台湾問題の解決策を考える[1](プレプリント)
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平山朝治
目次
エピグラフ
1.台湾の民族意識を尊重して、台湾への対応を考えるべき
2.一党独裁体制にとって台湾は毒饅頭
3.台湾有事:米軍出動・存立危機事態認定では間に合わない
4.台湾地位未定論の持つ意味
エピローグ
付論 米中首脳会談と台湾問題解決への見通し:武器売却をめぐって
エピグラフ[2]
台湾人のアイデンティティーなどに関する最新の意識調査結果で、自分を『中国人』と認識する人が2.4%と、調査を開始した1992年以降で最低となった。一方、『台湾人』と答えた人は61.7%で、前年比1.6ポイント減少したものの、4年連続で6割台を維持した。「両方」だと答えた人は前年比1.4ポイント増の32%だった。[3]
国民党の掲げる対中融和路線への支持は、今後も増えることはない、と言う現実があると思われる。その理由は、第一に、2020年の中国による香港の反政府運動弾圧により、高度な自治と引き換えに中国が平和的政治支配を進めるという『一国二制度』への支持は地に落ちたこと。第二に、台湾人の自己認識が中国本土から離れ、確実に台湾化が進行していることだ。[4]
1.台湾の民族意識を尊重して、台湾への対応を考えるべき[5]
エピグラフのように、今日の台湾の人々の過半は自分を台湾人とし、台湾人ではなく中国人だとする人はごく稀だ。また、台湾は明朝遺臣・鄭成功が建てた南明朝が1662〜83年の間支配し、「鄭成功は今日では台湾人の精神的支柱『開発始祖』『民族の英雄』として社会的に極めて高い地位を占めている[6]」
台湾独立の是非などに関する台湾民意基金会の世論調査によれば、2019年1月以後独立支持は約5割で一貫しており、2019年1月と2021年12月をのぞいて現状維持は約4分の1、両岸統一は1割代前半にすぎない(下図[7])。
したがって、中国が主張し、日本や米国も尊重してきた「一つの中国」論が、中国とは異なるという国家ないし民族のアイデンティティを今日の台湾の人たちは持っているという実情と乖離していることは否めず、台湾を香港のように「一つの中国」に吸収同化することは、自然法的・人道的にも疑問視されうるのではなかろうか?
そもそも、このような台湾の人々のアイデンティティを考慮すれば、台湾侵攻において中国が海上封鎖ののち上陸に成功したとしても、山岳部の多い台湾の人たちの多くはゲリラ戦で対抗し、日米韓東南アジアオーストラリアの政府や民間が支援することによって、中国の台湾統治コストは非常に高いものになると予測できるので、このことを考慮すれば、中国はいかにメンツを保ちつつ台湾侵攻を事実上諦めるか、という課題に直面していると言うべきではなかろうか?
