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本を読んだので。

読んだ本の感想文を上げてます。
文章がバカっぽかったりふざけてるのはご容赦下さい。



 ※自己考察及びネタバレ注意


はい皆さんこんにちは!
アニメ宝石の国が始まってそろそろ一ヶ月が経ちます。原作からアニメ化を待望していた方も、アニメから入られた方も毎週緊迫する展開と輝く宝石の美しさに魅入られているのではないでしょうか?
そこで、アニメをキッカケに「宝石の国」の購入を検討されている方、更に宝石の国をご覧になられていて、かつ作者の市川春子先生の作風に惹かれた方へお勧めしたいのが、市川春子作品集「25時のバカンス」&「虫と歌」です。

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こちらの2009年に初版が発行された「虫と歌」、2011年に初版が発行された「25時のバカンス」ですがこちらも魅力的な作品がつまっております。

まず、市川先生の作品に共通していることなんですが人と人とは異なる生き物との共生がテーマになっている気がしますね。

えーと、まず1冊目の「虫と歌」に関して軽いあらすじとともにご紹介致しますと、

星の恋人

母が仕事で海外出張に行くため、叔父の元を訪れた少年、さつき。独身で一人暮らしていると思っていた叔父の家には見知らぬ女の子、つつじが共に暮らしていた。しかもつつじは、かつてさつきが幼い頃、叔父へのプレゼントの為に工作をしていたとき誤って切り落としてしまったさつき自身の指が成長したものだという。
憧れの叔父と、かつては自身の一部であったつつじ、それからさつき少年の不思議な二カ月間が始まる。

という感じでまずはさつきくんとつつじちゃんですね。それから叔父さんも。
途中でさつきくんがつつじちゃんのことを気になったり、叔父さんとつつじちゃんの関係が若干怪しかったりする訳ですが。本当に人間の女の子っぽいので、人外?嘘だ〜ってなるけど、後でがっつりつつじちゃんが自分で腕を切り落としたりするのでやっぱり人間とは異なる生き物なわけです。そこはそれ、星の恋人では「家族とは?恋人とは?」というあやふやで危ういラインが切なく描かれております。後、叔父さんが金剛先生に似てるので、そちらも必見。

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ヴァイオライト

「ひこうき、おちたぞ」投げ掛けられる声で少年、大輪未来は目覚める。どうやら修学旅行へ向かう途中、飛行機がトラブルにより墜落したらしい。無人島と思しき場所にいるのは、自分と声を掛けてきた天野すみれという同級生のみ。他の生徒たちを探すために二人きりで歩き始めるが、物資のない無人島で消耗しつつある。やがて未来は徐々に考え始めていた。あの時、飛行機に何が起きたのか。そして、目の前にいる天野すみれという少年は何者なのか……。


2話目もあらすじだけ書かせていただきましたが、下の段はがっつりネタバレ含みます。未読の人は注意してね♡



今回は未来くんっていう男の子と、その子の目の前に現れたすみれっていう男の子の話になります。修学旅行中に飛行機が墜落した未来くんはそのまま無人島に投げ出されちゃったわけなんですね。だから俺、飛行機嫌なんだよ〜。
気絶していた未来を起こしたのが金髪のイケメンすみれくんなんですが、このすみれが今回の話のキーになるわけです。さて、今回のテーマからもうお気付きかと思われますが、この話の人外キャラはすみれ。
物語の根幹にもなるんですが、飛行機墜落の原因は雷でした。そして、すみれの正体こそ未来たちが乗っていた飛行機に当たった雷なのです。すみれ本人は「嘘だろ?ちょっと小指が引っかかっただけだぜ?」的な軽ーいノリだったのですが、空中に投げ出された未来を見て慌てて人間の姿になり助けます。その動機というのも「人間って一人だと生きてけないんだろ?」というものでした。
大自然を目の前にした人間というのは余りにも脆い。いや、全てにおいてそうなのかもしれないけど。そういえば宝石の国でも、肉体の死を迎える生物に対して「不便」「下等なもの」と評す一幕がありました。
生や死、または群れというしがらみに囚われない物に対して、そういった意味では不完全である人間。それらと共生してゆくことで得られるもの、失うものもあるでしょう。
さて、大自然という運命に弄ばれ、一人投げ出されてしまった未来と手を差し伸べたすみれ。二人の結末とは。


日下兄妹


酷使から腕を故障し、野球から退くことを決意した少年ユキこと日下雪輝は世話になっている叔母の古道具屋で妙な生物と出会う。
ユキやユキの退部を説得しに来た野球部員たちとの日々で柔軟に知識を取り入れ成長するそれはやがて、ヒナと名付けられる。
家族のいないユキと正体不明のヒナのまるで兄妹のような穏やかな生活が続く。しかし、それも長くは続かない。ある日ヒナは言った。「肩、治しませんか。ヒナは流れ星なんです」
本来ならば願っても無いヒナからの提案に、ユキが下す決断とは。



