たくさん

逝ってしまった

そのあとを

自分が耐え忍んで

生きていくしかなかった

しかも自然な死ではなく

特有のものだった

 

そんな悲しみを

どう越えたのかと

ある時聞かれた

 

私は

実際の死よりも

恋人との生き別れのほうが

辛く感じた

 

死は

自分の内にその人の存在を

永遠に取り込める

死によって

その人はずっと

若き日のあのままで

私の内に

ずっと生きていてくれる

 

死は

私の心と

身体と

過去へさかのぼる脳内と

同化する

 

過去に意識を合わせれば

いつでも

彼らとアクセスできる

 

取り込んでいく作法に対して

恋人との別れは

如何にその人を

忘れていくか

排除していく作業

 

相手がまだ

生きているから

思考が闘わなければならない

あの人どうしているかな

って

穏やかに思うのは

今の自分が満たされていないから

あの頃は良かったのに

っていつもなる

 

死に別れた人との思い出は

喜びとして内在し

生き別れた人との思い出は

今も劇場型のストーリーなので

感情が揺さぶられる

 

死が内にしみ込んで

自分と一体化するまでは

それなりに時間がかかるのも

嘘じゃない

 

当たり前だけど

 

生きていてくれたなら

ただ

私のそばで

生きていてくれたなら

そんな幸せなことはないよ

 

たくさんの傷みを抱えた人は

動じない強さがある

自分の死への恐怖さえ

あの人に会える

想いの強さに変えてゆくから