中国が台湾全体を掌握することは困難で、「この戦争は間違いなく、台湾、日本、アメリカ、のみならず中国にも、あらゆる面で壊滅的損害をもたらす[8]」とされており、ゲーム理論的には協調しなければ共倒れになるような社会的ジレンマのひとつである。
米軍が中国の台湾封鎖に対抗して出動し、中国が米軍を攻撃した場合には日本が存立危機事態として米軍を防護するという、岡田議員が示唆し高市首相が公言した方針は、中国が台湾に上陸した場合に容易に予見される、長期にわたり、勝敗のゆくえも定かではない、中国人民解放軍と台湾民族主義ゲリラの戦闘を中国が思いとどまるように誘導し、中台双方にWinWinの結果をもたらそうとするものであって、中国にとっても利益になると思われる。
2.一党独裁体制にとって台湾は毒饅頭[9]
1節で、「中国の台湾統治コストは非常に高いものになると予測できるので、このことを考慮すれば、中国はいかにメンツを保ちつつ台湾侵攻を事実上諦めるか、という課題に直面していると言うべきではなかろうか?」と書いた。これは、習主席が合理的であれば、台湾侵攻のコストは、上陸に成功した場合でも禁止的なので、台湾侵攻を断念するはずだ、ということをふまえたものだ。
台湾政治大学選挙研究センターが1992年から毎年行っている世論調査(自分は中国人か台湾人かその両方かを問うもの)では、1992年には両方が46.4%、中国人が25.5%、台湾人が17.6%だったのが、2021年調査では、台湾人が62.3%、両方が31.3%、中国人との回答は3%を切り、2.8%まで落ち込んでいる。他の調査(台湾民意基金会世論調査2020年)では、台湾人の割合が80%を越える(83.2%)ものさえ有り、この傾向は今後も変わることはないだろう[10]。
この世論調査から、1989年の天安門事件のあとでも、自分は中国人ではなく台湾人だという人は2割もなかったが、2020年の香港民主化運動弾圧の直後に6割を超え、2024年には「四年連続で六割台を維持した[11]」ことがわかる。このように、2020年以降の台湾人のアイデンティティは習政権が一国二制度を踏み躙って香港を一党独裁体制に飲み込んだことの直接の帰結である。したがって、台湾人の多くは無条件に中国から独立したいのではなく、一国二制度が保証されて民主主義体制が守られさえすれば「一つの中国」であってもよいと思っているのだ。
習政権にとって台湾侵攻は、長年にわたる「一つの中国」という目標の追求ではもはやなく、香港民主化弾圧の延長として台湾の民主主義を弾圧しようとするものだ。もしそれを実行して失敗すれば一党独裁体制が危機に陥るという瀬戸際に習主席は立たされ、進むか断念するかの決断を迫られているのだ。
中国人ではなく台湾人だとするアイデンティティが6割を超えて安定しているところに、中国が侵攻すれば、さらに中国人ではないとする人の割合が増えて9割を超えるのは火を見るよりも明らかだろう。上陸成功の後、同じ中国人が住む島だと思って台湾に渡った中国人の少なからずが、自らを中国人ではないとする台湾人の実態を知って、自分たちは習政権に騙されてきたと気づき、中長期的には一党独裁体制の崩壊を帰結する可能性が少なくない。
台湾侵攻を断念し、中国自身がすすんで一党独裁体制を捨てて民主化へと政策転換する以外に出口はないように思われる。
このような見通しに大過ないとすれば、中国の一党独裁体制にとって台湾は毒饅頭なので、毒饅頭を食べさせるという戦略もありえるのではなかろうか?
中国が台湾を封鎖し、上陸の準備をしだした場合、日米韓は、中国との軍事的衝突は極力さけつつ、台湾から脱出したい人々の救出を最優先し、中国軍の台湾上陸後は、台湾が兵糧攻めされないよう支援するための人道的ルートの確保を最優先し、中国軍上陸後の具体的な進展は中国と台湾に任せれば基本的には十分で、軍同士の衝突が起こりそうな場合に限って仲裁・介入すれば足りるのではなかろうか?そのような環境を整えれば、台湾は非暴力不服従戦略[12]を主に使って中国と対峙し、最終的には本土の共産党一党独裁を倒して、台湾の望むような「一つの中国」を実現できるかもしれない。これまで検討されてきた、軍事力を所与として戦闘の勝敗を予測するようなシミュレーションは、以上のような戦略があり、おそらく最も合理的であることを看過してきたのではなかろうか?
