いとはんのご乱行 その四 黒づくめの男達 | まいどーおおきに 河内の樹々の独り言

亜希は初めての経験だが、いろんなことを友達から聞いている。学校の授業《保健のお話し》でも知識は得ている。
しかし狡猾な男に対してどのように接して良いのかが判らない。

肉屋のご主人は鬼の首を取ったかのように喜んでいる。
今にもよだれをこぼしそうな形相である。

車内の二人はだんだんと言葉が少なくなり、じっとフロントガラスを見つめるのだった。

その時車のサイドミラーに人影が写るのが見えた、ご主人は気づいてはいないようだ。
亜希はこのままでは面白くないので、少し車の中の張り詰めた緊張感を和らげようと思い、そっと車の窓を開けた。

そして大きな声で「くっさー」と叫んだ。

肉屋のご主人は顔をしかめドアを勢いよく開けて外に飛び出した。
外に潜んでいた男と鉢合わせ。
この騒ぎを聞き止まっていた車から出てきた数人の男性と、車の陰に隠れていた黒いシャツ、黒ズボンの男達、まさに一触即発の現場になった。

大事にはならずに、すぐに騒ぎは収まった。のぞき軍団は消えてまた車が揺れ始めた。

亜希は自分のやったことなどどこ吹く風、すまし顔で、肉屋のご主人に家の近くまで送ってもらいその晩は別れた。