10.2 台北

 

VIP待遇のホテル

韓国から帰国して1週間後に、同じことを台湾のお客様にも行なう、ということで、連チャン出張になった。同じことといっても、お客様向けに資料を作り替えないといけないし、韓国のときよりも私のカバー範囲が増えて、ちょっと大変、現地2泊の忙しい出張だ。

JAA(日本アジア航空;JALの子会社だが現在はない)で、10:40 成田発、今回は窓側の席で、お隣さんがいなくて、ずっと仕事の準備をしてた。台湾上空は曇り空だったが、雲を抜けて眼下に海が広がると、海底の緑の藻が透けて見えて美しい。12:50 台北中正国際空港(現台湾桃園国際空港)着、時差1時間で、3時間ちょっとかかった。

13時過ぎに台湾入国、台湾の通貨は「元」で、1元=4円くらい。中国の人民元と区別するために、「台湾元」というようだが、お札には「圓」と書かれているし、領収書などには「NT$」と書かれているので、ややこしい。

空港までホテルの迎えの車が来てくれて、14時にホテルに到着、環亜大飯店という豪華なホテルで、部屋は14階のVIPルームだとか、係の女性が5~6人もいて、なんという待遇でしょう。因みに宿泊費は1泊4,550元だったから、2万円近かったわけだが、今までは素敵な部屋でも当然放ったらかしだったんだから、こんなのは初めてだ。このホテルは、建物外観も内装設備も人の配置も豪華絢爛で、巷と一線を画す贅沢さに溢れていた。

14時半に、現地関係会社の女性技術者が迎えに来てくれて、お客様のところにみなで一緒にご挨拶に行き、夕食はまたお迎えがくるというので、ホテルで待機。14階のラウンジの豪勢なソファに座り込んで、コーヒーもビールも自由に飲めて、セルフじゃないんですよ、目配せすると、係の女性がお世話してくれる。ラウンジまでVIP待遇で、かえって落ち着かないが、お金持ちになったみたいで、たまにはこういうのもいいですねえ。

18時半に関係会社の所長さんが迎えに来てくれた。タクシーで10分くらい、林森北路(Linsen N Rd)からちょっと入った、梅子という台湾料理の店で食事、看板に「UMEKO」と書いてある。7人で円卓囲んで、とても美味しかった。この店は後の出張でも何回か行くことになる。食後は、タクシーで5kmほど北にある士林(スーリン)の夜市に出張者みなで行って、1時間ほどうろついたのだが、夜も更けたというのに、結構人が多くて大賑わいだった。23時半にホテルに戻り、0時半に寝た。

 

 ホテルの部屋

 

セミナは紛糾する方が効率的?

翌朝7時に起きて、今日は自分もプレゼンがあるので練習、前回韓国での経験から、OHPフィルムのキーワードの順番を確認するだけで、特に言い回しは憶えないことにした。

9時にみな一緒にタクシーでお客様のところに行き、9時半にセミナが始まった。きょうは丸一日、出張者3人が順にプレゼン、私が最後という予定だった。が、一人目の人が、OHPフィルム2枚でなんと45分もお話になり、こういうのが本来の講演というものか、とお仲間ながら驚嘆してしまった。更に、話の途中でも、お客様は遠慮無く質問するので、独のセミナでも経験したような、質問の収まりがつくまでは、どんどん横道にそれていっても構わない、という感じだ。お客様同士、あちこちで議論が始まるもんだから、なかなか先に進まない。挙げ句の果てに、私が本来話すはずの話題にまで飛び火して、私のフィルムを投影台に乗せる始末。それでも予定通り11時半に一人目のプレゼンが終わった。質疑時間はみなもう出尽くして、さっさと休憩、ということで、予定時間より早く昼休みになったが、これって、不思議ですよね、紛糾する方がかえってスムーズに運び、お客様も満足するんだから。講演者が心得ていて、質問がなさそうなフィルムはすっ飛ばして時間調整したんだ、なるほどね。

 

重圧の景観

昼食はお弁当が出た。海外でお弁当は珍しい。骨付きの豚肉料理、見た目は悪いが、味はまずまず。これに比べると、日本のお弁当は、味はもちろん、見た目も楽しい、世界に誇れる文化だ、と思った。2時間近く昼休みなので、女性技術者が、市街巡りに会社の車を手配してくれた。

総統府、台北駅、中正記念堂、東門(景福門)など、雨の中を車で回ってくれて、窓から珍しげに眺めていたが、この地区は昔の城郭内の政治の中心地で、総統府なんて旧日本軍の遺物にも係わらず、景観に溶け込んで偉容を放っていた。後日の出張では何度も門巡りをすることになるのだが、この時は初めて車の中から見ただけなのに、数km四方のこの区域の歴史的な重み、真珠湾や原爆ドームとは違う形だけど、永く記憶に留めるべき、重圧感がじわっときた。雨のせいでよけい重たく感じた。

 

 雨の総統府

 

 台北市街地図

 

やはり紛糾は非効率

14時から午後のセションが始まり、2人目の人は予定時間1時間だったが、またまた話の途中にやたら質問が出て、午前同様にどんどんずれていき、お客様と講演者との白熱したやりとりになってしまった。このやりとりが16時まで続き、司会者が打ち切ってしまった。話の内容に依るのか、講演者の腕次第なのか、やはり、紛糾する方がかえって効率的、ということはなくて、議論の続きは翌日に持ち越しになってしまった。私の出番も翌日に持ち越し、明日が思いやられる。

タクシーで関係会社に戻り、明日の帰国便を午後の遅い便に変更してもらい、作戦会議をやって、ホテルに戻ったのが18時。夕食がてら、またみなで出かけた。

 

鼎泰豊の小籠包

旧城郭地区の更に西にある龍山寺まで、タクシーで20分ほど。下町の古いお寺という感じだが、屋根の中央がへこんだ湾曲が面白い。その上に龍の細工が乗っかっているのも面白い。梁にも壁にも鮮やかな龍の細工で、龍だらけ。境内は結構混んでて、若い人達が長いお線香を一束ずつ両手で胸の前に笏みたいに捧げて、熱心にお祈りしている。辺りはお線香の煙が立ち込め、異様な雰囲気が漂っていた。

20時、東にタクシーで戻って、鼎泰豊(ディンタイフォン)という店に行った。ここは小籠包で有名だとか、道路から厨房が丸見えで、実演販売みたいな店構えで、狭っ苦しい通路の奥の階段を上がると、結構広い。お客さん満員で、なんとか一つテーブルを見つけて、小籠包を注文。私はここで初めて小籠包を知ったのだが、このちっぽけな肉まんじゅうは、圧倒的な美味しさだった。竹の蒸し器で次々と運ばれてくるが、4人で食べるから、すぐなくなる。口に放り込むと、皮が溶けて肉汁が広がり、熱いこと、みな口をハフハフ動かしながら、夢中で食べました。鼎泰豊は東京にも出店があるらしいし、小籠包はほかでも食べられるんでしょうが、正真正銘、本家本元の小籠包は格別だった。

 

 龍山寺の梁

 

 鼎泰豊の入口