3.台湾有事:米軍出動・存立危機事態認定では間に合わない[13]
台湾の海上封鎖が生じた場合に、日本がそれにどうかかわるか、どういう場合に存立危機事態と認定されるのかについて、岡田議員は明確な基準が必要だと主張し、高市首相が「海上封鎖というのも、これは戦艦で行い、そしてまた他の手段も合わせて対応した場合には〔米軍対する〕武力行使が生じうる話でございます。例えばその海上封鎖を解くために米軍が来援をすると、それを〔中国軍が封鎖解除を〕防ぐために〔米軍に対して〕何らかの他の武力行使が行われる。[14]」と答えた。
それに先立って、2025年7月12日、英紙は「米国防総省ナンバー3のコルビー政策担当次官が日本とオーストラリアの国防当局者に対し、台湾有事で米中が軍事衝突した際の役割を明確化するよう伝え、『関与』を求めたと報じた。複数の関係筋の話としている[15]。」と報じた。当時の石破内閣は両院ともに少数与党だったので、外相経験があり、集団的自衛権について柔軟な立場を公言してきた立憲民主党の岡田氏にも参画してもらって米国防省の要請への回答を石破首相がとりまとめ、高市内閣もそれを継承し、高市氏はそれをふまえて答弁したのではなかろうか?
この答弁が従来の政府の立場を踏み越えているという批判がその後各所から巻き起こり、岡田氏自身はしばらく様子見していたがその批判に結局同調した。
しかし、質疑応答の際の岡田氏は真逆に、上で引用した戦艦答弁に対して「とても存立危機事態について限定的に考えるということにはならないですよね。非常に幅広い裁量の余地を政府に与えてしまうことになる。だから私は懸念するわけですよ。」と、〈戦艦を使った海上封鎖の際に米軍が来援し、米軍に対する武力行使が行われる〉というだけでは限定が不十分で政府の裁量の余地がまだ広すぎると批判していた。
岡田氏が台湾有事における存立危機事態の認定条件を極めて限定的に決めておくべきだと主張したのは、曖昧な基準しかないと、認定に時間がかかり、手を拱いてしまうことを恐れたためではないかと思われる。
「台湾の国防安全研究院の関係者に『日本はCSISのレポート[16]をどう受け止めたのか』と尋ねられました。彼らは日本政府と自衛隊が動けず、戦況が大幅に不利になることを本気で懸念しているのです」「自衛隊を動かし、米軍と協働させるには、政府が『事態認定』をする必要があります。(中略)まず政府内に対策本部を立ち上げて審議し、総理が決断して、国会が承認するという手続きを踏むようになっています。緊急時には国会承認は事後でも構わないとされていますが、こうした手続きが必ずしも迅速に進むとは限りません」[17]と日本安全保障戦略研究所上席研究員で元航空自衛隊西部航空方面隊司令官の小野田治氏は指摘しており、中国による台湾海上封鎖を抑止するためには、海上封鎖が起こる前にどういう場合に存立危機事態に認定するか、できる限り決めておくことで、一刻も早く総理が決定できるようにしておかなければならないという問題意識は、台湾有事について憂慮している日本人の間で共有されている、最大の課題だったと思われる。
岡田氏も高市氏も外務省も防衛省もそのことをよく承知していたので、内閣官房が作成した答弁資料[18]を踏み越えた首相答弁を行うということは、政府の関係省庁と高市氏と岡田氏の共同作業だったと私は推測している。その上で、それに対する批判は首相である高市氏がほぼ全面的に負うことになるのは、当然のなりゆきだろう。
しかし、実際に中国が台湾侵攻をする場合には、太平洋戦争における真珠湾攻撃を手本に、自衛隊はおろか米軍にすら対応する隙を与えない奇襲戦法を行う可能性が高い[19]。
だとすれば、最初から海上封鎖や台湾上陸を許すことを前提とし、中国軍上陸後、台湾は非暴力不服従戦略をとり、日米韓・東南アジア・オーストラリアなどはそれを支援するという、2節で提案した戦略が最も合理的なのではあるまいか?