この作品集の中で俺が一番好きな話なんですけどね、ほんとヒナが可愛いんですよ。マジで。
突然現れたロボットみたいな生き物がまるで妹みたいに振る舞うという普通だったら有り得ないような光景が、普通として成立する世界。それが日下兄妹という話でした。
ヒナがかなり賢くて、山積みになった本の内容をすぐ暗記したり料理したり果てにはメジャーも真っ青な豪速球投げたりするんですが、この未知の生物を誰も咎めたり悪戯に騒ぎ立てたりしないんですよね。むしろ、初めから存在していたかのように受け入れる雰囲気がまた不可思議で楽しい。


虫と歌


昆虫の研究を生業にする一家、長男晃(こう)、次男歌(うた)、長女ハナ。彼らの元に突如現れた異形の存在。恐るべき力と翅を持ち、人語を介さない彼こそ、研究により生まれた人型の昆虫だった。実験に失敗したことから海底に沈められていたという彼にシロウと名付け、人間としての知識を与えてゆく歌。三兄弟+一人になりつつある一匹だったが、シロウは徐々に衰弱してゆく。看護虚しく別れが近い事実を悟り項垂れる歌。それと同時期に歌自身にも変化が起こりつつあった……。



表題作であり、市川先生がアフタヌーン四季賞を受賞した作品でもある今作。いやもう、言わせて頂くと物凄く切ない話です。しかもかなり壮大なので、ちょっと長めに解説させてください。
相変わらずがっつりネタバレ含みますのでご注意を。







人間の存在と人と異なるもの
虫と歌において、完全に人間と言い切れる人物は恐らく長男の晃と仕事仲間の女性友さんだけだと思われます。
じゃあ歌とハナは?ってなるんですが、二人はシロウと同じく人型の昆虫です。翅が生えていたり言葉を喋れないシロウと異なり二人の見た目は完璧に人間だし言葉も喋れます。だからこそ初めはもう完全に普通の三兄弟だと思ってた。

シロウの実験における失敗とは
シロウが海底に沈められる程の実験の失敗とは恐らく、完璧に人間に成りきれていないことだと思われます。言葉も見た目も不十分である以上、歌やハナのように生活させる訳にはいかなかったのでしょう。

突き付けられる残酷な事実とその伏線
物語の途中、虫であることを明確に伝える為の描写としてシロウの早すぎる死を以って昆虫人間が短命である事実が突き付けられました。それと同時に伏線として挙げられていたのが歌の視力の低下。それに伴い、からかって歌の眼鏡を掛けたハナが「やだ、見えやすいかも」と言うシーンもありました。

人間とは 晃の場合 友の場合
シロウとの別れを経験しても物語はまだ終わりません。ここで、唯一の人間である晃には最後の仕事が残っています。人間と昆虫である以上、別れは晃と歌にも存在するのです。
とうとう視力の低下に次いで倒れてしまった歌に晃から明かされるのは人型昆虫のこと。明るい未来を描き、すぐ目の前に夢ではなく目標ときてのビジョンを抱いていた歌にとってそれは何よりも残酷な報せでした。しかし、聡い歌は笑ってそれを受け入れます。

「それでも俺を兄と呼んでくれるか」
「今更 なんて呼んでいいのかわかんねえし」
「生まれてきてよかった」

すぐ傍にある死に穏やかに寄り添い、生まれてきてよかったという言葉は築いた信頼関係の上にあるものです。
しかし、研究を続ける以上、晃はこの別れをこれから先も繰り替えさなくてはならない。

作中では、もう一人の研究者の存在がありました。
シロウの死に項垂れる歌の元、訪れた兄の研究仲間、友でしたが彼女は至って冷静でした。
シロウの母を名乗り、彼の死亡時刻を確認した後で縋るような目を向けた歌に「今あなたが望んでいることは何も叶えてあげられない」と告げると去ってゆく友。
恐らく、彼女もまた晃と同じく昆虫人間たちの生みの親として多くの生と死を見つめてきたのではないでしょうか。もしくは、晃以上に出会いと別れを繰り返したのかもしれません。
人型昆虫の生命を管理し、時に救い時に残酷に死を宣告する研究者はシロウや歌、ハナにとって最早、神にも等しい存在なのではないでしょうか。
人間とは何なのかを考えさせられますね。

終盤、始まりとは打って変わって静かな部屋で晃は一人研究資料をまとめていました。
あれほど騒がしかった家に気配はありません。もしかしたら、歌に次いでハナも亡くなった後かもしれません。ロック付きのケースにしまわれた写真を眺める晃。この他にも沢山の写真や思い出がしまってあるのでしょう。
そこへ鳴る一本の電話。そこで初めて晃は心情を明らかにします。研究の為だと亡くしてきた娘や息子、妹や弟代わりの虫たち。当然、歌のように穏やかに受け入れる子たちばかりではなく、死を恐れ恨んで死にゆく子もいた筈です。その度に引き裂かれそうになる心を押し殺して研究を続ける晃が胸中で「もうやめにしないか」と吐露するのはもっともです。
非情にも成り続ける電話。これが同僚の友からのものであるかどうかは明かされていません。顔を伏せて泣き続ける晃がこれから先も続けてゆくのか。それは分からないままです。



以上、市川先生著「虫と歌」の感想でした!
もう一つの作品集「25時のバカンス」は次回やりますよ〜やりますやります!