ボーイング系なら覚悟が要る。機体の好みがそのまま予算の話に直結するのが、このジャンルの特徴です。
コンバットシム(軍用機での戦闘)
※第1回で書いたとおり、私自身はこのジャンルを未経験です。以下は調査に基づく整理になります。
DCS WorldやFalcon BMSで、空対空戦闘、空対地攻撃、空対艦攻撃を行うジャンルです。戦闘機や攻撃機に乗り、素早い戦闘を行うことを想定しています。
操縦系統としてはHOTASを購入することが多いです。
HOTASとはHands On Throttle And Stickの略で、手を操縦桿やスロットルから離さずに個別のボタンを操作できる専用のスティックとスロットルのこと。戦闘中に手を離してキーボードを叩く余裕はありませんから、これは必須の考え方です。
このスロットルも機体ごとにボタン配置が違うので、実機と同じものを購入する場合があります。
分岐点になるのは、機体専用にするか汎用にするかです。
実際の飛行機はスティックやスロットルだけではなく、コックピット中にたくさんのボタンがあります。実機を忠実に飛ばそうと思うと、その周辺のパネルも追加購入しなければならず、全て再現しようとすると費用は相当かさみます。
一方で、WINWINGなどから兵装・エアブレーキ・フラップといった具体的な操作パネルが比較的安く販売されています。ただしF-15、F/A-18、F-16といった専用の機体単一のものになってしまうので、汎用性は下がります。
とはいえDCSは機体をアドオンとして5,000〜10,000円で購入する必要があるので、乗る機体を決めてから、それに合わせた環境を構築するのが合理的でしょう。
複数の機体を楽しみたい場合は、最初からVIRPILやVKBなどの汎用的なスティックやスロットルを選ぶのも良いと思います。
ただし汎用品には欠点もあって、スイッチに名称が書いていないため、どれが何の操作か覚えておく必要があります。
パネルの必要度は全ジャンル中で最も高くなります。ただし、どこまで再現するかは完全に本人次第でもあります。
視界用の機材は、戦闘するジャンルですから素早い視点移動が必要です。VRを使うか、モニタの場合もTrackIRやAITrackで顔の向きによって視界をコントロールする人が多くなります。
指でハットスイッチを操作して視界をコントロールしていては戦闘に支障をきたしますし、そのハットスイッチも兵装や機体の操作に使うので、視点移動に割り当てる余裕がありません。ここがエアライナーとの決定的な違いです。
逆に省略してよさそうなのはラダーです。
多くの軍用機はプロペラ機ではないので、離陸時にトルクによるモーメントを調整する必要がありませんし、横風の影響も受けにくい。ただし空母への着艦時や、横風が強いときには重要になります。
なお旅客機の場合はタキシングに使う軸が尾翼のラダーとは別で、前輪の向きを操作する専用のティラー(ハンドル)を別途購入する場合があります。戦闘機の場合は足のラダーで尾翼の舵と前輪の向きの両方を操作するのが一般的です。
ここまでは現代のジェット戦闘機を前提に書いてきましたが、第二次世界大戦機(ウォーバード)を扱うフライトシムも存在します。IL-2 SturmovikシリーズやDCS Worldの大戦機モジュールなど。
こちらはレシプロ機ですから、必要な機材の傾向はジェット戦闘機よりもジェネラルアビエーションに近づきます。今回は詳しく触れませんが、そういうジャンルもあるということだけ紹介しておきます。
ソフトについて。DCS Worldは基本無料で、Su-25TとTF-51Dが最初から飛ばせます。乗りたい機体をモジュールとして買い足す方式で、1機5,000〜10,000円程度。セールの頻度が高いのも特徴です。
マルチプレイのサーバー環境が整っており、機体の選択肢もかなり広い。
Falcon BMSはFalcon 4.0(1998年)の大規模改造MODで、MOD自体は無料。ただし正規のFalcon 4.0ライセンスが必要で、GOGなどで10ドル前後です。最新は4.38系。
F-16に特化した作りで、戦況が自動で推移するダイナミックキャンペーンが最大の特徴です。1万円台で最新レベルのコンバットシムが手に入るという点で、BMSのコストパフォーマンスは頭ひとつ抜けています。
買い足す順番はHOTASですが、乗る機体を決めてからです。順序が逆になると、専用パネルへの投資が無駄になる可能性があります。
まずDCSの体験版なりBMSなりで機体を決めて、それから機材を選んでください。
ジェネラルアビエーション(小型機での自由な飛行)
軍用を除いた、すべての民間航空を指す言葉です。エアラインでも軍でもない飛行機がまるごとこのカテゴリに入ります。
自家用機での飛行、操縦士の訓練飛行、ビジネスジェット、遊覧飛行、農薬散布、航空測量、報道取材、ドクターヘリなど。裾野が非常に広いのが特徴です。