台湾軍は極力戦闘を避けて温存し、たとえば、海上封鎖には非武装の民間船団が中国軍艦を囲んで抗議、上陸したら非武装のバリケードを築いて進軍阻止、武力攻撃されれば動画などを全世界に発信など。人口の3.5%が非武装抵抗に積極的にかかわれば成功するという研究[20]があり、台湾はその条件を十二分に満たす。
また、この戦略を台湾と米国が事前に中国にも予告しておけば、中国が台湾侵攻に着手する場合の軍事的衝突も回避できるはずだし、先の見通しがよくなり、中国は毒饅頭を食わないという合理的選択をする可能性が高く、一国二制度に落ち着くのではなかろうか?
4.台湾地位未定論の持つ意味[21]
中国が高市首相の台湾有事をめぐる発言に強く反発したため、忘れられたかのようだが、最近の米中対立の最も重要な問題は、1972年ニクソン大統領訪中の際の米中上海コミュニケ以来、半世紀余りの間、「アメリカは、台湾海峡の両側の全ての中国人が、中国はただ一つであり、台湾が中国の一部であると主張していることを認知(acknowledge)している。アメリカ政府はその立場に異議を唱えない。[22]」としてきた基本的な立場を修正しはじめたということである。
すなわち、「米国務省や米国の対台湾窓口機関である米国在台協会(AIT)が9月、約半世紀ぶりに『台湾地位未定論』を公式に打ち出し」、「台湾有事『軍事介入』への環境整備か」とみられている[23]。
それは、中国の台湾侵攻の法的正当性を否定してその際に米国が軍事介入することを強く示唆するものであり、トランプ大統領が台湾侵攻には北京爆撃で対抗すると述べたことが2025年7月に報道された[24]ことといわば車の両輪として、中国の台湾侵攻抑止をねらったものと思われる。
それに対して中国は、11月5日の最新鋭空母「福建」就役式において、習主席がみずから同艦に乗り込み、電磁カタパルトのスイッチを押して最新鋭ステルス戦闘機を発射するなど、アメリカの脅しに屈しない姿勢を示し[25]、台湾有事の勃発までエスカレートしかねない事態に至った翌々日、日本の国会で岡田議員と高市首相が台湾有事をめぐって質疑応答したことは、両氏の意図はともかく、米中対立の構図を日中対立に置き換え、当面の間中国が台湾に侵攻する可能性を消したものと評価できる[26]。
香港民主化運動弾圧を契機に、台湾人が自分は中国人であるというアイデンティティを捨てたことは、中国の台湾侵攻リスクを禁止的に高くし、武力による台湾併合という形での「一つの中国」実現を中国は断念せざるをえなくなったと思われる[27]。
2020年以降、台湾の人々の圧倒的多数は自らを台湾人とし、台湾人ではなく中国人であるとする人はごく少数であるということは、上海コミュニケのなかの「台湾海峡の両側の全ての中国人が、中国はただ一つであり、台湾が中国の一部であると主張している」の部分が現状と合わなくなっているということであり、アメリカが2025年9月に台湾未定論を主張したことも正当化できる。
中国が武力による「一つの中国」実現を断念したことがはっきりすれば、次の段階として、中台関係をいかに安定化させるかということが課題となる。
台湾の民主主義を定めた独自の憲法(1991年第一次改正以降)を中国が侵さないという、実効性のある取り決めが必要だが、それは両憲法より上位の規範なので米中の取り決めや国連決議などが必要ではないかと思われる。
それによって台湾の国際法的地位が確定するので、台湾の体制選択を中国の国内問題とする「一つの中国」論はいったん括弧に入れ、議論の出発点として「台湾地位未定論」が不可欠ではなかろうか?その結果、実質を伴う「一国二制度」のもとで「一つの中国」が実現されるだろう。
台湾地位未定論は戦後米国の一貫した立場だが、1954年の米華相互防衛条約締結とともに主張しづらくなって封印してきたもの[28]で、1971年の米中接近以降もその封印を維持してきたのだが、台湾侵攻を仄めかす中国に対応すべく、伝家の宝刀を抜いたと思われる。
エピローグ[29]
習主席は米中によるG2中心の新型国際秩序をめざしているとすれば、米中が台湾の法的位置付けを定め、東アジアに秩序をもたらすことは、香港のように台湾を一党独裁体制に飲み込もうという目論見の放棄に見合うだけのメリットが中国にはあると判断するかもしれない。
付論 米中首脳会談と台湾問題解決への見通し:武器売却をめぐって[30]
