5.2 ケルン

 

欧州に唯一のアンプ

飛行機1時間ちょっと、時差1時間なので、9時半過ぎに独ケルン・ボン空港に到着、10時には入国手続きと両替を済ませ、タクシーでホテルへ。昨年はボンだったが、今回はケルン(Köln)のホテル(Mercure)で、空港から20kmほど、20分くらいで着いた。アパートのような簡素な外観で、部屋も無駄が一切ない。昨年のボンのホテルは古くても温かみがあったけど、こちらは無機的に感じる。

ホテルの部屋から開発委託先に電話して、迎えに来てもらう。ホテルのロビーで待つことにして外に出てみると、おっ、ホテルの入口の隣はオーディオ機器の店らしい。ちょっと興味があるので入ってみると、いろんなスピーカが並んでいる。店長さんがやってきて、英語で自慢話を始めた。「すごいアンプがあるんだ、デンマークのディナウディオ(Dynaudio)製のArbiterというパワーアンプで、DM275,000なんだ、欧州で、ここにしかないんだ」って!2,000万円もするアンプなんて、一体誰が買うんだろう?欧州に1台ってことはないにしても、ここら辺に1台ってのは確かでしょうね。音も聴かせてくれたが、スピーカにも依るので、その凄さは良く分からなかったけど、店長さんの誇らしい笑顔が記憶に残っている。

 

 ホテルの外観

 

 ホテルの部屋

 

 オーディオ店

 

Identity

11時にお迎えが来て、前回と同じブリュールの委託先に30分くらいで到着。早めのランチを済ませて、午後は技術打ち合わせと開発委託契約の取り交わし。相手はドイツ人ばかり4人、彼らの英語は、独語風の訛りがあって聞き辛いが、イギリス人のネイティブ英語よりは分かり易い。お互い第二外国語なので丁寧に喋るからでしょうね。何とか無事終わって、契約書にサインして、シャンパンで乾杯。かっこいいですね。

20時半に終わって、全員でケルンに行って夕食。委託先が予約してくれたこじんまりした店で、疲れのせいか、あまり食欲がなかったけれど、雰囲気はとても良かった。

23時半にホテルに戻り、仕事のまとめをして、1時半に就寝、相変わらず遅いが、まともに寝た。

 

一人で4人のドイツ人を相手ってのも、ちょっとかっこいいが、今思うと、よく平気でやってきたものだ。怖い物知らず、というか、でもそれだけではないかも、、、

私は40歳になってから、四十不惑で剣道の道場に通い始めた。剣道はスポーツというより人間形成の道でもあって、小学生相手に稽古しても負けてしまうような、いわゆるおっさん剣道だけど、誰かにではなく自分に勝つため、と考えれば、恥ずかしくない。道場で訓わったことの一つに、丹田の訓えがある。人間の中心は臍下三寸の丹田にあり、ここに、力を込めて気を集めれば、腹が据わる、というのだ。精神論的な話にも聞こえるが、おっさん剣道でも、心の支えになっていたのだと思う。こういう気構えが日本人らしさ(Identity)につながり、英語が下手くそでも、背が低くても、一目置いてもらえたのかもしれない。

実際、彼らはみな大学の博士課程を卒業した一流のエンジニアばかりで、ちっぽけな日本人など、本来なら何とも思わない立場だと思うが、私の背後に会社があるからかもしれませんが、私個人を相手にしてくれている、という感じがした。これは、昨日ホテルのバーで一杯やったアメリカ人も、もちろんDr.Pも同じだ。彼らが友人としての日本人に求めるものは、日本人のIdentityだと思う。立場を代えれば、こっちだって相手にIdentityを期待している。迎合してくるだけの人だったら、最初のうちは調子よくても、長続きしないと思う。外国人と交渉したり、一緒に仕事をするときには、互いのIdentityがとても大切だと思う。自分流に押しつける、というのではなく、互いのIdentityを尊重し合う、ということだ。

 

ケルンの大聖堂

翌朝は7時に起きて、ホテルで朝食、よく寝たので美味しい。この日は午後の便でパリに行く予定だが、午前中は少し余裕があるので、ケルンの大聖堂(Kölner Dom)を見てこよう。北に1kmほど歩けば大聖堂があるはず。ケルンの街並みは、整然と道路が走っているわけではないが、大聖堂の先端が見える方向に歩けばよかった。大聖堂をすぐ傍で見上げた、でかい。

大聖堂には自由に入れて、まだ誰もいなくて静寂。中は暗いが、ステンドグラスが明るく、美しい。長椅子に腰掛けてしばらく目を瞑っていると、自分が善人になったような、敬虔な気持ちになる。ずっとここにいていいならそうしたい、穏やかな気持ちで、10分くらい静かに座っていた。

今回は座っていただけだが、ここには6年後にも来て、その時はてっぺんまで500段もある階段を登った。眺望はもちろん素晴しいが、登った、という証拠をみなさんが残すんですね、落書きが専用のボードにびっしり、あれはアートでしたね。その時の根元の写真で、大聖堂の大きさがわかる。

 

 ケルンの街並み

 

 ケルン大聖堂

 

 ステンドグラス

 

 落書き(2002年撮影)

 

 ケルン大聖堂(2002年撮影)

 

 ケルン市街地図

 

貴重なプロペラ機

10時頃にタクシーで空港へ、30分程でルフトハンザ(Lufthansa)に搭乗手続きを済ませ、空港内のカフェでコーヒー休憩。12時半に搭乗し、13時前にはケルン・ボン空港を離陸した。今回もプロペラ機で、60人乗りくらい、この後の出張ではこの経路もジェット機になってしまったから、最後の貴重な機会だった。

 

 ルフトハンザのプロペラ機