2. 1990年12月 米国西海岸

 

2.1 サンフランシスコ

 

エコノミーは楽しい

2度目の海外出張は、サンフランシスコ(San Francisco)、厳密に言えば、もう少し南のシリコンバレーの一角だ。米国の会社に研究委託していた関係で、その打ち合わせのために、現地4泊、足掛け6日の旅程だった。

午後1時半ごろ箱崎シティエアターミナルに行き、JALの搭乗手続きを済ませ、成田に15時頃着き、19時少し前に成田を出て、日付変更線を越えて、同日の10時過ぎにサンフランシスコ着、時差が7時間なので、都合8時間半弱かかったことになる。現在は9時間くらいかかるらしいが、当時のJALのジャンボ機は速かったんですね。

現在はジャンボ機もなくなってしまったようだけど、よくエコノミー症候群とか言われるけど、私はジャンボ機のエコノミー席で十分だ。狭い、とか、隣がうっとおしい、とか言われるけど、私は逆で、その後何回か乗ったビジネス席の退屈なこと。エコノミーで隣に座る人がどんな人か、それでお話ができたりすると、結構面白かったし、機内食も機内サービスもエコノミーならではの楽しみだった。貧乏性なのか、ビジネス席はよそよそしくてつまらない。

昔はエコノミーでも洋酒のミニボトルを無料でサービスしてくれたんだ。シーバスリーガルはもちろん、ジョニ黒とかナポレオンとか、世界中の高級そうなスコッチやブランデーやバーボンやウォッカなど、本物ミニチュアで、どれかを選ぶってのに困ってしまう。自分では買えないからこの機会に味見してやろう、と美人のスチュワーデスが微笑みながら「お好きなだけどうぞ」、言われるままに、でもあまり卑しいと思われてもまずいなあ、とかっこつけて、2本だけ取る。ホントはもっと取りたいが、美人の笑顔が軽蔑に変わりそうで、3本は取れなかった、、、これでいいです、ありがとう。と今度は美人の笑顔が隣の席に向けられた途端、おっ、ひょいひょいと掴んでは座席のテーブルにどんどん並べていくではないか、6本は並んだと思うな。美人の微笑みは全く変わらず、トレイに大盛だったミニボトルの山がごっそり減ったが、そのまま静かに後方席に移っていった。ほえ~、隣はなんと日本人のおばさん、ふくよかなにこにこ顔で「私お酒はあまり飲まないけど、この瓶可愛くて好きなのよね」だって。別に言い訳するでもなく、私が驚きの眼差しを向けたので、答えてくれたんだ。何と素直な!私の眼差しは敬愛の眼差しに変わっていたに違いない。それからいろいろお話して、機内映画を見る暇なんてなかった。

ミニボトルはその後の出張でも何度か経験したが、やっぱり2本しか取れなかった。おばさんの境地になるには、相当経験積まないと、、、でもいつしかこのサービスはなくなっちゃいましたね。

 

 ミニボトルサービス

 

霧のサンフランシスコ

サンフランシスコ(San Francisco)空港には、前年まで同じ部署で一緒に仕事をしていて今は駐在員として赴任している人が、自家用車で迎えに来てくれて、その足でサンフランシスコを案内してくれた。ゴールデンゲートブリッジ(Golden Gate Bridge)を渡って向こう岸まで連れてってくれたが、渡ってすぐの駐車場から眺めると、この日は曇り空だったので、真昼間なのに橋がよく見えなくて、かすかに浮かんで見えた。霧のサンフランシスコですねえ。10年後に再訪したときはくっきり見えたので、壮観な吊り橋の写真を撮ることができました。

 

 Golden Gate Bridge(2000年撮影)

 

カニ

 サンフランシスコの北岸にフィッシャーマンズワーフ(Fisherman’s Wharf)という賑やかな一角があって、漁船がたくさん並んでいる。ここはカニがたくさん獲れる、とかで、桟橋の上に建っているレストラン(Scoma’s)に連れてってくれて、カニを注文した。日本では、脚が何本か、ってところだが、出てきたのは、大きな皿に、ドカ~ンと丸ごと一匹乗ってきた。頑丈そうな鋏が一緒についてきて、それで解体しながら、忙しいこと。たっぷり食べた。日本ではとても食べられない。でも、旨かったか、と問われると、マンチェスターのステーキと同じく、どうかなあ?せっせと食べたことは憶えているんだけど、プリップリとかじわっと味わうとかとは無縁。ちまちま食べるより、豪快でいいけど。因みに掲載したカニの写真は、10年後に同じレストランで、同じくカニを注文したときのものですが、前もこんな風に山盛りでした。港の風景も10年間変わってないし、現在も同じ雰囲気でしょうね。

 

 フィッシャーマンズワーフ

 

 桟橋風景

   

 カニ山盛り(2000年撮影)

 

ロンバード絶景

どこを走っているのか分からないが、ずいぶん坂の多い街で、その急斜面を路面電車が走っていたり、落ち着いた感じの白っぽい建物が整然と並び、街路樹の緑も連なり、誠に優雅な景色。突然、眼下に街並みと海が広がった。ここはロンバード(Lombard St)だとか、北方向にフィッシャーマンズワーフ辺りが見渡せ、東側は急斜面にS字状の道路があり、遠く海まで見渡せる。これは絶景、このS字状の急坂を車が下りていくんだから驚き。写真は10年後に同じ所で撮ったものだが、最初の時は突然の視界に驚嘆。現在も同じような絶景だろうね。下から見上げると、これは道路の芸術作品、10年後のスケッチでは、花が咲き乱れ、まるで絵画のようだ。因みに、日本では、市街地にわざと緩いS字カーブをつけて、スピード出せないような工夫として取り入れられているのは、ロンバードの真似らしい。

 

 ロンバード(2000年撮影)

 

 ロンバード(2000年画)

 

 サンフランシスコ地図