2026年5月14日のトランプ米国大統領と習中国主席の会談において習氏は、台湾を中国の「核心的利益」とする台湾問題について、「適切に処理されなければ両国は衝突し、中米関係全体を非常に危険な状況に追い込むことになる[31]」と述べた。これは、台湾独立の支持や、トランプ氏が会談後に承認すると報道されていた台湾への約140億ドルの武器売却[32]への懸念を意図したものという報道が多い。
習氏の2019年以来の立場は次のようなものだった。2019年1月2日の談話では「台湾に対して『一国二制度の台湾版』を話し合うことを呼びかけ、他方で台湾向けの『武力の使用を放棄することを決して約束しない』とまで言い切った。これは台湾に対する『降伏勧告』に近い強硬な発言である。[33]」「アメリカ統合参謀本部議長のマーク・ミリー(Mark Milley)陸軍大将は2021年6月に連邦議会において、習近平が人民解放軍に対して台湾侵攻能力の獲得を2035年から2027年に前倒しするよう要求したと証言[34]」した。これらから、習氏は2027年には武力による威嚇か侵攻で台湾を併合しようと意図していたと思われる。
これと比べて、今回の首脳会談において習氏は米国が台湾の独立を支持したり巨額の武器売却をしなければ、中国は台湾の併合を試みることはないと保証したと解釈でき、米国に対する警告という表面的な表現とは裏腹に、米国や台湾に対して言外に歩み寄り、武力による威嚇を控えて平和的解決を目指したものと考えたほうがよいのではなかろうか[35]?
この武器売却については、2025年1月に米議会が承認し[36]、米中首脳会談を間近に控えた2026年5月8日に、野党が多数を占める台湾立法院(議会)が民進党頼清徳政権案の3分の2に規模を縮小して可決し、「先月訪中し、習近平国家主席と会談した最大野党・国民党の鄭麗文主席は記者団に対し、可決された予算は米国製武器の購入専用だと説明」した[37]。国民党のなかでも親中派とされ、習氏との関係が良好な鄭氏でさえ支持した武器購入に、習氏が強硬に異を唱えるとは考えにくい。
また、米国議会も台湾立法院も超党派で承認した武器売却をトランプ氏が習氏の意向を考慮して承認しない、あるいは大幅減額するならば、トランプ氏は米国や台湾の民意よりも習氏を優先したことになりかねず、それは政治的に自殺行為だろう。
ありうるとすれば、米中首脳会談の結果台湾有事は遠のいたため、武器売却も不必要か規模縮小が可能になったことをトランプ氏は米国や台湾の人々に説得しなければならないだろう。そうすれば、中国が「台湾問題の平和的解決に向けて努力する」ことを前提条件として、米国は「台湾に対する武器売却を次第に減らしていき一定期間のうちに最終的解決に導くつもりである」という1982年8月17日に鄧小平政権とレーガン政権の間で取り交わされた共同コミュニケ[38]に沿ったものとして正当化できる。
首脳会談に先立って、「トランプ氏は11日、北京で行われる首脳会談で台湾向け武器供与について協議するか記者団に問われると、『その議論は行う。習主席は望んでいないが、それでも協議するつもりだ』と述べた。[39]」したがって、首脳会談において台湾問題を取り上げることは、トランプ氏があらかじめ強く希望していたことであり、習氏もそれに乗ってきたと見るべきだろう。
台湾への武器売却において中国と事前協議しないということを台湾に対する「6つの保証」は明記しており、トランプ氏が武器売却の決定前に習氏との会談でその問題を取り上げることは「6つの保証」に反すると報道されている[40]が、正式文書とされる2016年5月16日の米国下院決議(両院一致決議)には「1982年8月17日の中国との共同コミュニケの発出直後に行われた下院および上院での証言において、当時の東アジア・太平洋担当国務次官補ジョン・H・ホルドリッジは行政府を代表して次のように述べた。(中略)1982年8月17日共同コミュニケは、『台湾への武器売却に関して北京と事前協議を行うことに同意したという意味に解釈されるべきではない』[41]」とあって、中国と事前協議しないと台湾に保証したとは述べられていない。共同コミュニケで事前協議に米国が同意したわけではないので、習氏は取り上げることを遠慮しようとしたが,トランプ氏が積極的に取り上げたのである。
