※この回より注釈が入ります
卯月朔日御山に詣拝す。往昔(⒈)この御山を二荒山と書きしを、空海大師開基の時、日光と改め給ふ。
千歳未来を悟り給ふにや、今(⒉)この御光一天に輝きて、(⒊)恩沢八光にあふれ、(⒋)四民安堵の栖おだやかなり。
なほはばかり多くて筆をさしおきぬ。
あらたふと青葉若葉の日の光
注釈
(⒈)初め沙門勝道この山を開いて神宮寺を創建。空海はその求め
によって碑文を書いて与えた。
山の名は勝道によって「補陀落山」名づけられ、後「二荒
山」平安朝末から「日光山」と書くようになった。
(⒉)日光東照宮の御威光
(⒊)八方の果て。天下
(⒋)士農工商。人民
新校 奥の細道
昭和三十二年三月二十日 第一層刷発行
昭和四十三年四月十日 第十七刷発行
発行所 ㍿白揚社