黙ることも「伝える」のうち | 社長のスピーチコーチ 森 裕喜子のプライベートブログ

社長のスピーチコーチ 森 裕喜子のプライベートブログ

経営者やトップアスリートのスピーチコーチ、森裕喜子が日々のプライベートな出来事などを綴ります。(2021年8月よりプライベート版に改定)

メディアトレーニングの仕事をすることが増えました。
マスメディアの特徴を踏まえつつ、
目的を持ったコミュニケーションとしての対応法などをお伝えしています。

多くの方が「とにかく何かうまい言葉を発しなくてはならない」とプレッシャーを持っていて、
それゆえに話すことが難しく感じておられます。

もちろん、コメンテーターのようなお仕事として
メディアに出ておられるのであれば、何も言えない、では困ります。

ですが、
とっさのインタビューや質問に対して、
本当に言葉が出ない、言葉にならない状況って、あるはずです。

自分の心に正直になればなるほど、言葉にならない、発信できないことがあるはず。
であれば、
言葉が浮かび上がってくるまで、沈黙があってもいいではないか、と。

「・・・今の私の気持ちは、言葉になりません」と言って良いはずです。

かつて、
俳優の高倉健さんに関する沈黙の話を聞いたことがあります。
こんな内容でした。

ある人が取材で健さんに質問した。
健さんはすぐに答えなかった。
ずっと黙っていた。
答えがないまま、質問した人と健さんは一緒にタクシーに乗った。
質問した人は、無言の健さんに
「もう質問のことは忘れたんだろうな・・・」と諦めた頃、
不意に健さんが質問の答えを言った。

健さんは、質問に答え忘れていたのではなく、
長い沈黙の最中、必死で、質問に答えようと考えていたのだ。
質問した人は、健さんのその思い、その真摯さに心打たれたそうです。

じっくり。
自分の言葉が出てくるまで待った上で発信される言葉は、
ポンポンと簡単に発せられる言葉よりもずっと重く、インパクトがあるはず。

だから、黙っていることも、発信なのです。

言葉にならないことは言葉にならないと、そのまま発信することで、
逆に伝わることもある。

黙ることも、発信。

そんな風に思えれば、
どれほどコミュニケーションは豊かになるでしょうか。
どれほど、発信するプレッシャーが楽になるでしょうか。

うまく話す必要なんてありません。
自分らしく。
本当に、心の奥にある、ピュアで強い自分のままに、自分らしく。

そんな発信は、共感してもらえる。

黙ること、恐れないでくださいね。
その後には、きっとより伝わる言葉が生まれてきます。