002 短編「雨夜のヤクザ」<1話:窓越しのネオン> | 小説ブログ『破天荒ファミリー』

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この物語はある家族の思い出をデフォルメして創造した【破天荒な作り話】です!いやいや実話を誇張したフィクションですって!



 窓越しのネオン

その日は、しとしとと雨が降っていた。

 

 

窓ガラスの水玉には、ネオンの光が煌びやかに映り込み、雨の音の向こう側でパトカーのサイレンが微かに聞こえたり、誰かのラジオから山下達郎のシティーポップなベースラインが抜け出していた。

 

この空間のすべてが、まるで映画のワンシーンを演出するかの様に彩り、シンクロする。

 

(何って表現するのかな〜?こうい感覚。言葉が見つからないな。何か気持ちが良いという雰囲気は感じるが、上手くマッチする言葉が見つからない。ん〜。。こう言う感覚を、俺は形にしたいんだけどな。)

今でいう《エモい》みたいなモヤっとした感覚の言葉は、この時代にはなかった。だからよく言葉を探す事も思考遊びの一つだったのかもしれない。

 

「浅井さん!行きましょうか?」

「えっ?あ、おう。行こか。」

 

肺に入った煙草の煙を出し切り、煙草をデスクの灰皿で捻り消した。デスクの書類は一つにまとめて角に置いた。

 

8月の商戦期前のデパートは忙しい。

ショーウィンドウや建物側面の垂れ幕、店内の至る所にポスターや装飾をする。インパクトがあるデザインや企画をしていかねば生き残れない。

 

他の百貨店の“奴ら”には負けられない。視察に来た同業が「コレは…何だ…凄いな…」と、声には出さないものの目を大きくしてキョロキョロ見渡している姿を見ると、ニヤっとしてしまうのだ。

 

「俺のデザイン・企画で、全国の百貨店で右に出る者はいない!いつかはニューヨークに行く男だ!」そうやって誰もが驚くモノを、また誰もが認める斬新なアイディアをクリエイトし続けてきた。

 

今時の流行りは、原色をバンっと出したデザインで購買意欲を駆り立てさせる。それだけじゃ物足りない。そんな事は皆がやっているデザインで、流行りの先端を行かねば斬新なデザインなんか生まれない。

 

常に映画や海外雑誌で情報をキャッチし自分のスキルに取り入れてきた。「流行の先の先を読め!プラスのインパクトを!話題になるネタを!観た人間が何年先でも忘れないデザインを!」それが仕事だった。誰もがまだ観たことのない世界を観させてやる!

 

そんなアイディア会議をいつもの業者仲間達としていると、時間は直ぐに経ってしまった。「コレは出来るのか?幾らで出来る?」常に新しいモノを!感覚を!求めていた。

 

「どこいきます?いつものとこで良いすか?」

「あー。そうだな。そうしよう。」

「どうしたんすか?ボォ〜っとしちゃって!」

「いや、別に。」

「じゃあ!先ずは腹ごしらえに、錦の長崎ちゃんぽん屋行きますか?!」

 

そうやって百貨店宣伝部の事務所を後にした。まさか今夜、あんな事が起きるとは、この時は想像もしていなかった。