11.5 2度目のトゥルーズ

 

お迎え騒動

9:55 オルリー離陸、10:45にトゥルーズ着、国内線も小1時間かかる。

トゥルーズは3年前に来て、Dr.Pの結婚式や、カルカソンヌと地中海の強烈な思い出のあるところだ。街並みは赤煉瓦の建物が多く、ピンクタウンと言う、とDr.Pから聞いていたが、上空から見えた郊外の景色は緑との調和が美しい。トゥルーズのブラニャック(Blagnac)空港は、市街中心から北西10kmほどの所にある。Dr.Pが空港に迎えに来てくれる、はずが出口にいない。少し待ったけど、一向に現れる様子がない。周囲に誰もいなくなってしまった。パリなら一人でも平気だけど、ここじゃまったく勝手が分からない。

1時間も待って、12時にMr.Tの現地事務所に電話した。公衆電話なんて、これまで使ったことなかったので、悪戦苦闘して、小銭が切れて、50Fのテレフォンカードを買って、、、とにかく繋がって、何とDr.Pが出た。なんでそこにいるんだよ!と言う前に、「Sorry, 忘れてた」と言われてしまった。30分ほどで迎えに来てくれて、手を広げて抱きついてくるもんだから、文句の一つも言ってやろう、と思っていたのが失せてしまった。

 

 トゥルーズ郊外上空から

 

宇宙テーマパーク

ホテルは市街中心部の、前回と同じカプール(Hotel Capoul)で、Mr.Tの事務所は市街を挟んで空港の反対側にあたるので、ホテルに寄ってもらって、荷物を置いてから事務所へ。13時に着いて内情聞けば、ちょうどこのとき、顧客との契約問題で、事務所の全員が大忙しだった。Dr.Pも私の迎えどころではなかったんだ、嫌み言わなくてよかった。

私が着いたのが潮時で、みな昼食に行くというので、歩いて近くのカフェレストランへ。簡素な雰囲気だが、安くて美味しかった。事務所は工業都市に相応しいモダンな建物の一角にあり、ロケットやソユーズ宇宙船まで展示してある宇宙テーマパーク(Cité de l'espace)に隣接していて、建物の向こうに宇宙ロケットが見えた。

 

 ロケットが見える

 

Identityの権化

事務所に戻ってからも、私はほったらかし状態だったが、16時半ごろDr.Pがやってきて、セミナに備えてやっと打ち合せができた。遅くにMr.Tがやってきて、今日まるっきり話せなかったことを詫びながら、車でホテルまで送ってくれた。外国人ばかりの部下を統率して、現地の巨大企業に立ち向かっておられる姿には、毎度のこととはいえ、畏敬の念を感じた。日本からたまに来て非日常を満喫していく私なんぞとは、危機感がまったく違うんだ。まさにIdentityの権化だ。

 

背伸びのレセプションパーティ

火曜日、朝6時に起きた。今日はセミナの事前打ち合せ、夜はセミナのレセプションで、私のプレゼン出番は明後日だ。

7時に朝食、8時半に事務所からお迎えが来て、9時に事務所着。お昼挟んでずっと打ち合せだったが、オーケストラのコンサートがあるという話を聞いた。席が空いてるか事務所に聞いてもらったら、金曜日の席が空いていた。セミナ終了後の帰国前日でちょうどよい。日本からの出張者の一人も、一緒に行きたい、と言うので、2枚予約してもらった。曲目も、ホールの場所もどんな席かもわからないが、とにかく席を確保した。

16時半にタクシーでホテルに戻り、近くのキャピトル劇場(Theatre du Capitole)の窓口で、予約したコンサートのチケットを購入、200Fだったので、最上等の席ではなさそうだけど、しかたがない。コンサートはここではなく、ちょっと離れた別のホールであるようだ。

