今日は2限終わりだった。
部活も自練だったので、今日はレポート課題の『新憲法の誕生』でも読み進めるかなぁ。なんせ、あと四日しかないかんね。5000字だかんね。
とかそんなことを思いながら十五号館を出ると、空は見事な五月晴れ。風が強くて清々しい、いい日であった。
僕はとてもウィンディな日が好きである。風はいい。涼しいし、気持ちをすっきりさせてくれる。悩みもふっ飛ぶ。
と、いうわけで、こんな素敵な風の日に、すぐ地下鉄ばっかで情緒もなんもない帰宅コースに向かってしまうなどというのはいかがなものか、と思った僕は、とりあえず本キャンのベンチに腰をかけ、新緑の銀杏並木が風に波立つのを眺めながら、ドーナツとかを食い、さらに本も読み進めてしまおうという非常に贅沢で優雅な時間を過ごすことにした。
いやあ、文化人だなあ、俺。行動の端々から教養がにじみ出てるよね。うふふ。
あ、スズメだ。こんなに近くまで寄ってきて、このドーナツが欲しいのかい?しようがないなあ。ほうら、お食べ。うふふ。(実話)
さて、しかし、本を読み始めて十分もしないうちに、隣のベンチに新たな客がやってきた。
「う~ん、東大ならわかるけどね、早稲田はブランドって言わないよ~。政経なら、新聞社とかね、まあ文学でも、出版社とかね。う~ん慶応なら、そうだなあ、商なら商社だとかね。それでもいいと思うよ、う~ん。
(中略)
でもさ、じゃあ、おまえは何を以ってポテンシャルと言うんだっていう話なわけ。資格試験でポテンシャルを証明できるか?できないでしょ?そういうことなんだよ。
(中略)
いや、でもね、無駄無駄って言うけどね、人間的に生きていくために必要な無駄ってあるでしょ?それは無駄じゃないんだよね、僕はそう思うんだよ。
人と交わるための無駄?そういうのは無駄じゃないと思うんだよね。だって後にならないとそれは本当に無駄なのかどうかってわからないじゃない。そうでしょ?
早稲田なんてそういうのがよく分かるところだと思うんだよねぇ~。
(中略)
そういう無駄論者?っていうのはさ、すぐなんでも無駄無駄いうけどね、そういうのは今の段階ではわからないはずじゃん?なのに何をもって無駄って言ってんのかが僕なんかはわからないよ。
(中略)
いやいやでもね、そういう人間的な無駄?そういうものを省かなきゃいけないってことが、仕事やってるとあるわけじゃない?それが悲しいと思うんだよ、いや僕はね?ハハハッ!!
(中略)
うん、そう、いや、本当の無駄っていうのはあると思うよ?たとえば同じ失敗を二度繰り返すとかね?
でもそれとこれとは話が別じゃない?そう思わないか?どうだ?」
う~む、もっともだ。もっともっぽい。
おっさん、あんたの言ってることはたしかにもっともっぽい。
でも・・・・・・だけど・・・・・・
一体誰としゃべってんだ!!!!!?
年のころは三十かそこら。フレーム無しメガネをかけ、口元からあごに掛けて、長めのヒゲを蓄えている。大学院生だろうか。
いずれにせよたしかなことは、そのおっさんは間違いなく独りきりだったということである。
周りに人はいなかった。携帯で電話をしていたわけでもない。
だが、彼はたしかに誰かと会話をしていた。
たぶん、妖精さんかな?うふふ。
とはさすがのロマンティスト弓手師も思わなかった。
なんか気持ち悪いので、しょうがないから本を読み進めるのを諦め、僕は安息を求めて馬場歩きへと旅立ったのだった。
いやー、なんで俺の周りにはこういう変人、ダメな子の類が集まってくるんだろうなぁ~。
かわいい子は全く集まってこないのになあ~。
はあ。ま、いい日でしたよ。
