の続き
最後の再来
加藤から地下の喫茶店に呼び出されたあの日から、約一年が経っていた。
百貨店の仕事は順調。
クリスマスにバレンタインや春の準備をし始め、バレンタインにサマーイベントを企画し、春には枯れた紅葉をイメージし、真夏にクリスマス正月の想像を膨らます。
そんな環境とは真逆な、前倒しする想像力が出来ないとこの仕事は出来なかった。
常に新しいトレンドの先を見据えて、人を楽しませる。究極の夢想家、コレが生き甲斐だった。
そして年間、イベント・宣伝広告費で何億を動かす男。正に面白い人生の真っ只中。
ある日の昼休憩終わり、あの日の様にまた女子社員が私を呼びに来た。
「あの…浅井さん。お客様がフロアでお呼びです…」
「何か前に似た様な事があった様な…またか?」
そして紳士服売り場に行くと案の定、極道な風貌の男が立っていた。
「浅井の兄貴。お久しぶりです。突然のお呼び出し、誠に失礼いたしました。」
「いやいや。もう来るなって言ったじゃない。」
この顔、なぜか覚えてる。あの日の喫茶店で、少し後ろの方に立っていた男だ。その時はまだ下っ端の様な、派手な柄シャツを着ていたが。今はキリッとした顔で、パシッとスーツを着ている。
色々とこの人らもこの一年あったんだろうなと感じさせた。
「で…何?」
「浅井の兄貴に、是非また下の喫茶店まで来て頂きたく。」
「え?また…もう行かないって言ったじゃない。」
無言で深々と会釈された。
おそらく何かあったのだろうと察した。
「分かった分かった。ちょっとしたら一人で向かうわ」
「分かりました、お待ちしてます。」
そうしてまた、あの喫茶店に向かう事になったのだ。これが彼らの最後の再来となる。


