デイル・キャンベル氏という、イギリスのギタリストのミニライブを見たのですが、彼の演奏はあらゆる面で常識を覆すものでした。
彼はアコースティックギター一本で、他のプレイヤーも他の楽器もボーカルないところで、まるで複数の楽器を使っているような演奏をするのです。

その秘密は、まず第一に彼は左手だけで通常のギターの音を出しています。弦を指でフレッドにたたきつけるようにすると、右手ではじかなくても音は出るのですが、これは通常エレキギターのテクニックです。アコースティックギターでこの奏法をしているプレイヤーは初めて見ました。
これをアコースティックギターで実現するには、相当正確かつ力の入ったタッピングを連続して行わなければならず、かなり難しいと思われます。
第二に、空いた右手でギターのボディーをノックして音を出しています。叩き方や叩く場所を変えることで違う音を出しているのですが、これでドラムのバスのような効果を出しています。
第三に、彼はなんと一曲ごとにチューニングを変えています。
最初は相当音に神経質な、職人的な意味で毎回チューニングを合わせているのだと思っていましたが、どうやらそうではないようです。
彼はハーモニックス(弦を共振させて音を出すテクニック)を多用するのですが、ハーモニックスで出せる音は各弦ごとに決まっているため、おそらく曲によってハーモニックスで出す音を変えるためにわざとチューニングをずらしているのだと思います。
第四に、時々右手もまるでもう一本の左手のように、弦を押さえて音を出すために使用するのですが、これを両手で行うことにより、まるでギターを2本使っているような一人アンサンブルを実現しています。
ただ、上記のようなテクニックは「見せるためのテクニック」ではなく、あくまで美しい楽曲を演奏するための手段として、必要として使用されており、その素晴らしい演奏は、聞いている人の深層心理を直接刺激します。
まるで天空の世界で、神様が歩いている音が響いているような演奏でした。
なお、このミニライブの情報を教えてくれて、「楽しんできなよ」と言って送り出してくれたのはカミさんでした。彼女の存在および協力なくして、このような体験をすることはなかったと思います。有難いことです。