動揺はやまない。
何とか頭を別のことに持っていこうと
机の上のA4用紙を手に取った。

そこの一番上には
「転進優遇制度」と書いてある。
この法人に何年かいるが、
こんな制度聞いたことがない。

ちょっとしたイタズラ心が芽生えた。
部門長に聞いた。

「制度ってありますけど、
制度ならなんで公開しないんですか?」
要は退職勧奨、肩たたきである。
もっとストレートに言えば
「お前はいらん、クビだ。」ということだ。
A4用紙とパンフレットをめくりながら、
世の中でクビを言い渡された経験のある人は
どのくらいいるだろうと一瞬思った。

察しはついてたが、
いざエライ人より面と向かって言われると、
動揺が走る。

一生懸命押さえつけようとするが、
心と本能は正直である。
首筋が細かく震えだした。
ミーティング等でメモを取るのは常識のはずだがな・・・。
面談の内容は想像つくがそんなに都合が悪いのか。
思わず苦笑が込み上げる。

「さて、今日の本題なんだけど。」
部門長はA4のプリント数枚と、
見慣れぬパンフレット取り出した。
パンフレットに目をやると、
「リクルート・・・」とロゴが打ってある。

プリントを見ると題名にこう記されていた。
「転進優遇制度」
ドアをノックすると部門長が答えた。
「どうぞ。」
足を踏み入れると部門長と
ノートPCをスタンバイさせた副部門長がいた。
よりによってツートップのお出ましとはな・・・。

部門長は「〇さんはどこの出身だった?」などと
当たり障りのない話題を振ってくる。
私は話に答えながら、
カバンからメモ帳とペンを取り出そうとするがペンが見つからない。

その時部門長の表情が変わった。
「メモは取らなくていい。」
昼過ぎにオフィスへとついた。
レコーダーの録音ボタンを押す。

部門長の席を見るが誰もいない。
約束の時間が近づく。
PHSのボタンに指を回した。

「はい。」
部門長の声がした。
「もしもし、〇ですけど。」
「ああ、〇〇号室に来てください。」