音 | 青葉の翳り

「さんさ踊り」 なるものを知っているだろうか。

青森のねぶた祭りや、宮城の七夕などには知名度は遠く及ばないが、東北岩手の代表的な夏の風物詩である。

ただ、地元であると却って足が向かないもので、最後に行ったのはいつの頃だったのか判然しない。


友人と二人で、夏の夜を練り歩いた。この間まで低温注意報が出ていたのが信じられないくらいの暑さで、駅から出ただけで汗が噴いてきた。祭りを見るのは止めて、早速呑もうかと思ったが、流石に思いとどまり、パレードまで行った。

すさまじい人だかりだ。踊りの熱気といいたいところだが、群衆の体温である。小生のごとき田舎者は、人ゴミを歩くのに慣れていない。友人とあっという間にはぐれかける。

盛岡の街を歩き回るのは随分久しぶりである。それだけでも結構楽しい。

浴衣姿の女性が多くて嬉しい。視力が回復しそうだ。最近はミニスカート風の丈の短い浴衣も少なくないが、二人ともこれには感心せず。じゃなくて、そんな好事家の話はどうでもよくて、さんさ踊りである。

地元の祭りにケチつけるようで気が引けるが、飛び入り参加を認めているものの、何も知らない人が踊るには、さんさ踊りは結構ややこしいように思う。それが近隣他県の祭りに比べて、さんさ踊りの知名度、人気が劣っている要因の一つになっているのは事実であろう。

飛び込みで参加し、全く節の合わない踊りであっても楽しむのが本道だろうが、そういうことに引け目を感じる人たちだっている。

実際そういう批評もあるが、小生は逆に捉えている。長い練習をし、息の合った踊りや笛、太鼓の音を広げる所にさんさの良さがあるのであって、それが伝統であろうと思う。飛び入りでみんなが楽しめる祭りがあるのなら、こういう一糸乱れぬ模範演舞のような踊りを楽しむ祭りがあったっていい。

軍隊とか警察などの行進は、祭りとは違うが、幾何学的な整然とした動きが実に美しい。一朝一夕で出来ることではないので、長い訓練の賜物であろう。行進の動き、それだけではなく、長い練習とその結果に思いを馳せる時に我々は感動を覚えるのであって、さんさ踊りもそうした類のものだ。


という衒学的(?)な話もどうでもよくて、腹が減ってきたので、居酒屋バーなる店に入った。まぁ踊りにかこつけて呑もうというのが、本義であるので我々の夜は、やっと論文でいうところの主題に入ったわけだ。

ここは予め酒とツマミを誂えて、料金前払で楽しむ所である。追加注文の度に金を払うのはちょっと面倒だが、却って呑みすぎたり、予算を超えるような事がないのでいいと思う。岩手の地酒しかないのがちょっと残念だ(そういう趣旨の店なのだろうが)。

セルフサービスで荒塩が置いてあるのがいい。酒もうまいし、踊りのライブ中継を流している。エアコンが効いていて涼しいし、ここで呑みながら踊りを楽しむのが一番賢い気もする。ただ、それでは家に居るのと何も変わらないが。

席が少なく、店の雰囲気も落ち着いていて実に気に入った。また近いうちに来たい。

少し驚いたのが、ミスさんさへのインタビューに知った顔が応えていることだ。つまり、今年のミスさんさに選ばれていた事で、全く恐れ入った。

店を出、帰りの電車にまだ時間があるので、それまでまた歩いた。踊りを終えた人たちがボチボチ増えはじめた。これから打ち上げに行くのだろうか、次々と集団で店に入っていく。既に酔っ払っているのも居る。

歩き詰めで流石に疲れた。

家に帰って、未だ時間に余裕があるし、ゲームをやりたい気持ちもあったのだが、PCの起動待ち中に一気に疲れが来た。折角起動したのだし、メールチェックだけして直ぐに寝た。

甘木さんは、海に行った帰りにPSOをやったので、すごいと思った。小生には無理な芸当だ。