7.2 ブルッフザール

 

バリトンコンサート

ブルッフザール(Bruchsal)には2泊する。19時にはホテルに着いた。駅から東に1kmほどのところにある、シェッフェルヘーヘ(Hotel Scheffelhöhe)という、外見はアパートみたいな、部屋は屋根裏部屋で、屋根の傾斜で頭がつっかえそうだけど、床は分厚い絨毯敷き、ベッドは大きくてゆったり、風呂はタイル貼りで、日本の風呂みたいに洗い場があって広い。

この日は、夕食をみなで外で食べよう、ということになり、散歩がてら出掛けた。お城まで歩いて行くと、お城の方から歌声が聞こえる。皆は興味ないらしく、戻ってしまったが、私だけ声に誘われてお城に入ってみた。建物がぐるりとつながっているが、歌声は右手の建物から聞こえる。

入口が開けっ放しなので、中に入ると、立派なシャンデリアが輝く華麗な部屋に、椅子を並べて、100人ほどの聴衆を前に、男性が歌っていた。部屋の入口に立っている女性に、入っていいか、と聞くと、どうぞどうぞ、と真ん中辺りに空いてる椅子に案内してくれた。辺りを見回すと、だれも私など気にしないで、うっとり歌を聴いている。歌っている男性の声はバリトンで、とても粘りのあるよく響く声で、私もすぐにうっとり目を閉じてしまった。私はそれまで、クラシックの歌曲はあまり聞いたことがなかったけど、いやぁ、生の声って素晴しいですねえ、男声のバリトンは透明感溢れる繊細なところから、力強いところまで、歌詞は分からなくとも、引き込まれた。30分も経ってないと思うが、ずいぶん長く聴いていたような心地よい気分。何曲か聴いて、男性が水補給で小休止になり、ふっと時計を見ると、いけない、21時に戻らなきゃ、と気が付き、席を立った。入口の女性に、ありがとう、素晴しかった、これはどういうコンサートなの?とお礼がてら英語で尋ねたら、英語で「仲間内で開催したバリトンコンサートです」、事前にDM20ずつ集めたんだと。えっ、じゃ私も払わなければ、と言うと、「いいんですよ、楽しんでいただけたのなら嬉しいです」だって。バリトンにも魅了されたが、それ以上にとても和やかな気持ちになりました。

入口でもらった手作りのチラシを見ると、このバリトンの歌手は、Andreas Reibenspiesという人で、当時まだ30才後半だったと思うが、現在では音楽学校の先生やりながら、地元でご活躍されているようだ。商業的に有名な人でなくても、こんな素晴しい歌声を聴くことができて、実に幸せ~

 

ホテルの窓からの景色

翌朝7時に眼が覚めて、屋根の窓から外を覗いたら、息を呑む素晴しい景色。オレンジ色と茶色の屋根が緑に包まれて、見事に調和している。こちらは南側で、お城は北側なので見えないが、正面にSt. Peter教会の双子の尖塔がちょうど窓枠に入って、絵のような構図、これは素敵だ。

 

 ホテルの部屋

 窓からの景色

 

ホテルの食堂

食堂は木のぬくもりを感じる温かい雰囲気、食事も大きなホテルのお決まり朝食と違って、ハムのオンパレードでとても美味しかった。宿の個性が詰まっている感じ、お客さんが他にいなかったのか、我々だけの食堂は広々として、実に優雅な朝食でした。

 

 ホテルの食堂

 

ブルッフザール城

朝食後、数人の仲間とお城(Schloss Bruchsal)の見学に行った。昨日は右手の建物に入ったけど、今日は正面の入口から入った。ホールと階段の優美なこと、大理石でできているのか、白く滑らかで、壁や天井には立体的な装飾や絵画が浮き上がって見える。これは建物自体が美術品だ。入館料は、写真満載の立派な小冊子付きでDM11.80だったが、300年近く経っているようで、最近修復されたらしく、どの部屋もとても綺麗だ。昨日入った建物は、お城の左翼の室内楽ホール(Kammermusiksaal)だったんだ。なんでこんな田舎町にこんな立派なお城があるのか不思議だが、規模の大小はともかく、どこにでもお城や教会があって、それぞれ個性豊かなんでしょうね。

 

 ブルッフザール城

 

 ブルッフザール市街地図