酒場訪問忘備記..
その1 < 御 代 家 >
早や師走、一年前の今頃も慌しかったが、つげ作品原作の映画観たのも同じ頃。
ノド元過ぎれば忘れ..じゃないが、去年も今年も猛暑を忘れ寒さを覚えると巣鴨のアパレル店に行く気になる。
巣鴨と言えば、とげぬき地蔵尊髙岩寺も、勿論 素通りし難い。
かって馬木健一氏が境内で耳かきの店を出してたと人伝に聞いたこともある。
彼は、白金レースウェイで開催された70年代スロットカー最後のオール関東の覇者。
大会レースでは事前準備や練習をキッチリやられ、私なぞ歯が立たなかった。
とげぬき地蔵尊は曹洞宗、禅宗の一派ゆえ家の宗派は近いのかも知れないが、彼とは当時そんな話をすることもなく若くに亡くなられた。
彼のホームコースは、駅前の ”スガモサーキット”、その営業コースのあった森川ビルはリニューアルされ未だ存続している。
当時、ビルオーナーのご子息もよくレースにでられていたが、今頃はどうされているだろうか..。
先ず一軒目は 御代家(みよけ)、郷愁感じるレトロな都電のホーム脇にある小じんまりした居酒屋。
以前から入ってみたかったトコだが、TV番組で紹介され(混むようになる危惧から)従前入らなかった事を後悔していた。
その都電は庚申塚駅、巣鴨地蔵通り徒歩圏内の約10分ゆえ帰りに寄った。
都電は、現代的な高速高効率移動の手段ではないが、昭和的情緒的タップリ。
江ノ電同様に走る線路が民家の脇だったり、人に近い踏切も改札無いホームもオープンで親しみが感じてしまう。
左はお通し、右は焼鳥、焼き加減パーフェクト。
美酒の数々、”歩く一日”は炭酸割お奨めの焼酎、天青はうす濁り
他に食したのは、気まぐれサラダやレバ刺し、勿論ビーフではないが、美味しかった。
今日では鳥や馬レバで代用したり、お役所の禁令にめげず牛レバも低温調理など..
官の建前に対しての 庶民民業の工夫は江戸の昔からのこと。
その2 < 美 乃 >
松岡正弘の”二軒目どうする”につられて行ったのは浜松町の美乃。
経費付き現役時代ならいざ知らず、都心の割烹何て久しぶり。
だが、価格もリーズナブルでホッとした。
”二軒目”の番組では角田夏実が出演、左は別の回の東雲嬢、
評判通り、刺身はとても新鮮で誰しも頼みたくなるのが分かる。
(左)白子焼き、(右)毛蟹クリームコロッケは何と660円!
コスパだけじゃない、カニミソ苦手な私でも美味しく食べられた。
その3 < たる鉄 >
東十条駅には北口すぐ傍に昔からの ”たぬき”がある。
店構えからして誘われるたぬきは、悪く言えば料理や酒に特徴ないのだが、昭和的大店ゆえキャパがある。
仕事がらみの大人数でも、また急に行くにも便利だ。
”たぬき”は駅のホームから看板が見える。駅を出て道路脇階段の下に店はある。
階段横には気の利いたポスター..右端はメニュー、生姜天はB級グルメ乍らイケる。
一方 ”たる鉄”はその北口から数十歩の小じんまりした渋い店。
先に、低温調理について記したが、モツ料理なら最右翼かも知れない。
こちらもTV番組に出たと思うが、コース料理は5品で1500円!
唯、ひとり2ドリンクがマスト、店主は営業ポリシーをハッキリ説明してくれる。
メニューにはもつ鍋などもあるが 普通は1500円のコース料理で、との由。
牛タンやレバー、塩もつ煮などに加え、
焼きも味わって、〆は”もつバーグ” 半熟目玉焼きのせ。
メニューの見開きに「食の安全に配慮し...65℃30分または75℃1分の加熱調理」をしている旨の案内があった。
< 低温殺菌牛乳 >
そういえば 自分の職歴でTetraPak時代(未だHACCPのない頃)だったが、
例えば牛乳の処理で同様の記憶がある。
一般的には HTST(HighTemp.ShortTime=高温短時間) で殺菌するのだが、LTLT(LowTempLongTime=低温長時間殺菌)で製造される製品もあった。
↑ 大昔、友人と長閑な房総半島ツーリング、千葉の♀が乳しぼり..なんて死語かな。
大きな雌牛の乳房は逞しくフレッシュミルクは美味い!
搾りたての牛乳は僅かな雑菌でも劣化が速いので、流通に殺菌滅菌は必須なのだ。
そして 65℃で30分も掛けるより、120~130℃で2、3秒の方が生産性が高いのは言うまでもないが、高温処理はたんぱく質等成分の変質は避けられない。
消費期限に賞味期限と品質保持期限.. 当時は厚生省と農林省の鞘当て等といわれたものだが、その言葉通り長期保存品は食して大丈夫でも味は落ちる。
完全滅菌後にパッキングされれば理論的にはいつまでも大丈夫となるのだが、高温にさらされたものはモノが違ってしまうのだ。
当時 一緒にスウェーデンまで出張したG氏が、LTLTを広めるべきで自分の子供には生産合理性優先のHTSTなんか飲ませたくないからだと言上し、暫らく後に退職された事を思い出した。
かく云う自分も早期退職で会社側に忠誠心薄いヤツと思われただろうが、食の安全には常にコスパがつきまとう。
所詮は建前と本音、SDGsなどと云っても、今更 鍋もって豆腐を買い出しにいく人間などありえない世の中だ。
牛レバ刺しも禁じられて久しいが、正に 悪貨は良貨を駆逐するのが経済原理。
行政が管理できないところで粗悪品が流通するなら禁ずるしかない、と同時に良心的な供給者までもが”法的平等に”拘束されてしまう世の中を嘆いても始まらない。
話は逸れてしまったが、”たる鉄”は、もしかしたら良い印象を持たれない客層もあるかも知れない。
しかし、自ら納得できる調理と行政がらみの食の安全鬩ぎ合いの中、店の大将の姿勢は理解できる。
それこそ1軒目であまり食さずハシゴしたい時の2軒目にも、この廉価なコース料理は丁度いい。
これから酒を2杯以上呑める方で、奥深いモツ料理を一度は食してみたいと思っているのなら、是非お勧めしたい店であることには違いない。












