1.2 マンチェスター

 

のんびりインターシティ

欧州はどこへ行くにも飛行機で1時間という感じだが、エジンバラからマンチェスターに寄って、ロンドンに戻る旅程なので、日曜日の午後、鉄道で移動することにした。山のない平地ばかりの英国大地を、地面にへばりついて移動するのもいいものだ。

午前中にウェイバリー駅に行って切符を購入、美術館に行きたかったので、ウェイバリー駅16時発にした。ヨークで乗り換えて、マンチェスターに着くのは4時間以上掛かる、とか。初めて海外で自分で鉄道の切符を買ったが、特に窓口で困ることもなかったけど、実はマンチェスターのホテルが予約してなくて、ちょっと心配。同行者はとても心配だったらしい。

都市間特急列車インターシティ(IC)は、黄色っぽいオレンジ色の派手な車体で、車内は初めて見るからだろうけど、日本の新幹線より洗練されていて、落ち着いた雰囲気だ。座席も特別な席でもないけどゆったりしている。

日本の車窓からは,必ず遠くに山があって視界が途切れるが、英国の大地は山がない、視界は林とか建物で遮られるが、それがなければ地平線まで見えそうだ。日本と同じような狭い島国なのに、なんて雄大、のどかなんだ、たくさん羊がいる。ずいぶん時間はかかったが、車窓からのんびり外を見ていて飽きなかった。ホテルの心配を補って余りある体験だった。

 

 インターシティ

 

 車窓からの眺め

 

ホテル探検

マンチェスター駅(Manchester Piccadilly)に20時半近くに到着、駅で聞いてManchester Grandというホテルを紹介してもらった。駅のすぐ前だったけど、大都市のはずなのに、だれもいない、うす暗い中を探検気分。一人だったらとても不安だったと思うが、同行者がいたから心強かった。尤も同行者は、心強いなんて迷惑な話、不安を一身に背負い込んで、探検気分どころではなかったようだ。申し訳ない、、、

ホテルはすぐ分かったが、夜遅く予約なしに突然やってきた客に、フロントのお姉さんも警戒してか、笑顔はまったくなし。「クレジットカードを出せ」と言われて、持ってない、と答えると、「現金なら前払いしろ」と言われたのを憶えている。なんと朝食付きで£40(約6,000円)、5階の部屋で、カプセルホテルみたいな狭い廊下で、風呂はなくて、1m四方のシャワーだけの、狭苦しい部屋だった。エジンバラのホテルとはえらい違いだ。同行者は「言わんこっちゃない」とぶつぶつ。

マンチェスター2日目、3日目はちゃんとまともなホテルの予約がとってあったが、この日はクレジットカードが身分保証、ということを痛感した。

 

 Hotel Piccadillyからの眺め

 

 マンチェスターのホテル地図

 

分厚いステーキ

マンチェスターでの仕事は、協業先や大学との打ち合わせで、月曜日と火曜日、それぞれ丸一日がかりだったが、駐在員がずっと一緒で、必要に応じて通訳もしてくれたので、自分で何とかしようという悲壮感に乏しい。まあ楽でいいんだけど、エジンバラの時のような緊張感が持てない。日本語の助けが周囲にある、というのはどうもつまらない。

夕食は駐在員が郊外のステーキ店に連れてってくれた。夜8時近いのにまだ明るさの残る中、丘のような、周囲に草地があるような場所の記憶がある。注文は駐在員任せだったが、出てきた分厚い肉にびっくり。日本では見たこともないステーキの大きさ、厚さに感心しながら食べている光景が思い浮かぶ。もっとも、日本のステーキに比べると大味で、舌の上でとろける、とかにはほど遠く、もりもり、という感じ。でもステーキはこれでいいのだ、日本のが繊細すぎるのだ、マンチェスター風の豪快なのでいいのだ。

 

ロンドンに戻って衝撃

水曜日の朝8時半にマンチェスター発、ヒースローまで飛行機で1時間弱。ロンドンに戻って、その足で事務所に行き、報告書等の仕事を終えて、午後早い内にホテルに行った。

ホテルは地下鉄のグロスターロード駅(Gloucester Road)近くのJALの契約ホテルだったが、中に入って驚いた。日本人だらけでいっぺんに非日常の高揚感が吹っ飛んでしまった。JALの契約ホテルなんだから日本人が多いのは当然だが、英国にいるという感じがしない。ほとんどの日本人は日本から来るので、初めてここに入ってもそれなりに非日常の高揚感に浸れるでしょうが、エジンバラから来た私には幻滅だった。初めての出張がエジンバラということの希少価値をつくづく感じた。