ミュージカル イザボー 1/20マチネ(ブリリアホール) | 晴れ、ときどき観劇。

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フランスで一番嫌われた王妃

 

 

 

 

 

 
(正面から撮ればよかったのに)




観ました。
いや……、すごすぎて1幕ラストは声が出なかったし、2幕ラストは大泣きした。こりゃすげえ。感想がゴミ


あらすじと感想。


14世紀、内乱とイギリスとの戦争を抱え荒れたフランス。14歳でバイエルンからフランス王シャルル6世に嫁いだイザボー・ド・バヴィエールは多くの子を産み、夫と共に幸福に過ごしていた。しかし結婚から7年後、夫が精神を錯乱。その機に乗じて家臣でありシャルル6世の伯父でもあるブルゴーニュ公親子が勝手に政を動かすようになる。
狂気のなかでときおり正気に戻るシャルル6世は妻を手放そうとするが、イザボーは夫と子供たちを守れるのは自分だけだと決意。シャルル6世の弟であるオルレアン公ルイと組んだイザボーは夫に成り代わって政治を執り行う。その治世は黒死病や暗殺、戦争など多くの死によって彩られるものであった。
ブルゴーニュ公ジャンは穏健派だった父と違って苛烈で、従兄弟であるルイを自らの手で殺し、その裁判でルイの悪行を並べ立てて無罪を勝ち取り、また狂気の国王に恩赦状を書かせるほどの策略家でもあった。ルイを失ったイザボーは次にジャンと組み王太子を彼の娘と結婚させ、さらにはアルマニャック派とも組むために幼い息子シャルルをアンジュー公妃ヨランドに預ける。
ところが王太子が若くして命を落とし、シャルルが王太子となる。アルマニャック派にジャンを暗殺され自身も追放されたイザボーはついにイギリスと組み、さらに自らの息子を私生児であり王位を継ぐものとして相応しくないと糾弾するが、シャルルは神の声を聞いた少女ジャンヌ・ダルクに導かれ窮地に追い込まれたフランスを救う。
息子シャルル7世の戴冠にも姿を現さず、イザボーは静かに余生を過ごしたのだった。