フライトシムの文脈でGA機と言った場合、多くは単発から双発の小型プロペラ機を指します。MSFSの標準機体で言えば以下あたり。
■ Cessna 172 Skyhawk(世界で最も生産された機体。教習機の定番)
■ Cirrus SR22(サイドスティック+ガラスコックピット)
■ Diamond DA40/DA62
■ Beechcraft Baron G58(双発レシプロ)
■ Cessna 208 Grand Caravan(ターボプロップ)
レシプロ単発から、TBMのようなターボプロップ、サイテーションのようなビジネスジェットまで、定義上はすべてGAに含まれます。
エアライナーが手順を正確に踏む楽しさだとすれば、GAは目的地も高度も自分で決める自由さが魅力です。
基本はVFR(有視界飛行方式)で、地上の川や道路、鉄道、山の形を見ながら地文航法で飛びます。高度1,500〜5,000ft程度、速度100〜150ktというゆっくりした飛び方なので、MSFSの美しい地形をじっくり眺められます。
自宅の上空を飛んでみる、という遊び方をする人も多いです。
管制のない小さな飛行場に降りたり、離島間を飛んだりといった、エアライナーでは絶対に行けない場所へ行けるのもGAならでは。
MSFSのブッシュトリップ(紙の地図を頼りに長距離を区間分けして飛ぶモード)や飛行訓練、MSFS 2024のキャリアモードのミッションも、基本的にはこのジャンルの遊び方です。私自身、これらを進める中で短距離の運航や遊覧飛行を経験してきました。
機材はヨークが基本ですが、機体次第です。
セスナ172やビーチクラフトといった伝統的な機体はヨークですが、シーラスSR22やDA40、TBMはサイドスティック。乗る機体がそちらに寄るなら、無理にヨークを買う必要はありません。エアライナーでエアバスとボーイングを見分けるのと同じ話です。
スロットルは3本必要です。
ここがGA特有のポイントで、レシプロ機のパワー操作はスロットル(吸気圧)、プロペラピッチ(回転数)、ミクスチャー(混合比)の3本を組み合わせて行います。
巡航高度が上がれば空気が薄くなるのでミクスチャーをリーンにする、といった操作が飛行の一部になっている。ジェット機のスロットル1本とはまったく別の作法です。
そのため、レバーが複数本あるクアドラント型のスロットルが向いています。レバーヘッドを交換できる製品なら、GA構成とエアライナー構成を使い分けられます。
ラダーはGAでは必須級です。
コンバットシムのところでラダーは省略してよいと書きましたが、GAは正反対。
単発レシプロ機は、エンジンのトルク、Pファクター、スリップストリームの影響で常に機首が左へ振られようとします。これをラダーで踏んで打ち消し、旋回計のボール(スリップインジケーター)を中央に保ち続ける。これがGAの操縦そのものです。
上昇中も旋回中も常に踏み続けることになるので、ペダルへの投資対効果はエアライナーよりさらに高い。
追加機材は、エアライナーほど複雑なパネルは要りません。
ただしマグネトー(イグニッションキー)、燃料ポンプ、ライト、ピトーヒートといったスイッチ類は頻繁に触るので、スイッチパネルがあると便利です。ヨーク本体にスイッチパネルが付属している製品もあります。
G1000搭載機を飛ばすなら、GPS操作用のパネルを追加する人もいます。
視界用の機材について、GAは外を見る飛行です。
低高度・低速で景色を楽しむジャンルなので、VRの没入感が最も活きます。場周経路(トラフィックパターン)を回るときは滑走路を横目で見続ける必要があるため、頭を動かして見られるVRやヘッドトラッキングには実用面でも利点があります。
一方で、G1000のような小さな文字を読む必要がある場面ではVRの解像度がネックになります。ここはウルトラワイドやマルチモニタにTrackIR・AITrackを組み合わせるのも十分に有力です。
飛行時間はエアライナーほど長くないので、VRの装着疲れが問題になりにくいのも利点でしょう。
ソフトはMSFS2020/2024か、X-Plane 12。
このジャンルの大きな利点は、標準機体だけで十分遊べることです。ソフト側の追加投資がほぼ不要なので、最初に踏み込むジャンルとしてはありがたいところ。
買い足す順番は、あえてラダーペダルを推します。
一般的にはまずヨークと言われますし、それも間違いではありません。とはいえGAの飛行の本質はボールを中央に保つことにあり、そこを味わえるかどうかはラダーの有無で決まります。
次にスロットルクアドラント、ヨークは最後で構わないと思います。
次回は私のメインジャンルである編隊飛行と、機材が根本的に別物になるヘリコプター、そして全ジャンル共通のVRかマルチモニタかについて書きます。第3回はこちら。