7.5続 3度目のパリ

 

オルセー美術館

オルセー美術館は、元は駅舎だったとかで、入口は横側、すなわちホームの端にあり、入口を入るとホームの向こうの端まで見渡せて、大時計が目に入る。100mほどありそうだ。日本語のパンフレットを見ると、ホームに沿っていくつもの小部屋が並び、19世紀から20世紀初頭までの比較的新しい絵画が、画家別の小部屋に展示されている。部屋毎に見学順の番号がついていて、部屋番号が70もある。ホーム通路には彫刻が点在している。

入館料は27F、パリの美術館は、規模に拘わらずみな同じくらいの値段で、これは1回の鑑賞代ということなんでしょうが、ルーブル美術館なんて5回くらい行かないと見切れないと思うが、オルセー美術館も1回では見切れないかもしれない。入館券には一日有効、と書いてあるので、出たり入ったりしていいってことのようだ。

パンフレットには、学校で習った有名な画家の名前が並んでいる。ミレー、ルソー、クールベ、ルノワール、モネ、ゴッホ、セザンヌ、ドガ、ルソー、ゴーギャン、スーラ、、、、うわぁ~、凄いや。順に見ていっても、とても頭に収まらないでしょうが、今でも見た時の印象が鮮明に残っているのが、ミレー(Jean-François Millet)の「アンジェラスの鐘(晩鐘)」とモネ(Claude Monet)の「パラソルの女」。

前者は地上階の薄暗い部屋で、最初に遭遇したよく知ってる絵なので、夕焼けに染まった畑で敬虔な夫婦がお祈りを捧げるシーンがじわ~っときた。壁一杯の絵でなくても、モナリザのような視線がなくても、この小さな絵が周囲に放つ、人間の在り方に訴える無言の圧力を感じた。

後者は、部屋の中ではなく、部屋の入口の外壁に掛かっていたと思うが、こちらは縦1mもある大きな絵で、周囲も明るいので、さっそうと日傘の下に立っている女性が目に飛び込んで来た。女性の目も口も描いてないのに、画面からほとばしる光に、女性が負けていない。モネの部屋には有名な「睡蓮」もあったはずだが、こっちの印象が目に焼き付いてしまった。やっぱり本物は凄い。

ロダン(François-Auguste-René Rodin)の「地獄門」も頭に残っている。これはテラスにあったと思うが、巨大な壁のような彫刻で、圧倒された。上野の美術館の入口にも同じのがありますね。

閉館の18時までいて、全ての部屋にはやっぱり入れなかったが、どの部屋もその場でのじわっとくる感動は憶えている。

 

 オルセー美術館入口

 

 オルセー美術館内部

 

 ロダンの地獄門

 

 オルセー美術館(ロワイヤル橋から)

 

セーヌ川の橋巡り

セーヌ川にはたくさんの橋があるが、みな特徴があって、どれもいい感じだ。セーヌ川の橋巡りというのも楽しそうだ。オルセー美術館からノートルダム大聖堂まで、左岸と右岸を交互に、いくつか橋を渡りながら、夕暮れのセーヌ川沿いに数km歩いた。

ポンデザール(Pont des Arts)はアールヌーヴォーに先駆けて鉄骨で組まれた歩道橋で、その名の通り「芸術的」な橋だ。シテ島(Île de la Cité)に架かるポンヌフ(Pont Neuf) は名前は「新しい」が、パリで一番古い橋だとか。ポンヌフ渡って、シテ島の先端にある公園に降りて、先端からポンデザールを眺めると、とても美しい。ノートルダム大聖堂の前の広場まで行って、ノートルダム橋(Pont Notre-Dame)渡って、今回の橋巡りは終わった。

ライン川の自然とお城というのとは違い、セーヌ川は歴史的な建造物との調和が美しい。観光船だけでなく、住居船もあって、美しさが日常生活に溶け込んでいる。5年後にもセーヌ川遊歩道を歩いたんだけど、右岸遊歩道の南向きの壁際に水着の男女が大勢寝そべっていたことがあった。ずらっと並んで、胸丸出しの女性もいて、遊歩道の端っこを遠慮がちに歩かなくちゃならなかったが、意外と青空の少ないパリでは、セーヌ川の遊歩道も貴重な日光浴の穴場なのかも、、、ただ、水はあまりきれいじゃないから、日光浴だけ、泳いでる人はいなかったな。

 

 遊歩道とポンデザール

 

 シテ島先端(2002年撮影)

 

 セーヌ川橋巡り地図

 

画廊再訪

橋巡りの後、市庁舎(Hôtel de Ville)から地下鉄で、コンコルド(Concorde)で乗り換えて、アベス駅まで20分ほど。駅の近くのカフェで簡単に食事して、もうすっかり暗くなっていたが、ホテルの先の、昨年ムーランルージュの絵を買った画廊を覗いてみた。おっ、昨年のアルバイト学生がまた店番してる。やあ、憶えてる?「あら、憶えてますよ、今度はどんな絵がいいですか?」、特に絵を買う積もりで覗いたわけではなかったんだけど、こりゃ何か買わないと、、、花の絵がいいかな?「じゃ、これなんかどうですか?」と出してくれたのが、窓辺に置かれたバラの絵、ちょっと暗い感じ。大きさは前回のムーランルージュの半分くらいだから、値段も半分くらい。もっと明るい派手なのがよかったんだけど、せっかく薦めてくれたんだ、おっ、いいね、買ってしまった。なんでわざわざこんな暗いバラの絵を買うかなあ、、、アルバイト学生に薦められなければ買わなかったよなあ、、、ホテルに戻ったのは深夜だった。

ところが、この絵は立派な額に収まって、現在も私の部屋の壁に掛かっていて、飽きない。この暗い感じは、背景の窓が灰色でそう感じるんだろうけど、淡いピンクと黄と赤の花びらが丁寧に描かれていて、間を埋める葉の深い緑に乗って、とても落ち着く。絵は、値段じゃない、これを描いた人の気持ちが分かるような気がする。