GREGG ALEXANDER(グレッグ・アレクサンダー)(1) | VOZlog(ボズログ)

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VOZ Records(ボズレコード)の主宰者堀克巳がふと思ったことなど。

「音楽が好きな人、手をあげて!」と訊ねたら、世の中の多くの人は手をあげるだろうけど、その”好きさ加減”には見えない一線があって、それ以上ディープな音楽好きになると話は変わる。完全にマイノリティー(少数派)になるのだ。しかも、音楽を生業にしているとなると、世間の人は違う生物を見るような目線に変わり、作り笑いを浮かべながら距離をとり始める、、。長年の僕の偽りのない実感だ。

 で、そんなマイノリティーならではの楽しみ、幸福感を見事に描ききっているのが映画「はじまりのうた」だ。ジョン・カーニー監督の前作「Once ダブリンの街角で」も淡々としながらも劇中で歌われている曲がよくて妙に心に残ったのだが、今作もまた一段とよかった。主人公が”やさぐれている”中年の音楽プロデューサーだというのも、また格別胸に訴えるものがあって、かつての輝きを失いかけている音楽業界で日々萎えていく気持ちに悩まされている僕のようなおっさんを力づける、「点滴」(?)のような作品だった。

 そして、何気にクレジットを見たら、音楽を担当していたのがGREGG ALEXANDER。う~ん、と僕は唸ってしまった。

 グレッグ・アレクサンダー。

 1989年にA&M(当時日本ではポニーキャニオン)から「ミシガン・レイン」というアルバムでデビュー。その年にソニーミュージックに入った僕は、ポニーキャニオンに入社した友人からこのCDをもらっている。曲の雰囲気はすごく好きだけど、これっていう曲はないなあ、というのが率直な感想だった。

曲はこんな感じでした。



 そして、しばらく、リリースがなかったが、
1992年、今度はソニー(レーベルはepic)からセカンド・アルバム(正確には1stとセカンドは曲が相当だぶっているので仕切り直しデビュー盤ともいえる)を出すのだが、このとき僕はソニーの洋楽の宣伝担当をやっていて、音源を聴いて<岡村靖幸と松岡英明をミックスして(往年のEPICソニー!)ロックにした感じだなあ>、と興味を持った。実は3年前にA&Mのアルバムを聴いていたことをすっかり忘れていたのだが(だって、ポニーキャニオンは「グレッグ・アレキサンダー」でソニーは「グレッグ・アレグザンダー」と表記していたし、、)
 で、当時の発売担当者がアルバムタイトル「Intoxifonication」(「酔い」「興奮」を意味する単語と「姦淫」を意味する単語をミックスした造語)が、日本人には難しいから邦題つけた方がいいかもという話になって、
 半分冗談で僕が 
「『若気の至り』っていうのはどうですかね?」って言うと
「いいね~。」と意外に軽くノってくれて
日本では『intoxifonication~若気の至り』というタイトルでリリースされた。

 で、結局これが僕が生まれてはじめてつけた邦題ということで、彼のセカンドアルバムは僕の心にしっかり刻まれた(?)作品になったのだ。そう、ディープな音楽マニア、マイノリティーにはこんなことでも、歴史的な出来事になる。

今思うと、アルバムタイトルで「若気の至り」って、、、と思わなくもくもないけど、当のグレッグさんももしかしたら今では 
”「intoxifonication」なんて造語を作ったりして、ホントに若気の至りだったなあ” などと苦笑いしているかもしれない。

ちなみに『intoxifonication~若気の至り』には入っていたのはこんな感じの曲でした。





<続く>