11.3 4度目のボン

 

タクシー騒動

20時半過ぎにケルン・ボン空港に着き、タクシーでボンのホテルへ。ホテルは半年前にも泊ったHoliday Inn で、ライン川沿いのボンオペラの道路挟んだ向かい側だったのだが、運ちゃんがホテル名だけでは分からなかったらしく、道に迷って説明に困った。私も一度泊ったホテルとはいえ、住所も知らない、土地勘もない。川沿いの橋の袂だとか、オペラハウスの前だとか説明するのだが、私の英語では運ちゃんにうまく伝わらず、空港から数十kmで30分もかからないはずなのに、1時間近くかかった。料金はDM60。独のタクシーはよく道に迷うね、英国ではこんなことは絶対ない。

21時半、ようやくホテルに着いたら、フロントに委託先の社長さんからのメッセージが届いていた。明日のお迎えと、夜はまたボンオペラに招待してくれるそうだ。

 

ライン川沿いの丘の上の白亜のレストラン

翌土曜日、7時に起きて、7時半にホテルで朝食。きょうの仕事は、委託先との技術打ち合せ。雨で散歩する気にならず、部屋は前に泊ったときと同じ感じ、大きな窓からライン川が見える。

9時半に、委託先のいつもの顔見知りが車で迎えに来てくれた。アウトバーンを例によって猛スピードで飛ばす。それほど大きい車ではないのに、静か、まったく揺れない。数十kmを30分もかからずに、ブリュールの委託先に着いた。社長さん始め何人かと、すぐ打ち合せで、3時間ぶっ続け。前回の輪ゴムの絵は売れちゃったのか、壁には肖像画っぽいのが掛かっていたが、乳牛斑紋を並べたような黒白だけの絵はあったので、相変わらず社長さんは新進女性画家を応援してるようだ。

13時に区切りになり、14時にライン川沿いの丘の上にある白亜のレストラン(Rolandsbogen)で昼食、車で小1時間かかって、雨の中、なんでわざわざこんな遠くまで来るんだ?とありがた迷惑に思ったが、、、駐車場からレストランに歩いて行くとき、ライン川が一望できた。雨で川が溢れ、中州に浸水しているように見える。中州には学校があり、橋がないので船で通学しているとか、きょうは土曜日でお休みですかね。紅葉が美しい、対岸の街並みや、山の中腹にはお城もあるらしい。晴れなら素晴しい眺めでしょうね。これは小1時間の価値あり。

レストランの外観は質素な感じだったが、中に入ると、ほ~これは素敵、窓からライン川が見える。映画のロマンチックな語らいのシーンにピッタリ、男ばかりじゃサマにならないが、社長さんは近場の高級ホテルより、小1時間かかっても、庶民にとって真に最高の気分に浸れる場所を選んでくれたんだ。この会社の人たちとは、もう何回も一緒に食事したが、OPERA Bonnは別として、毎回違うレストランに連れてってくれる。どこか近場の一か所決め打ちでも十分なんだけど、気を遣ってくれてるのか、自分たちの楽しみもあるのか、優雅なのに珍しい面白いところを工夫してくれてたようだ。今回はホテルを挟んでずいぶん遠いし、この後の出張ではライン川に浮かぶ船上レストランにも連れてってくれた。そういう気遣いは、日本人のおもてなしに勝る国民性かしら?ほんと感謝です。

男ばかりの、素敵な雰囲気の食事を1時間ほど堪能して、また小1時間かけてブリュールに戻り、16時から委託先で打ち合せの続き。17時半に終わり、ボンのホテルまで車で送ってもらった。

 

 雨のライン川(Nonnenwerthの中州)

 

 レストラン Rolandsbogen

 

 レストランにて

 

 ボン近郊地図

 

3度目のボンオペラ

18時にホテルに着き、19時半にオペラ開演というので、頃合いに道路の向かいのボンオペラに歩いて行った。社長さんご夫妻と、前々回娘さんと来ていた人が今回は奥様同伴で待っていた。私を送ってくれた顔見知りは、前回は一緒に観劇したが、可哀想に今回はパス。私の出張に合せて、社長さんは、社員を交替で一組ずつオペラ観劇に招待してるのかもね。打ち合せでも感じたが、技術者集団という感じの会社で、これを束ねる社長さんは、社員にも気配りをされてるのかも、、、

今回の演目はヴェルディの「ファルスタッフ」、前回の「ナブッコ」はヴェルディの初期の出世作だが、今回は最晩年の喜劇で、ヴェルディと言えば重厚な感じのオペラなんだけど、これだけ異質だ。太鼓腹の主人公と大勢のソプラノ、メゾソプラノの掛け合い漫才みたいな筋書きで、音楽も歌も軽妙だけど、ヴェルディ流にがっちり構成されていて、長ったらしい序曲もなく、何よりも大抵のオペラはヒロインが死んじゃうけど、ここでは誰も死なないで、最後は若い男女が結ばれる、というハッピーエンドだ。でも楽しいだけじゃなくて、道化役の主人公が、最後に「理屈は見方によって変わる」みたいな哲学的なことを言うので、人生教訓めいた味もある。モーツァルト(Wolfgang Amadeus Mozart)の最期のオペラ「魔笛」も、喜劇っぽいのに善悪が錯綜する哲学的な教訓を含んでいるが、オペラのCDを聴くようになって、多少の知識はあったので、字幕はわからなくても楽しめた。

ところで、前回のシリアスな合唱のシーンは青白い舞台のイメージが頭に焼き付いているのに、今回の喜劇は頭に焼き付いたシーンがないのです。見ていてどっちが楽しいか?といえば、今回の喜劇のはずなんだけど、人間の感性というのは楽しいほど心に残る、というのでもないようです。

22時半に終演、その後またトルコ料理のレストランOPERA Bonnで夕食だったけど、劇場のすぐ隣で、オペラの後は定番でこのレストラン、前回も前々回もそうだった。1年前に初めてここでお薦めの料理、と言われて食べたのが、ラム肉トルコ風だったけど、真夜中だというのにボリュームたっぷりで美味しいこと、今回も同じのを食べました。ホテルに戻ったのは0時半過ぎ、寝たのは1時半だった。

土曜日休日に出勤で、夜はオペラ観劇と夕食まで面倒看てもらうのは、いくら委託先とはいえ、こう何回もでは申し訳ない、社員への気配りを兼ねているとしても、甘えっ放しじゃまずいと思い、私も個人的に日本の伝統文化を伝えるようなお土産を持っていきましたけど、観光土産のようなちゃらちゃらしたものではまずいと思い、結構お金も気も遣いました。

 

独の運ちゃんに敬服

翌日曜日、6時に起きた。もう夜中に起きる、ということもなかった。今日は出張中の休日、トゥルーズでのセミナに間に合うように移動すればいいのだが、どうせ直行便はないので、乗り継ぎのパリに一泊する予定だ。

ボンのホテルで簡単に朝食摂って、6時半にはチェックアウトして、タクシーでケルン・ボン空港へ。30分で着いたが、料金はDM60だった。ということは、往きの運ちゃんは迷って1時間近くもかかったけど、同じDM60だったので、迷った責任は自分持ちだったんだ。独の運ちゃんに敬服!

7時半にLHに搭乗手続き、9時に搭乗して9:20出発、40人乗りのジェット機に乗客が10人という、ゆうゆう移動だった。