トランプ氏は、習氏がイランには「軍装備品を供与しない」、ホルムズ海峡の開放にむけて「できることがあれば喜んで協力したい」と述べたと明らかにした[41]。この会談が台湾問題とイラン問題の解決への糸口となることを期待したい。
[1] 本稿を補うものとして、「歴史的背景からみた台湾有事問題(報告レジュメと主な議論)」(『平山朝治のブログ』2026年2月13日初出、https://ameblo.jp/vyc13162/entry-12956399045.html、 )を参照。
[2] 「台湾の民族意識を尊重して、台湾への対応を考えるべき(日米中いずれも)」『平山朝治のブログ』2025年12月8日初出、https://ameblo.jp/vyc13162/entry-12949380520.html。
[3] 「『自分は中国人』割合、過去最低の2.4%=台湾意識調査」『フォーカス台湾』2024年2月23日、https://japan.focustaiwan.tw/politics/202402230007。
[4] 石井正文「台湾はどうなる?」『「木場の窓から見えるもの(元外交官の視点)」』第64回、りそな総合研究所、2024年、https://www.rri.co.jp/asia/kiba-64-20240125.pdf。
[5] 注2と同じ。
[6] https://ja.wikipedia.org/wiki/台湾の歴史。
[7] 「台湾民意基金会の世論調査》台湾独立支持が約150万人減少『頼清徳氏の政権下での新低!』游盈隆氏が主流民意を明かす『異常事態』」『風伝媒 日本語版』2025-11-13 17:58、
https://japan.storm.mg/articles/1080961。両岸統一賛成が1991年の45.3%から1996年の14.0%に激減している事情は以下のようだった。「1996年、初めての総統直接選挙が実施される。この選挙に際して中華人民共和国は台湾の独立を推進するものと反発し、総統選挙に合わせて『海峡九六一』と称される軍事演習を実施、ミサイル発射実験をおこなった。アメリカは2隻の航空母艦を台湾海峡に派遣して中国を牽制し、両岸の緊張度が一気に高まった(第三次台湾海峡危機)。北京政府の意図に反して、これらの圧力は却って台湾への国際的な同情と登輝への台湾国民の支持を誘う結果となり、登輝は54.0%の得票率で当選して台湾史上初の民選総統として第9期総統に就任した。」(https://ja.wikipedia.org/wiki/李登輝)
[8] 「その数『3350万回』...米・戦略国際問題研究所のシミュレーションが明かす『中国が台湾全域を支配する「ラグナロク(終焉)シナリオ」』がヤバすぎる」、『週刊現代ウエッブサイト』2023年9月11日、https://gendai.media/articles/-/115677、4ページ。
[9] 「一党独裁体制にとって台湾は毒饅頭」(『平山朝治のブログ』(2025年12月10日初出、https://ameblo.jp/vyc13162/entry-12949630918.html)を、縦書き学術論文の体裁に改めた。
[10] 注3と同じ。
[11] 同。
[12] ジーン・シャープ著、瀧口範子訳『独裁体制から民主主義へ:権力に対抗するための教科書』2012年。
[13] 「台湾有事:米軍出動・存立危機事態認定では間に合わない」『平山朝治のブログ』2025年12月12日初出、https://ameblo.jp/vyc13162/entry-12949811220.html。
[14] 〔 〕内は引用者による補足、質疑応答の記録映像はhttps://youtu.be/J2BXhs7DC4U?t=18373、重要部分の文字起こしはhttps://anond.hatelabo.jp/20251115081535。
[15] 「米高官、台湾有事で日本の関与要求 FT報道『役割明確化を』」『日本経済新聞』2025年7月12日21:13(2025年7月13日 0:25更新)、https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB122Y20S5A710C2000000/、英紙の記事は” US demands to know what allies would do in event of war over Taiwan,” FINANCIAL TIMES, https://www.ft.com/content/41e272e4-5b25-47ee-807c-2b57c1316fe4。
