提訴にあたっての所信 | 平山朝治のブログ

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本日午前、東京地裁に提訴し、提訴後の記者クラブ会見で、以下の文書を配布しました(Word版は→こちら)。

 

提訴にあたっての所信 2021年6月18日

筑波大学とVernalossomによる学問の自由の侵害に抗議する

 

筑波大学人文社会系教授 平山朝治

 

筑波大学は昨年1月につくばリポジトリに掲載した私の論文「NGT48問題・第四者による検討結果報告」(以下、本論説とします)を、株式会社Vernalossom(2021年4月AKSから改称。以下、V社とします)の要求に従ってつくばリポジトリから削除する決定を下したことを明らかにしました。私は、この決定に対して、憲法第23条が保障する学問の自由(研究発表の自由)に対する侵害として筑波大学とV社を被告とする訴訟を提起しました。

まず、本論説を執筆した私の意図は次の通りです。AKBグループに属するNGT48のメンバーであった山口真帆さん(以下、山口さんとします)が暴行被害にあった事件(以下、本事件とします)について、運営会社だったAKSは新潟県に対し暴行はなかったと虚偽の説明をし、本事件を巡る問題を扱った第三者委員会の報告書[1]についてAKSは記者会見を開きました。これに対し山口さんが反論のツイートを出したところ、AKSはこれにきちんとした回答をしないまま、山口さんの意に反してNGT48を卒業させるといった措置を取りました。こうした対応によって、AKSの社会的信用は失墜しました。

そこで、私は、AKSの社会的信用・名誉を回復させるためには、本事件が生じ、山口さんの卒業などに至った経緯を、真実であると信じるに足る諸事実と合理的な推論とによって整理し、それによってAKSが自らの責任を明確にすることが必要であると判断しました。また、そのことを本事件当時AKBグループ総監督であった横山由依さんら現役メンバーの多くも、前田敦子さん、大島優子さん、指原莉乃さんや山本彩さんら芸能界で活躍している卒業生の多くも望んでいると判断しました。そこで、AKSの経営の問題点の指摘も含めて、AKSの名誉回復の基礎となるような知見を提供することによって、私なりの学問の社会的責任を果たすべきであると考えて本論説を執筆し、2020年1月、つくばリポジトリに掲載・公開されました。これに対し、4月になると本論説がSNSで話題になり、ダウンロード回数が急増したため、AKBグループの国内事業から全面撤退してAKSから改称したV社から、本論説はV社に対する名誉毀損であるとして、つくばリポジトリからの削除を求める4月14日付の通知書が筑波大学学長と私宛に送られてきました。しかし、本論説はその内容において、V社が名誉毀損と指摘する箇所の大部分は的外れなものであり、残りの部分も「記述された事実を真実と信ずるについて相当の理由がある」ことが認められ、名誉毀損が成立しないことは、同年8月29日付の筑波大学人文社会系コンプライアンス調査委員会宛の私の代理人作成の申入書の中で逐一明らかにしました。
 以上述べた通り、本論説に関する私の意図としても、その内容としても、本論説はV社に対する名誉毀損には当たらず、むしろ地に落ちていたAKSや、その国内AKBグループの運営権を継承した諸会社の社会的評価・名誉を回復するためのものであると考えております。

 そして、そのような私の意図は叶えられ、本論説は、山口氏暴行事件を巡って低下していたAKBグループ運営諸会社の社会的評価回復に大きく貢献しました。このことは、SKE48の運営会社を連結子会社とするKeyHolderの株価推移によって示されます。株価が急上昇中の6月5日には、AKSから分かれたNGT運営会社Floraの経営責任者である、株式会社Sproot代表取締役の渡邊洋行氏は、NGTファンに向けたツイート添付文書のなかで「明確なのは、これまでの経営がやり方を間違えていたということ。[2]」と明言しました。また、V社代表取締役吉成氏はV社が国内AKBグループの運営から全面撤退したあともKeyHolderの大株主として株価上昇から莫大な利益を享受していました。

図 KeyHolderの株価推移

出所 Googleファイナンス(私が加筆)

 

それにもかかわらず、本論説はV社に対する名誉毀損であり、リポジトリからの削除と謝罪をしなければ法的手段に訴えるとV社は私および筑波大学を脅し、私はV社こそ学問の自由を侵害していると回答しましたが、主催イベントJ-WAVE INNOVATION WORLD FESTA 2019でAKBグループの国内選抜メンバーとコラボしていた筑波大学は、すでにAKSの分社化とともにAKBグループの国内事業とかかわりがなくなっていたV社との間に本論説をリポジトリから金輪際ダウンロードできなくするといった内容の密約を交わし、人文社会系コンプライアンス調査委員会の報告書と代理人の申入書が独立した検討によっていずれも本論説はV社に対する名誉毀損ではないと明言したにもかかわらず、V社との密約遵守のため、手続き的な違法を延々と繰り返し続けました。外から見ることができない密約の存在は、状況証拠からの合理的推論によって証明可能であると、私や代理人は考え、また、それ抜きでは本論説をめぐる一連の出来事を理解することはできないため、訴状のなかでそれに言及しました。

公的機関や企業とのコラボの機会が増えてきた大学が、懇意の公的機関や企業との間の共同不法行為として所属研究者の学問の自由を侵害する可能性は高まっていると思われます。大学が外部の要求に屈したりそれを過度に忖度したりすることなく、自覚的に外部の圧力から所属研究者を護ることは、研究者が社会における指導的立場の人たちに建設的かつ批判的な助言・助力をすることによって、社会に貢献してゆくために必要不可欠なことで、本論説に対する筑波大学の取扱のような出来事は、研究者の自尊心を傷つけ、大学に利害関係を有する公的機関や企業への忖度によって研究計画や研究内容も歪めてしまいます。司法はそのような大学の役割をふまえて、憲法が保障する学問の自由を支える義務を負っており、国民からのその付託に答えるような審理が行われることを希望します。


[1]株式会社AKS第三者委員会『調査報告書』2019年3月18(https://ngt48.jp/news/detail/100003226)。

[2]https://twitter.com/hnabetter/status/1268772627562164231

 

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