童話 白い子ぎつねと柿の木のある家  | まいどーおおきに 河内の樹々の独り言

街はずれの小高い山の上に建つ一軒の古いかやぶきの家に、じいさまは一人で住んでいました。

庭には柿の木が一本立っていました。

 

月の明るい夜はそれはにぎやかで、山の中の狸がみんな集まってきて一晩中歌って踊ります。

そのなかに一匹の白い子ぎつねがまじっていて、一晩中、狸も白い子ぎつねとじいさまもみんな

いっしょに歌って踊つていました。

 

コンビニが出来て、昔からあるお菓子屋さん、本屋さんもみんなこの町から出ていいきました。

お肉屋さん、八百屋さん、お豆腐屋さんにみんな毎日お世話になるので、お店に「さん」をつけ

るんだと、あの世へ行ったばあさまが言っていました。

 

お店屋さんは、昔から売れ残ったものを、夜になると、そっと裏の畑に集めておいてくれました。

狸や山にすむ動物達はみんな、仲よくわけて食べていました。

 

コンビニが出来てからは便利にはなりましが、昔からあったお店は、どんどん無くなってしまいました。

この街の人達はおたがいに「ありがとう」と言う言葉を忘れてしまいました。

 

コンビニのまわりでは、若者達が地べたずわりをして、タバコの吸いがらや、インスタントラーメン

のたべかすを捨てては夜ふけまで騒いでいました。

毎晩毎晩、まるで誘蛾灯にあつまる蛾のような様子でした。

 

昼間の街はお店がなくなりとても静かですが、不便な街になってしまいました。

夜更けになるとまた、若者達が夜明けまで騒いで、住んでいる人たちもあきれて町を出ていってしまいました。

 

ある夜、白い子ぎつねは勇気をだして山からぬけだしてコンビニに向かいました。

町の近くまで来てみると、真夜中なのにコンビニのまわりだけ、真昼のように明るかったのです。

店の外では若者達が集まって騒いでいました。

子ぎつねはそっと人間の子供に化けて店のなかに入ってみると、売れているのはタバコとインスタント食品ばかりです。

 

しばらくすると若者達はくわえタバコで本を立ち読みしだしました。

店の人はだれも注意をしません。

 

子ぎつねは何だかこわくなり、さわいでいる若者達のあいだを急いでかけぬけて山の方に向かって走りました。

 

山の途中で、コンビニの方をふりかえると、若者達の吸うタバコのけむりが輪のようになって、まるでコンビニをしばっているように見えました。

 

そのとき、子ぎつねは人間の子供の姿から元の姿に戻っていました。

朝になって子ぎつねは何か変な感じがしたので、じいさまのところに行きました。

じいさまは子ぎつねを見ると、鼻をクンクンとならして匂いを嗅ぎました。

子ぎつねは自分のからだをよーく見ると、真っ白い毛が黄色くなっていました。

若者達が吸っていたタバコの煙のせいです。

 

子ぎつねは一番自慢の真っ白いからだの毛が黄色くなったのをたいへん悲しみました。

そうして悲しんでいると、じいさまが桶に水をくんで来て、黄色くなったからだをていねいに洗ってくれました。

森の仲間の狸たちは洗い終わったからだの子ぎつねをまんなかにして、よいしょ、よいしょとおしくらまんじゅうをしてからだを乾かしてくれました。

 

子ぎつねはじいさまやみんなにお礼を言って庭の柿の木にのぼって街を見渡しました。

 

きのうの夜に行ったコンビニが見え、もう周りには若者達もだれもいなくなって、コンビニの店員も疲れたのかシヤッターを半分おろし、うとうと居眠りをしているのがみえました。

 

そのうちコンビニも引っ越して街はだれもいなくなりました。

    

そして、もとのしずかな村になり、狸と白い子ぎつねとじいさまのみーんなで歌い踊る、静かな静かな、おとずれる人もない古いあばら家だけになりました。

 

夕日を浴びた柿の木は、赤い実をいっぱいつけて輝いていました。

 

 完