二人の男を結ぶもの
ひとりの女と、愛する「落語」
観ました!
下に長々とあらすじと感想を書きますが、ざっくり言うと以下の三点に集約されます。
・山崎育三郎の声がいい。歌がうまい。
・古川雄大の花街の出らしい喋りがいい。歌がうまい。
・明日海りお、とにかく顔がいい。歌がうまい。
敬称略。
あらすじと感想。
八代目有楽亭八雲は刑務所での慰問公演を打っていた。服役中に公演を見て八雲に惚れ込んだ与太郎は、弟子入りを志願する。八雲の自宅には若い女・小夏が同居していたが、彼女は自分の両親を八雲が殺したと思い込んでいた。彼らの因縁を、付き人の松田が語りはじめる。
遡ること昭和の始め、舞りの師匠の家に生まれ末は歌舞伎役者と嘱望された坊は足に怪我を負い、踊りの道を諦めて噺家に弟子入りすることとなった。親に捨てられたと嘆きながら七代目八雲の自宅を訪ねた坊の前に、薄汚い少年が立ちはだかる。信と名乗った少年は八雲への弟子入りと襲名を熱望し、その場で粗削りな落語を披露する。それは、七代目八雲との因縁深い助六の落語であった。
同時に弟子入りすることになった坊と信は、それぞれ「菊比古」「初太郎」という名を貰い、稽古に励む。だが時代は戦争へと突き進み、ふたりは昇進できずに腐っていた。ある日、七代目が満州での慰問公演を決める。同行するのは初太郎、足に不安のある菊比古は七代目の妻とともに疎開するよう命じられる。
師匠に捨てられたと感じた菊比古は深く傷つくが、沈んでいこうとする彼の手を取ったのは初太郎だった。必ず生きて帰る。帰ってきたら、共に高座に上がろう。
満州では関東軍が横暴に振る舞っていたが、初太郎は持ち前の度胸でうまく立ち回っていた。祝賀会で酒に酔った大将から無理を働かれようとしていた芸者みよ吉を救い、因縁を付けられ営巣入りを命じられた師匠を庇い、敗戦により大混乱となった満州から1年がかりで師匠を連れて帰国したのだった。
戦後の日本ではブギが流行り、新しい風が吹いていた。そんな中で破天荒な初太郎の落語は大いに受け、師匠も彼に助六の名跡を与える。一方艶話を打とうと試行錯誤する菊比古は壁にぶち当たっていた。師匠は菊比古の真面目さを打ち砕こうと、満州から引き揚げていたみよ吉を菊比古に紹介する。
みよ吉はすぐに菊比古に惚れ込み、ふたりは交際を始める。だが菊比古は落語を選んでばかり。そのうえ真打に昇進するや、色街の女は相応しくないと実の親に口出しをされ、みよ吉との別れを選ぶ始末。なにもかも上手くいかない苛立ちや自分とは違う落語を確立させている助六への嫉妬から、菊比古はふたりを突き放す。
一方、助六は「八雲」の名跡を継ごうと焦るあまりに一線を越え、師匠から破門を命じられる。
助六とみよ吉は東京を捨て、落語を捨て、みよ吉の故郷である四国へと駆け落ちした。だが助六は働きもせず酒を飲んで暴れるばかり、みよ吉は早々に愛想を尽かして家出を繰り返している。小夏は蕎麦屋の店先で父から教わった落語を打って小銭を稼いでいるところ、菊比古と出会う。
変わり果てた助六と再会した菊比古は、二人会の開催を提案。頑なに拒否していた助六だったが、小夏と松田に背を押され高座に上がる。かけたのは「芝浜」。助六の噺を聞いたみよ吉は再び自分の男が落語に奪われたことを確信する。
みよ吉はかつての男・菊比古に会い、助六を菊比古に返すと告げる。だが助六はみよ吉に頭を下げる。あの芝浜はお前と小夏がいたからできた、俺にはあれ以上の落語はできない。だからこれ限りにする。戻ってきてくれ。
混乱したみよ吉は助六ともみ合い、果物ナイフで助六を刺してしまう。父親を救おうと小夏がみよ吉を押した、その先が深い崖だった。落ちていくみよ吉に手を伸ばし、助六も共に墜落した。これがふたりの死の真相だった。
そしてすべてを失った菊比古は「八雲」の名跡を自分自身と共に葬るために、八代目としてその名を継いだのであった。
真相を思い出した小夏は八雲に弟子入りし、女流落語家への道を歩み始めるのであった。
という感じでしょうか、、、たぶん、、、
・一応自分なりに整理して(&見たまま)あらすじを書いたつもりなんですが、みよ吉@明日海さんの気持ちはちょっと分からなかった…というか、昭和の中頃って恋愛沙汰に関して激情型の人が多かったのかもしれないけど、現代の人間は希薄なんでしょうね。なので振った振られた生きるの死ぬのワーワー、みたいなのが、ちょっと…別にそれくらいのことでそんな大騒ぎせんでも……と思ってしまうんだ、どうしても。現代の人間というか、私の話ですね。
・でもそんな私にも、人生を捧げた「落語」という芸を挟んで対峙する二人の男たち、助六@育ちゃんと菊比古@古川さんの複雑に絡み合った大きすぎる感情は分かる。一番分からないはずなのになぜか分かる。というかこれが専門分野みたいなところがございますので……
・専門家といたしましては、実はみよ吉がもっと深い情念で…というか恨みで助六と添った、と言われた方がしっくりくるんですな。そして助六が「叶わぬ思いを菊比古に抱いていたから、菊比古が抱いた女を抱いた」(何回抱いた言うねん)と整理したほうが納得できる。ただそうなると、最終的に助六が落語(菊比古)ではなくみよ吉を選ぼうとした結末に説明が……情が湧いたと言えばそれまでなのですが、その情が湧くほど助六とみよ吉が支え合って生きてきた描写がない。原作漫画には描写あったのかもしれませんが……専門家、退席いたします。(役立たず)
・そこだけ分からなかったけど、逆に言えばそれ以外は大変納得したし非常に良かったです。全員うまいし……、セットもお衣装も良いし、あと曲が全部良かったな~!明日海さんの昭和歌謡が聴けるなんて!
・育ちゃんと古川さんが落語のさわりだけやるんですが、名曲の歌い出しだけ聴いちゃったみたいな感じで少々欲求不満になるというか、寄席に行きたい~~!落語聴きたい~~!という気持ちにさせられます。そういう意味では寄席に人を呼ぶという菊比古と助六の誓いは形を変えて果たされているのかもしれない。エモい。←とかごちゃごちゃ言ってないでさっさと寄席に行け
・古川さんが弁天小僧菊之助の身顕しをやる場面があったんですが、難しいのよね、あれ。声の音域はかなりいいんだけど(そういう意味では助六の声だとできない)、やはり……歌舞伎好きからすると、少々、、、本域のが聴きたい~~!となる。なんと五月に歌舞伎座でかかる~~~!観ないわけにはいかない~~~!!!……なんと歌舞伎座にも人が呼べちゃう、たいへん素晴らしいミュージカルですねこれは。
・それはそうと指揮・御崎恵先生だよ!?!?
・そして子役ちゃんたちが超絶素晴らしくて、いや~~良いものを見せていただいた。ところで子役ちゃんがいるから夜公演ないと思ったら、18時公演もあるんですね。カーテンコールには出ないのかしら。そういえばカーテンコールといえば速攻でスタオベになって秒で終了したのが良かったです。3回も5回もカテコがあると冷めてしまう……そういうのは初日と楽だけでいい……
という感じでした。
ではでは次は月組。