小説ブログ『破天荒ファミリー』

小説ブログ『破天荒ファミリー』

この物語はある家族の思い出をデフォルメして創造した【破天荒な作り話】です!いやいや実話を誇張したフィクションですって!




存在しない?


父ちゃんの話は露天風呂で盛り上がり、気付けば周りの知らないおっさんも食い入る様に聴いていた。


ヤスが言う

「おじさん、それで?!なんだったのその車は?」

「おう。それがよぉ〜」

父ちゃんはニヤッと笑いながら話を続けた



手を振って来た人、どっかで見た事ある人だな〜と思ったら、誰だと思う?

【田中角栄】だったんだわ〜!!


田中角栄を見間違う訳ないわ!

アレはどっからどう見ても田中角栄だった。


皆んなで

「スゲ〜がや!田中角栄が手を振ってくれたがね〜」と興奮してる時、過ぎ去る黒塗りの車を後ろからカメラでパシャっと撮ってたんだわな。


それから無事、何か憑きもんが取れたかの様にスゥ〜っと名古屋に帰れたんだわな。

何をそんな迷っとったんだろ?って。


だけど不思議なのは、こっからなんだわ。


あの日、田中角栄はどこに行ってたのか?を知りたくて新聞を見るも何の記事も載っとらんし、情報が無いんだわ。

それで電話で確か聞いたんだわ。


そしたらその日、田中角栄は開田高原や長野方面には行ってないって言うんだわ。「え〜?!」ってなって、聞いたら違う県で講演か何か用事があったみたいだから、実際にそこに居る事自体が無理なんだわな。


でも仮にあの田中角栄がそっくりさんだとしたら、白バイもいたりで本格的過ぎておかしいだろ?映画の撮影だったとか?

色々考えて、アレは何だったんだ?と話してたら


「皆んな〜!皆んな!大変だわ…」とカメラの奴が来たわ。

「どうしたんだ?そんな慌てて」と聞いたら


「あの時、俺フィルム入れたよな?皆んなの前で?フィルムをさ?カメラにさ?」

「あ〜最初のサービスエリアの写真撮る前にだろ?入れてた入れてた。」

「そうそう…そうだろ?」


そしてカメラの裏蓋をカシャっと開けて見せて来たんだわ。

「無いんだわ。フィルムが?」と。

皆んなで無言でカメラを眺めたわ。


その瞬間。頭によぎったんだわな。

これは化かされたな…


記念写真を撮ったあの瞬間から始まっとったの。

【存在しない高原】へ俺たち招いて行う、これは騙し合い大会だったんだわ〜!!



そうして父ちゃんがニヤッと話す、不思議な体験の話は終わった。



露天風呂にいたおっさん達も満足そうに笑みを浮かべながら、洗い場に戻って行った。


「おじさん!それマジで?ヤバくない?!」

「おう!だでアンタらも大学になったら、皆んなで開田高原行ってみると良いわ!不思議な事が起こるで!」



父ちゃんが亡くなった今や、この話が本当だったか?嘘だったか?は、正直分からないが


ただ不思議なのは、この話をこのブログに書いている最中。部屋の電気が3回消え。父ちゃんの飲んでいた酒ボトルが俺の真横で倒れたのだ。

コレはリアルに(笑)



とうとう物を倒す術を、父ちゃんが身につけたのかもしれない。映画ゴーストみたいな。


おそらくニヤッと笑って見ている事だろう。

「不思議な世界は本当にあったんだよ!」と、既にあの世を知った父ちゃんからのメッセージ。


『存在しない高原』【完】