9.3 3度目のボン

 

新進女性画家の絵

18時半 ケルン・ボン空港着、タクシーでブリュールの委託先へ。30kmくらいなので20~30分で着くはずなのに、運ちゃんが道知らなくて、ブリュール通り越してずいぶん行ってから後戻りして、1時間かかって到着。

この日は金曜日、ちょうど委託先会社の創立記念日だそうで、着いたときには、まだ50人くらいの人が残っていて、和やかなパーティが続いていた。半分くらいは帰ったというから、100人規模の祝賀会だった訳だが、後で聞いたら社長さんも知らない人が結構いたとか。小さな会社なのに、これだけ人が集まるとは凄い。

私が部屋に入ると、すぐに秘書らしきチャーミングな女性が声かけてくれて、社長さんはその時はいなかったが、私が来ることは伝わっていたらしく、いろいろ気遣ってくれた。一緒に仕事してる顔見知りはだれもいないので、このお嬢さんにずっと相手してもらった。この人は、委託仕事を仕切っている人のガールフレンドだそうだ。

壁に、輪ゴムとか、乳牛の白黒まだら模様の絵がたくさん掛かっているので、訳を聞いてみると、新進女性画家の絵の展示即売をやってるんだとか。克明に輪ゴムがたくさん描かれているが、ただの円ではなくて、いろんな形で色も多様。乳牛のまだら模様は、白と黒だけの絵で、模様の形も様々。実際の乳牛の斑紋を写し取ったんだろうか?一つ一つの模様をじっくり眺めると、面白いとは思うが、すぐ飽きるなあ、、、う~ん、20年くらい経つと莫大な資産になるんですかねえ、、、現在、この時に見た絵とそっくりのデザインの衣装やハンドバッグは実在する。ひょっとしてこの女性画家は大儲けしたのかも?でも、絵そのものは何とも言えないにしろ、社長さんのお考えには感心した。絵画を単なる投機対象としてないところがいい。他人の評価ではなく、自分の判断で、画家を応援し、芸術価値を高めていく、という姿勢がいい。

しばらくしてから、顔見知りの一人が戻ってきて、社長さんは戻ってこない、ということで、私が30分ほど遅れてきたので、仕方がない。私もお嬢さんにお礼を言って、お暇した。顔見知りがホテルまで送ってくれた。この日は22時半には寝たが、まだ夜中に2回、目が覚めた。

 

ボンの街並み

翌朝は7時に起きて、コーヒーとフレークとゆで卵の朝食。夜中に目が覚めても、朝不快感がないのは、有り難い。

ボンには既に2回泊ったが、今回のホテルは、ライン川のケニディ橋(Kennedybrucke)の傍のHoliday Inn、窓からライン川が見える。現在はこのホテルは違う系列ホテルになっているようだけど、外観は当時のままだ。

8時、明日フランクフルトに鉄道で移動するので、ボン中央駅まで列車の時刻確認がてら、早朝散歩。旧市庁舎の前のマルクト広場(Marktplatz)朝市で賑わっていた。3年前にもここに来て朝市に遭遇したな、変わってない。現在も周囲の建物の色は変わったところもあるけど、建物自体は同じようで、雰囲気が保たれているのは懐かしい。ここにもマクドナルドがあって、これも現在もちゃんとあるようだ。広場から西に行くシュテルン通り(Sternstraße)は道に沿って並ぶ建物の雰囲気が素敵だ。駅まで往復1時間の散歩でした。

 

 窓からライン川

 

 マルクト広場の朝市

 

 シュテルン通り

 

 ボン市街地図

 

乳牛斑紋その心は?

9時半に、昨日の顔見知りが迎えに来てくれて、10時にブリュールの委託先へ。仕事相手はこの顔見知りと社長さん含めて4人、昨日ずっとお相手してくれた秘書のお嬢さんも土曜出勤で、いろいろ気遣ってくれた。昼食はブリュール街中のレストランに出掛けたが、レストランも街並みも静かな落ち着いた雰囲気だった。

ランチタイムに社長さんに、新進女性画家の絵について、どこがいいのか聞いてみた。曰く「この女性画家は、子どもの頃、牧場で育ったのだが、その大らかなイメージを表現してる」んだって。私たちが雲を見ていろんなものを想像したように、この女性は斑紋を見て想像を膨らませたそうだ。なるほどね、社長さんは、その大らかさに共感したんだそうです。輪ゴムの方は不明ですが、、、

 

 ブリュールの街並み

 

重圧のボンオペラ

会議終わって、またボンオペラに招待してくれた。社長さんがとってくれた席は、ホールの中央で少し舞台を見下ろす感じの最上等の席。前回はテニスウェアのモーツァルトだったが、今回はヴェルディ(Giuseppe Verdi)の「ナブッコ」で、オーソドックスなスタイルだった。オペラ王ヴェルディの出世作と言われる初期のオペラで、その後の有名作品のような派手さはないが、モーツァルトのような軽やかさとは違う、片鱗を垣間見せる重厚さに溢れる音楽だ。幕間に隣の社長さんが解説してくれるので、居眠りせずに楽しめた。

第3幕の、青暗い川の畔の場面で大勢が突っ伏したような格好で静かに合唱が始まると、突然観客席全体が異様な緊張感に包まれた。辺りを見回すと、みな姿勢を正して合唱に合せて硬直したように大きなうねりになっている。なっ、何なんだ?合唱が一区切り終わると、割れんばかりの拍手で、同じ合唱がまた始まった。今度は合唱に合せて口ずさむ声も聞こえてくる。一区切り終わると、また大きな拍手で、同じ合唱の3回目、観客席全体が合唱に加わり、静かな遅いテンポの曲なのに、重圧を感じた。後で知ったが、この合唱は「行け、我が想いよ、黄金の翼に乗って」という、イタリアでは国歌並みに有名な曲だそうだ。ドイツ人も心得ているんですね。