賛否両論になることはだれの目にも明らかだった、昨日のポーランド戦ですが、あの戦法が良かったのか悪かったのかについては、各「観点」によって異なるため、統一した見解はないと思います。
ここでは、その各観点での見解について、考えてみたいと思います。
1. (日本の)経済効果の観点: 〇
とにもかくにも日本が決勝トーナメントに残ったことで、国民のワールドカップに対するアテンションは引き続き非常に高いまま維持されると思われ、経済効果も十分に維持されると思われます。
中には、「あんな試合をするならもう見ない」といったことを言う人もいるとは思いますが、それは一時の感情によるところが大きいと思われ、そういう人もまずほとんどは決勝の日本戦を見ると思われます。
2. (日本の)ワールドカップのTVの視聴率の観点:〇
上記とかぶりますが、視聴率は落ちないと思います。
どちらかと言えば、初戦で負けていたならば、ああ4年前の二の舞か、という形で2戦目3戦目を見る気がうせてしまう人が出て視聴率に影響を与えた可能性があったと思いますが、今回のことで決勝に進出した日本の次の戦いを見なくなる人は極めて限定的だと推測します。
3. 国民に希望を与えるという観点:△
これは、一意の解はないと思います。国民、というか人間には様々な考え方を持った人がいるので、それは当然だと思います。
「サムライジャパンという看板を背負うなら、男らしく攻め続けろ!攻め続けた結果としてイエローをもう一枚もらって敗退したとしても、その前を向いて戦う姿勢に拍手を送るぞ!」というタイプのヤマトダマシイ的な考え方を根本に持つ人にとっては、× でしょうし、
「目標とする結果を達成するための戦略を的確に実行することこそ、成功への道であり、あれこそがまさに物事を達成するための方法の一部を示した素晴らしい手本である」というビジネスストラテジー的な考え方を持つ人にとっては〇だと思います。
「ヤマトダマシイ派」と「ビジネスストラテジー派」の比率が、日本の中でどうなのかはもちろん計測できませんが、主観的に見ると、おそらく昔はヤマトダマシイ派が多く、そして年々ビジネスストラテジー派が増えている傾向なのではないかと思います。
もっとも、現実には、どちらの気持ちも持ちつつ、時によってどちらかの気持ちが大きくなるという複合型の人が多いのではないかと思います。
4. (決勝トーナメントに進むことが至上命題としたうえで)西野監督の戦略が本当に最も確率が高い方法だったかの観点:
実はこれが難しいところだと思いますが、あの戦法が見た目にいい悪いはひとまず置いておいて、本当にあの方法が最も確率の高い、決勝トーナメントへ進む方法だったのかを考えてみたいのですが、
あの時点で比較しなければならなかった事象は以下の4つになると思います。
A: 日本が攻撃を続けて同点になり、かつ失点しない確率
B: 日本が攻撃を続けても得点できず、そしてイエローをもらってしまうかカウンターで2点目を失う確率
C: 日本が時間つぶしに徹して、かつコロンビアが勝利する確率
D: 日本が時間つぶしに徹して、そしてセネガルが同点ゴールを決める確率
・・実際にはもっと細分化できますが、とりあえずこの4つの事象に絞った場合、日本が決勝進出できるのはAかCだったわけですが、
Aの確率:Bの確率
と
Cの確率:Dの確率
を比較してどちらの方が左の確率(=決勝進出できる確率)が高いのかを考えると、
実は最も算出が難しい確率は「セネガルが同点ゴールを決める確率」つまり上記のDの確率だったと思われます。
西野監督自身がまさかコロンビアvsセネガル戦をあの場でモニターで見て、セネガルの状態などを判断して上記の確率を算出することは当然できませんから(目の前の日本の試合から片時も目を離すわけにはいきませんから)、おそらくスタッフの誰かがモニターでセネガル戦を見て、同点にもっていく確率がどのくらいあるのか計算し、その数字を上記の比較に当てはめたところ、Cの方が確率が高かったと判断したのでしょう。
もしも、その計算精度が十分に高いのであれば、この観点は〇かと思います。
5. 決勝トーナメントへの弾みがついたかどうかという観点:×
ここは勝負事の原則論から言えば、弾みがついたとは言いにくいと思います。
いわゆる「次につながる負け方」とは、前を向いている状態、次への期待が高まる状態での惜敗だと思いますが、そういう状態とは言いにくいかと思います。
ただし、言うまでもなく、弾みがついていたところで決勝トーナメントに進出しなければ何の意味もありませんので、まずは進むことに専念するという考え方は間違っていなかったように思います。
6. 試合をライブで観戦していた人の満足度という観点: ×
これはさすがにどうひいき目に見ても、×でしょうね。
戦略とか、確率とか、そういうことはとりあえず置いておいて、単純に、あれを眠い目をこすりながら見るのは、「つまらない」と言わざるを得ないかと思います。
7. 海外の、日本のチームに興味を示し始めてくれたオーディエンスへの印象という観点:△
これも2つに分かれているようです。
「ワールドカップらしくない試合」と書き立てる海外のメディアもあれば、「戦い方の幅が広がった、成長した日本チーム」と評価するメディアもあるようで、これも上記3.と同じで、割れて当然だと思います。
・・この議論を完全に収束させ、ほぼすべての人達に「あの戦略は正しかった」と言わせるには、決勝トーナメントで勝利することだと思います。
初戦をもしも勝利することができたなら、今回のポーランド戦での戦略を批判した人たちも認めざるを得なくなるはずです。
しかし。
ベルギーの試合をかいつまんで見てみましたが、基本的に極めてレベルの高いチームだと思います。
あのイングランドに、いわゆる2軍の布陣で勝ってしまうなど、確かに優勝候補の一角だと思います。
そのベルギーに勝つイメージが、自分の中では湧いていません。すみません。
それでも、やはり、あの2010年のパラグアイ戦(延長の末、PKで敗退)、2002年のトルコ戦(0:1で敗退)・・いずれも惜敗でしたが、いまだに一度も勝てていない決勝トーナメントでの一勝に、期待する気持ちを押さえられないのは、自分だけではないと思います。