3. 1995年6月 12日間世界一周

 

3.1 2度目のロンドン

 

なんで世界一周?

80日間世界一周なら余裕だけど、12日間世界一周とは忙しい。欧州や米国に研究開発委託先があり、ぐるっと周ってくることになった。私は子会社の課長になっていたが、親会社の部長だった友人(Mr.K)の代わりに行くことになったのだ。この出張がなかったら、私は普通に国内で黙々と開発に専念する技術者だったと思うが、これを機会にユニークな会社人生を送ることになった。

 

旅程は、英->独->仏->米東海岸->米西海岸 という西周りなので、西へ行く度に一日が時差分だけ長くなり、帰国時には一日分寝なかった、という勘定になる旅である。これまで2回の出張ではさほど時差ボケを感じなかったが、どうなりますか?

箱崎で出国手続きして、リムジンバスで成田へ。14時成田発のBA(British Airways;英国航空)の直行便で、18時ヒースロー空港着。夏時間で時差8時間なので、12時間かかったことになる。半日で行けるなんて、ずいぶん速くなった。西周りは午後ゆっくり出ても、夕方着いて、まだ4時間しか経ってない、ってことで、得した気分。

JAL(日本航空)のジャンボ機もいいが、BAもなかなか快適だった。わざわざJAL以外を選んだのは、できるだけいろんな国の飛行機に乗りたかったからだけど、おかげでいろんな人とお話でき、各国の美人にも接することができた。当時のBAの機内食メニュのパンフレットを見ると、サラダとメイン料理とデザートとコーヒーで立派、これも楽しみの一つだった。野菜サラダも「ハーブビネグレット添えシェフサラダ」なんて書いてあると、訳わからないけど楽しみ。メインはフィレステーキか鰻丼、フルーツも「パッションフルーツ」なんて、何が出てくるんだろう。

 

 機内食メニュ

 

通貨レート

ヒースロー空港での両替は2度目、やはりスリル満点。円が強い時代で、以降、いろんな通貨が出てくるので、ここで、当時のレートを書いておきます。

米ドル $1=82円、 英ポンド £1=137円、 仏フラン FF1=18円、 独マルク DM1=64円

ただ、こんなに円高だったのは一時期だけで、現在は円安ですが、この物語の頃は、他の出張時含めて、感覚的には次のレートで換算してください。

米ドル $1=100円、 英ポンド £1=150円、 仏フラン FF1=20円、 独マルク DM1=75円

 

テムズ川の氾濫

ヒースロー空港からグロスターロードのホテルへ、今回はタクシーで。地下鉄なら£3で済むけど、2度目だからテムズ川に沿って、景色を眺めたい、と思った。幹線道路から外れて、少しの区間でも、ということでテムズ川沿いの細い道を走ってもらった。たぶん幹線道路から近いチズウィック(Chiswick)辺りと思うが、昨日大雨だったとかで、水かさがかなり多くて、泥水みたいで、随分汚い川だなあ、と思っていたら、なんと、途中でテムズ川が氾濫して、道路が水を被ってる。運転手はそのままジャバジャバと通ってしまったが、あまりの光景に、ちょっと停めてもらって、写真まで撮ってもらった。運転手さんには、迷惑かけてしまったので、チップをはずみました。

 

 テムズ川の氾濫

 

 ロンドン近郊地図

 

ロンドンの地下鉄

ホテルはグロスターロード(Gloucester Road)のForum Hotel、20時にチェックイン。前回泊ったホテルで、その時は日本人だらけで興醒めしたが、今回はさほどでもない。まだ明るいので、前回も歩いたピカデリー広場(Piccadilly Circus)辺りまで、夕食がてら散歩することにした。

ホテルの前から地下鉄に乗れば、下調べした所は大体行ける。ブラックキャブも至る所にいる。ダブルデッカーは、前回来た時一回乗ったけど、バス路線が分らないので、乗りこなすのは難しそうだ。まあ、米国と違って、歩けないこともない。

ロンドンの地下鉄は縦横に走っていて、乗り換えも含めて、とても乗りやすい。すべての駅名が乗り換え案内表示にあるので、行きたい駅への乗り換えを間違えることはない。日本のように自分の行きたい駅名が乗り換え案内になくて、終点や主要駅名だけで乗り換えを示す、などということはない。地下通路も湾曲した一本道で、日本のように途中で枝分れしたり、交叉したりでどっちへ行くか迷う、ということがない。ロンドンでは地下鉄のことをTubeというが、通路も丸いチューブ状だ。通路の壁にエルトン・ジョン(Elton John)やBBC PROMS ‘95のポスターが貼ってあって、楽しい。

地下鉄の駅も特徴があって面白い。グロスターロード駅は、地下深い所にあるようで、長いエスカレータだが、下では大抵だれかが楽器を演奏していて、それがうるさいというのでなくて、駅の一部になっているようで、これもまた楽しい。ホームも明るく開放的だ。後日、パリの地下鉄でも、駅には感心したのだが、日本のような機能だけの構造と違って、個性豊かだと思った。もちろん目新しいから、ということかもしれないが、いろんな工夫があることも確かだ。

ピカデリー広場は夜9時というのに、エロス像(ほんとはエロスじゃないということだが)の回りに人が大勢いる。10年前は気が付かなかったけど、エロス像の向こうのビルに日本のメーカの巨大広告が目立つ。10年前にはバスの横腹にも日本のメーカの広告を見たけど、日本経済は力強かった

 

 地下鉄のエスカレータ

 

 地下鉄の通路

 ピカデリー広場

 

ウェストミンスター界隈

翌朝は早く目が覚めて、正味2時間くらいしか寝てないと思うが、時差ボケの実感もなく、仕事の前に早朝散歩。地下鉄で今度はウェストミンスター(Westminster)まで行って、ウェストミンスター寺院や国会議事堂の前を散歩して、ビッグベン見上げて、橋を渡って、テムズ川の向こう岸からビッグベンを撮った。渡る前に見上げて撮ったビッグベンが7時5分、橋の中程で撮ったビッグベンが7時10分。テムズ川といっても川幅200mくらいなので、ゆっくり歩いても大してかからない。もう少し歩こう、ということで、隣駅のエンバンクメント(Embankment)までキョロキョロ街並み歩いて7時半。どうということもないエンバンクメント駅前の景観も、現在も同じような感じだと思うと心が和む。

地下鉄でホテルに戻って、朝食を済ませ、ヒースローの近くの関係会社へ、また地下鉄で移動、9時ごろにヒースローに着いて、関係会社までタクシーで行った。振り返ると何と忙しい、でも、昼間は自由時間がないので、朝夕に歩き回るんだけど、これがまた観光旅行とは違う醍醐味だった。

     

 ウェストミンスター寺院

 

 ビッグベン

 

 国会議事堂

 

 エンバンクメント駅前

 

 ロンドン市街地図