[16] The First Battle of the Next War: Wargaming a Chinese Invasion of Taiwan, https://www.csis.org/analysis/first-battle-next-war-wargaming-chinese-invasion-taiwan .(引用者の注)
[17] 「『日本は本当に台湾有事に対応できるのか』『数10万人の避難者の命を助けられるのか」…自衛隊が動くためのプロセス『事態認定』のしくみがヤバすぎる」『週刊現代』2023年9月9日・16日合併号、https://gendai.media/articles/-/116037?page=2。
[18] https://x.com/tsujimotokiyomi/status/1999350619350663279。
[19] 「人民解放軍を誰よりも知る日本人研究者が語る『台湾有事、中国側はこんな超短期決戦をしかけてくる』」『週刊現代ウエブサイト』2023年9月6日、https://gendai.media/articles/-/115728、注7前掲、2ページ(「『真珠湾』の再来」)。
[20] エリカ・チェノウェス 著、小林綾子訳『市民的抵抗:非暴力が社会を変える』白水社、2022年。
[21] 「台湾地位未定論の持つ意味」『平山朝治のブログ』2025年12月16日初出、https://ameblo.jp/vyc13162/entry-12950249373.html。
[22] https://ja.wikipedia.org/wiki/上海コミュニケ。
[23] 「米国、半世紀ぶり『台湾地位未定論』提起の衝撃 台湾有事『軍事介入』への環境整備か」『産経新聞ウエブサイト』2025年10月2日、https://www.sankei.com/article/20251002-F66DP46XDRMKZF47XC7QZGOTEU/。
[24] https://edition.cnn.com/2025/07/08/politics/video/trump-fundraiser-threats-moscow-beijing-src-digvid .
[25] 「中国3隻目の空母「福建」が就役 習近平氏が最新鋭のステルス戦闘機を発射日」『ANNnewsCH』2025年11月7日、https://www.youtube.com/watch?v=WJQPsCfX1KM。
[26] 「高市戦艦発言は北京を爆撃から救った!」『平山朝治のブログ』2025年11月24日初出、https://ameblo.jp/vyc13162/entry-12947837105.html。
[27] 本稿2、3節。
[28] 「アメリカ政府が『台湾地位未定論』を表明。『未定論』はアメリカの一貫した立場だが、今表明したのは中国の主張に対抗するため 」『週刊東洋経済ウエブサイト』2025年9月25日、https://toyokeizai.net/articles/-/907115。
[29] 注19と同じ。
[30] 「米中首脳会談と台湾問題解決への見通し:武器売却をめぐって」『平山朝治のブログ』2026年5月16日初出、https://ameblo.jp/vyc13162/entry-12966377119.html。
[31] 「米中首脳会談が終了、台湾問題で習近平氏『適切に処理されなければ両国は衝突』とトランプ氏けん制」『読売新聞オンライン』2026/05/14 13:58、https://www.yomiuri.co.jp/world/20260514-GYT1T00218/。
[32] 「台湾への新たな武器売却、トランプ氏の訪中後に承認か=関係筋」『Reuters』2026年3月13日午後 2:35 GMT+9 2026年3月13日更新、https://jp.reuters.com/world/taiwan/RK3EUA55GVIHFATC2JTXMM6XIE-2026-03-13/。