歴史の勉強になる。(それな)
・私はこういうややこしい歴史ものが大好きですし、あとから感想を書きながら色々調べて「このエピソードをああ描いたのか…」「このエピソードは割愛したのか…」などと考えるのも好きですけど(場合によっては本を買ったりもするが大抵はWikipedia先生にお世話になる)、おそらく色んなご意見はあるんだろうなと思いつつ、結局のところ今残っている歴史なんてどれほどの信憑性があるかも分からないし、実際のところは本人しか分からないし、ある程度好き勝手にやっていい派です。
・プロローグでイザボー@望海風斗さんが多くの人々を従えながら意気揚々と「全ての宝石は私のもの、全ての幸福は私のもの、全ての絶望は私のもの」と歌うんですよね、そしてその「絶望」は「彼女が人々に与えるもの」と思って見始めて、見終わったときには、「彼女が引き受けて飲み込んだもの」だったと知る……夫が狂い、子供たちが次々に死に(それも娘たちはそれなりに長生きしているから息子たちは暗殺されたと考えられる)、夫も自分も子供たちも立場が危うくなり、頼った男たちは次々に暗殺される。自分から引き離したことでようやく成人を迎えた息子からは蛇蝎のごとく嫌われている。泣かないと決めたから毅然と顔を上げて、罵ればいいと高笑いしてみせる。私が泣く。
・本当に望海風斗さんはどこまで行ってしまうのでしょうか………、美しいけれど平凡な王妃だった女が、家族を守るために立ち向かう女になり、立ち向かうだけではなく奪わなければ守れないと気付いて決意し・企み欺き放蕩の限りを尽くし、その代償に失ったものを想ってひとり嘆く、でも人々の前では不敵に笑ってみせる……こんなの、まあ確かに望海風斗さんは男役として全部やったことあった気がしますけど女役としてもやるなんて、稀有にも程がある。余人をもって代えがたい。
・ルルージュエルノワールを思い出したので曲の雰囲気はフレンチロックだったんでしょうかね。ハードロックぽさも感じましたが(※知識ZERO)、そして全体的にちょっとガナリ系の歌が多くて若干やかましいのと何言ってるのか分からないところもあった、それなのに全く自分のものとして歌って全ての歌詞が聞き取れた望海さんはすさまじかった。デュエットとかコーラスになるとみんなうまいんですけどね、ブルゴーニュ公フィリップ@石井一孝さんヨランド・ダラゴン@那須凛さんのソロはかなり苦しかった。音が取りづらいんだろうか?劇場の問題??アンサンブルはもうちょっとガナらないのが好みでした(というか単純に歌詞が聞き取りづらいのであんまりガナらないでほしい)。
・お衣装が好きすぎたーー!イザボー様お着換えしまくりで、そのどれもがほんとうに素敵でした。全員が黒づくめのお衣装で、覚醒後イザボーだけが赤いお衣装。イマジナリー少女イザボーだけが白いお衣装。考えてみれば(?)シャルル7世@甲斐翔真さんのお衣装がシャルル6世@上原理生さんのお衣装とクリソツだったのって実は彼らが本当の親子だったことを暗示していたのかもしれない。流れるように死語を使ってしまったかもしれない。
・ただ、照明はちょっと改善の余地があるのでは…と思ってしまったな…。具体的に言うと舞台袖にあった床置きで上向きのライトはどうにかしてほしい。2階席眩しすぎて目つぶしの瞬間がけっこうあった。あと床をモザイク柄みたいに照らすライト?あんまり効果が分からない割に床がまだら模様になっているのが気になって気が散った。あと、黒い劇場×黒い衣装なので、よっぽど上手に照らさないと役者が活きない。なお赤いお衣装のイザボー様は全場面どこにいても映えまくっていたので無問題です。
・セットすごすぎる。人力で動かす、あれは三重蛇の目とでも言うんでしょうかね、大がかりなセットでした。が、けっこうなスピードで回るし大勢が乗るし上がり下がり激しいし、見ていてけっこう怖かったところもありました。ケガしてからじゃ遅いから…ほんと気を付けてくださいね…お節介ババアですみませんね……
・客席使用の演出について、批判的な意見を見かけて。具体的には開始前にアンサンブルの方が注意事項(ケータイ切れとか)を話しかけたあと、「シャルルセッツ!(シャルル7世)」と掛け声を掛けさせられる、王弟と王妃を侮辱する歌に手拍子を煽られる、ところだそうで。それってつまり観客が「扇動の声に踊らされる愚かな民衆」の役割を割り振られているところで、舞台装置の一部として客を使うとは太ェ野郎だぜ末満先生…(知らん人やけども)と私が思っていたところと重なるんですよね。その役どころが嫌なら(愚民どもめ……)という顔で周りを眺めるといいんじゃないでしょうか。けっこう楽しかったよ。←やったんかい
・演出、ラストのバラの花びらが降ってくるところが、降るっていうか窒息しそうな量のバラの花びらの塊がイザボーに向かって落ちるっていうか、それは彼女が浴びた血飛沫であり罵りの言葉であり憎しみであり、そんなもの彼女にとってはどうということもない、という象徴だったのかなと思います。ほんと信じらんない量だった。ドンジュアンでしたっけ?更新した。
シャルル6世@上原理生さん、狂気と正気の狭間のお芝居、老年になってふと若いころに戻るお芝居、声の芝居がすごかった。ほんと望海さんに手を上げるなんて万死に値する行為だから気を付けてくださいね?
オルレアン公ルイ@上川一哉さん。初めて拝見した気がしてたけどロートレックじゃん!!!!!!!!!!!!全然違う女たらし色男遊び人王弟殿下、すごく良かったです。すっごく良かったんだけど、ブリリアで息多めのイケボ本ッ当に聴き取れないんで、ぜひ全編腹から声を出してください。(たぶん対面であの声出されたら溶けるけど)
ブルゴーニュ公ジャン@中河内雅貴さんサンティアゴじゃん!!!!!!!!!!こちらも別人でございました。しっかし悪人だったなぁ……そっか、サンティアゴがロートレックを殺したのか……なんつー話だ……(ムーランルージュから離れてください)
ブルゴーニュ公フィリップ@石井一孝さん。声良いよねぇ。ソロで困っちゃった以外は大変素敵でした。少女イザボーを優しく導いたかと思えば王妃イザボーを子供を産む機械扱いして、本当にいけすかない男。
ヨランド@那須凛さん。初めて拝見しました。話し声の低さと迫力のある佇まいがすごく良かった。こちらもソロ以外は文句ございませんでした……女はああして歴史の狭間を生き抜いてきたのかなあ。現代に生まれてよかった。
シャルル7世@甲斐翔真さん。見た回はけっこうカミカミでした。可愛いんだけど。あとラスト付近の望海さんとのデュエットで歌い方の癖が若干気になったな…うまいんだけど。イザボーを憎み、恨み、反面教師として善き王となることを誓った青年。きっと善き王になるだろう青年。あんなにも憎んでいた女を、その過酷な歴史を辿ったことで許してしまう心のまっすぐさ…それが命取りにならないといいですね。(不吉な予言か?)


うーん。繰り返し観るには体力を削られすぎるので、1シーズンに1度で良いですけど、再演されるなら絶対に次回も見たい。そんな作品でした。


次はオデッサ。