19時から、泊っているカプールホテルでレセプションが始まり、社長や偉い方のスピーチの後で立食パーティになった。今回は私も隅っこの方で遠慮していないで、欧州の主要なお客様の重鎮の方々と挨拶もした。現場の技術者に過ぎない私では畏れ多いとは思ったけど、みなさん、対等に話をしてくれて、なんか自分も偉くなったような気がした。グラス片手に話を合わせるのは相当背伸びしないといけなかったが、高揚感もあった。なるほど、レセプションパーティとはこういうものか、、、パーティは21時半にお開きで、この日は健全、22時半には寝た。

 

欠陥報告セミナ

水曜日、朝7時に起きた。今日はお客様のプレゼンが中心で、我々は答弁役だ。いつもなら自分の番が終わるまで落ち着かないのだが、なぜかこれまでのような悲壮感がない。ブラジルで2回も喋って、度胸がついたかな?

7時半に朝食、8時半に送迎バスが来た。セミナ会場はホテルから10kmくらい西の郊外にあるが、多くの参加者が同じホテルに泊っているので、また集団登校みたいだ。9時に会場に着き、セミナが始まった。すり鉢を半分にしたような、500人くらい入れそうな大きな会場で、音楽会もできそうだ。え~っ、明日はこのすり鉢の底で喋るのか?ちょっと武者震いがした。

午前中はキーノート講演やお客様の偉い方のお話で、昼前に集合写真撮って、会場のレストランで昼食。午後はお客様の好意的な発表が続いたが、何番目かのお客様の番になってトーンが一変、まるで欠陥報告みたいな、苦情だらけのプレゼンになった。お客様も決して敵対的に喋っているわけではなく、もっと良くしたい、という熱意の現れであることはわかるが、これに対する答弁は簡単ではなく、セション途中から、関係者だけ集まって答弁対策する羽目になった。セミナは17時には終わったが、バスでホテルに戻ってから、また1時間ほど、対策会議。

 

気遣いレセプション

夜はまたレセプションパーティで、1kmほど離れたアセザホテル(Assezat Hotel)なので、歩いても10分くらいだが、このホテルには美術館もある、というので早めに切り上げてみなで出かけた。19時ごろアセザホテルに着いて、1時間ほど美術館を見学。展示品はともかく、建物が渋い。トゥルーズの建物はみな赤っぽい煉瓦造りで、パリの華やかな雰囲気とは違って、由緒正しい渋味がある。

20時にレセプションが始まったが、偉い方のご挨拶は昨日終わっているので、軽く乾杯してお終いで、すぐパーティだったが、立食ではなく、ちゃんと席が決まっていた。お客様毎に日本人を一人ずつ配置したような形で、私のテーブルはみなフランス人だ。右隣はお客様の中でも結構偉い方だし、左隣の方は、今日の発表でたくさんご不満を述べられたお客様で、食事しながら、右に気を遣い、左に答弁することになってしまった。右は温和な方で口数が少なかったが、左はとても熱心で、発表でも聞いたことを更に細かく話してくれて、ほとんど喋り詰め。

テーブルにはやたらワイングラスが並んでいたが、一応フルコース。最初に大きなフォアグラステーキが出てきて、3年前にも食べたなあ、結構歯応えがあって旨い。だけど、左から熱烈に話しかけてくるのに、食べてちゃ失礼だと思うから、なかなか食べられない。左は一区切り喋り終わると、自分の前の料理を食べ出すが、私はフォアグラを少し削り取って口に運ぶと、右の方にも何か話しかけないといけなかった。右との会話は会釈とか相槌とか、すぐ終わるが、すると左が待ってました、とばかりまた喋り出す。こんな具合で、私は右に気を遣い、左に相槌打ちながら、フォアグラは平らげたが、そのほかにも肉や野菜がでてきたのに、食べる暇がなかった。

公式には明日答弁すればいいのだが、23時頃まで喋り詰め、付きっきりの一問一答で、初対面だというのにずいぶん長い付き合いだったような、お客様は十分お腹が膨れたようで、最後はにこにこ顔でお別れした。個人的には答弁対策が終わってしまったようなものだ。

24時にホテルに戻り、公式答弁用のOHPをみなで作ったりして、明日の自分のプレゼンのおさらいなどそっちのけ、気が付いたら4時になってしまった。いけない、寝なくちゃ。