3.1続 2度目のロンドン

 

Mr.TとDr.P

丸一日、仕事もお昼も関係会社の中だったが、事務所の机の配置に感心、ぐるりと背中合わせに5~6人机が並び、後ろを向けばすぐ顔合わせて打ち合わせができる。当時の日本では、机を向かい合わせに短冊状に並べて、背中側は通路になってるのが普通だったから、向かい合わせの人の顔が気になって目の前に背の高い本など並べて壁を作ったりしてた。この後で、完全に個室という事務所も数多く目にするが、ここの机配置は効率的、理想的だと思った。

ここの所長さん(Mr.T)は日本人だけど、ロンドンとパリを拠点にしているので、従業員は英仏の賑やかな顔ぶれだ。みなから「ボス」と慕われている太っ腹の人だ。私よりちょっと若いけど、外国駐在歴が長く、英語はペラペラ、だけど流暢というより、日本人の英語丸出しのとてもはっきりした発音で、まったくごまかしのない喋り方、日本人はこれでいいんだ、というまさにIdentityを感じさせる。

従業員の中でも、今後何回も登場するフランス人(Dr.P)がいる。私より10歳ほど若い、仏の工科系の大学(日本の東工大のような)の博士号を持つ、超一流のエンジニアだが、日本語はダメ。1年前から仕事の関係で、お互い、第2外国語の英語でやりとりして、何やら文法的にはおかしいけど、十分意思疎通はできた。今では一生の友人と言える存在になったのだが、彼とのやりとりが、私の度胸だけの英語力を大いに高めてくれた。英語力というのは、学校で文法を習ったり、会話学校で訓練するより、日本語を話せない友人を持つことが、一番身につくと思いますね。

 

やすらぎの街ウィンザー

仕事が終わって夕方、Mr.TとDr.Pと一緒にウィンザー城に行って、もうちょっと先の面白い場所でディナーということになった。ウィンザー(Windsor)は、Mr.Tの車で30分くらい、街に入った途端、まるでお伽話の国に来たような、可愛い街並み。ロンドンのような厳めしい雰囲気はまったくなく、三角屋根の建物に気持ちが和む。

ウィンザー城(Windsor Castle)はさすがに石の塊で厳めしいが、エジンバラ城のような孤高の城ではなく、周辺に庶民の生活があるので、親しみを感じる。普段は中まで入れるらしいが、この日は王室旗が掲げられていて、これは女王様がご滞在の印、ということで門の前まで。昼間は観光客が多いんだろうが、もう夜8時なので、だれもいない。彼方の旗を眺めながら、荘厳だけど静かで優しい、女王様と一体化したような石の塊に心が安らいだ。エリザベス女王は2022年に亡くなられたけれども、ウィンザー城の中の礼拝堂(St George's Chapel)に埋葬されているということだ。ここは永遠の安息の地なんですね。

 

 ウィンザーの街並み

 

 ウィンザー城

 

 ウィンザー城近辺の地図

 

夢のようなモンキーアイランド

面白い場所というのは、ウィンザーから7~8km先にあるモンキーアイランド(Monkey Island)、敷地が水路に囲まれ、入口には水路を渡る吊り橋が掛かっている。これは夢のような場所だ。

もう薄暗いんだけど、木の上に止まっているのは、なんと孔雀なのです。レストランのテラスの椅子に座って、しばし談笑していると、目の前の芝生には結構小鳥が群れている。やがて孔雀も降りてきて、芝生の上で羽根を扇のように広げて見せてくれたり、そのうちに足下までトコトコ歩いて寄ってきて、座っている椅子の周りをウロウロ。何もくれないので諦めたのか、また木に戻っていった。動物園で孔雀が羽根を広げるのは見たことがあるが、これは凄いや、唖然と眺めていました。

Monkey Islandというのは、こんなに優雅で孔雀までいるのに、なぜ「猿が島」なんだ?当時のパンフレットにも名前の由来は書いてないが、1723年に建てられて、テムズ川の最も愛すべき場所だ、と書いてあります。最初は宿屋(Inn)として始まったが、今では豊かな遺産だと。パンフレットには、The Monkey Roomという部屋の写真が載っていて、1730年頃描かれた天井画も載っている。おっ、その画は竜宮城の乙姫様のような光景だが、水の上に大きな魚に乗って糸を操りながら、鮮やかな朱の布を手になびかせて近づいてくるのは、乙姫様ではなくて猿ではないか!この水路に囲まれた島の先住民は猿だったのかも!?

     

 入口の吊り橋

 

 吊り橋から見た水路

 

 レストランと孔雀

 

 テラスにて

 

 モンキーアイランドの地図