[33] 松田康博『中国と台湾 危機と均衡の政治学』慶應義塾大学出版会、2025年、Kindle版、232-3/466。
[34] 同、461/644。
[35] この点については「中国は台湾併合を諦めた」『平山朝治のブログ』2026年5月1日初出、https://ameblo.jp/vyc13162/entry-12964735660.htmlで検討した。
[36] 「台湾への武器売却進展促す 米上院議員、2兆円規模」『NEWSjp』2026/05/12、https://news.jp/i/1426716127179670160?c=39550187727945729。
[37] 「野党支配の台湾議会、特別防衛予算可決 規模3分の2に縮小」『Reuters』2026年5月8日午後 6:07 GMT+9 2026年5月8日更新、https://jp.reuters.com/world/taiwan/O66CSMYBXRMJJA7KK6XEQS4MEQ-2026-05-08/。「予算規模は政府案で予算規模は7800億台湾ドル(248億6000万ドル)で頼清徳政権が要求した1兆2500億台湾ドル(398億1000万ドル)の約3分の2であり、140億ドルと前年12月に米政府が承認していた111億ドル(「米国と台湾、過去最大規模の武器売却を発表 HIMARS・榴弾砲・自爆ドローンなど」『CNN.co.jp』2025.12.18 Thu posted at 15:09 JST、https://www.cnn.co.jp/world/35241830.html )の武器購入にほぼ見合う額になっている。縮減理由は「政権の予算案は内容が不明確で汚職を招きかねない」ためとされた。つまり、政府原案は251億ドルの武器を購入するには過大であり、汚職の温床になると野党は批判して減額したのである。減額にもかかわらず次のように評価されている。「8000億台湾ドルに迫る巨額予算の可決は、一般有権者を納得させるに十分な数字だ。国民党が武器購入を阻止して中国に呼応し台湾の国防安全を弱めようとしているわけではないことを示せたからだ。」(「【舞台裏】武器購入予算が引き裂いた国民党 「反鄭麗文連合」形成で党内亀裂が深刻化」『風傳媒 日本語版』2026-05-12 12:33、https://japan.storm.mg/articles/1130495 )
[38] 『中華人民共和国とアメリカ合衆国の共同コミュニケ(仮訳)(米国の対台湾武器売却問題について)』https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/bluebook/1983/s58-shiryou-508.htm。
[39] 「トランプ氏、習氏と台湾への武器売却協議へ-米の従来方針損なう恐れ」『Bloomberg』2026年5月12日 at 4:40 JST、更新日時:2026年5月12日 at 9:26 JST、https://www.bloomberg.com/jp/news/articles/2026-05-11/TEVW4NT96OSG00#gsc.tab=0。
[40]「米国はこれまで、1982年にレーガン大統領(当時)が台湾に示したいわゆる『6つの保証』の一環として、台湾への武器売却について中国側と事前協議を行わないとしてきた。トランプ氏が武器供与を巡り習氏と直接交渉するような動きは、こうした外交慣行を損なうことになる。トランプ氏は以前にも、事前協議の可能性に言及している。」(同)
[41] “H.Con.Res.88 - Reaffirming the Taiwan Relations Act and the Six Assurances as cornerstones of United States-Taiwan relations.” https://www.congress.gov/bill/114th-congress/house-concurrent-resolution/88/text/eh .
[42] 「習近平氏『イランに軍装備品を供与しない』、トランプ氏が明かす中国外務省は『新たな合意に達した』」『読売新聞オンライン』2026/05/15 13:02、https://www.yomiuri.co.jp/world/20260515-GYT1T00166/?ref=yahoo。

