♪ ビュ~ンと飛んでく テ~ツジン28号~♪

..1963年、即ちちょうど60年前に放映開始された鉄人だが、時の流れと共に私の脳内では単純化された記憶になっていて、今更余り興味を感じてなかった。

だが、フトした事で漫画本を読んだら当時のワクワクストーリーに引き込まれ、24話を再読破してしまった。

当時、子供心で 敵役のコトは面倒くさい奴だなぁ.位にしか思わなかった。

でも、今また読み直すと、悪役もいろいろあって一人の敵を片しても次の敵に何かしら繋がっていたり、また敵の敵は味方ならず複数複雑にからむ連続的長編なので中々面白い。

 

例えば、主人公の正太郎君が、やたらピストルをぶっ放し殺人を屁とも思わないアメリカンな危ないギャングの”サスペンス”に襲われ殺されそうになった時、別の悪役で殺人を嫌うジャネル・ファイブの部下が正太郎を守ったりする。

そのサスペンスは警察署に収監されている時、後から捕まった人造人間”モンスター”の力を借りて、そのモンスターの生みの親、フランケン博士のところに脱走したのち、バッカスが造られた..等々。

そう、旧 日本軍の鉄人製作プロジェクト陣の生残りで、主人公にとって心強い味方であり指導者の筆頭が敷島博士なら、敵役の代表格はやはり、そのフランケン博士だろう。

(その名、Dr.Frankensteinを 不乱拳酒多飲 博士としたの、やはり横山流ウィットか、そして愛飲家諸兄姉ご存じの通り バッカスとは”酒の神様”を意味している。)

そして、曖昧ながらも子供心には、”面倒な敵”のイメージしかなかったフランケン博士だが、読み直してみると、今では味わい深さやシンパシーさえ感じてしまう。

犯罪者の遺体から作られたモンスターは、最初のうちは何度も脱走したり博士の言う事をきかず、遂には心臓をやられてしまう。

一方、サスペンスは博士が作った強靭なロボット、バッカスを得て警察相手に大暴れ。

しかしフランケン博士が(サスペンスによって埋葬された十字架の下の)肢体を掘り起こし人工心臓で再生させサスペンスに復讐したり、ギャグも交えながら一緒に逃亡したり、さらにはバッカスのリモコンを奪い返そうとした博士が窮地に陥った時にモンスターが博士を助けたり..そんなストーリーは、ワクワクどころか涙モノでさえある。

鉄人同様にバッカスはロケットの推進力で自由に空を飛ぶが、その背中にあるロケットは後付けの鉄人のもの*1と違い、ボディと一体となたスムースな流線形のニュータイプ。

憎たらしい事に、バッカスは空中で闘いの最中に鉄人のロケットをもぎ取り、鉄人は墜落してしまう。

さらには 鉄人の青黒いダークカラー、マニッシュなデザイン、ドラム缶?のような胴体・手足に比べ、バッカスには足首のクビレ、ふくらはぎのカーブまでもあり、妙に明るいボディカラーと相まっていやらしさを感じさせた2

 

鉄人は生命体でないので死ぬ事はない。とはいっても、手足がモゲるなど何度か壊されそうになる度にヒヤヒヤしたもので、ライバルのロボットは中々手強い。

また鉄人28号は、リモコンの存在ゆえ ゴジラのような無茶苦茶な破壊的傍若無人ぶりはなく、機械ゆえの修理はできるが無敵ではない。

より大きなロボットやパワフルなロボットも登場するが、正太郎君の知恵、策略と操作テクニック、警察や自衛隊との共同作戦、大塚署長の協力と敷島博士のアドバイスでようやくライバルに打ち勝つ事ができるのだ。*3

 

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*1 鉄人は最初の頃、空を飛べなかった。背中に背負っているロケットは、一度PX団に盗まれたときに彼らが改良し取付けられたものを元に、敷島博士が作ったリプロ。

*2 ”バッカス”は鉄人にとって最初の強敵と言えるだろう。バッカス以前に登場したライバルは鉄人に大したダメージを与えることはなかったからだ。

バッカスのボディは鉄人の鈍く渋い”青味掛ったクロガネ”と違い、プラチナゴールドのような色味で流線形で、スムースに隆起したバックウェスト末端からロケット推進力を得るデザイン。

なお、モンスターは博士の見ている中で、警察の集中砲火を心臓を受け絶命する。

その直後、 今度はフランケン博士は自らが作ったバッカスに襲われる。

異変に気付いた正太郎と大塚署長は狂ったバッカスを鉄人で止めようとしたが間に合わず、博士は絶命してしまう。

*3 正太郎君は1950年生まれ(漫画本と放映アニメだけでなく、設定の違うストーリーがいくつかあるが)、小学校高学年から中学生位の年頃のハズだが、何しろ自動車は運転するわ、拳銃の名手で、ジェット機も難なく操縦、敵に殴り倒されても直ぐに回復し、推理力も行動力も大人以上。

TVでは65年(66年再放送、1980年の第二作は別)までだったが、  66年まで約11年間続いた漫画の中では、正太郎君も途中ルーズソックスからハイソックスに履き替え(62年頃)成長と共に顔つきも若干変わっていった。

博士によって墓場からリバイブしたモンスターは、原作同様儚い生涯を終える。

また、フランケン博士の死後、バッカスも鉄人によって破壊される。