市原悦子 声の魔法 | 社長のスピーチコーチ 森 裕喜子のプライベートブログ

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経営者やトップアスリートのスピーチコーチ、森裕喜子が日々のプライベートな出来事などを綴ります。(2021年8月よりプライベート版に改定)

市原悦子は、独特な力を持つ俳優である。

はるか昔、
バラエティー番組かなにかに出ていた市原悦子が自分の演技力について語ったのを
私は忘れることができない。

あの声で、ぬけぬけとこうのたまった。

わたし、初めてお芝居したとき、思ったんです。あ。これ、わたし、出来る。って。



演技の天賦の才を自ら語る市原悦子。
ほかの役者だったら唖然だが、
市原悦子だから、うんうん、その通り。

・・・だってねえ、マンガ日本昔話があんなに面白かったのも彼女のおかげ・・・
日本国民はみなそれを知っている。

つい先日のこと。
某NHK番組に出演した市原悦子が
淡々と放送禁止用語(と一般に呼ばれる単語)を連呼した。
ツイッターで多くのひとが反応した。
市原悦子に、ではなく、発言のお詫びをした有働アナウンサー及びNHKに対して。
市原悦子の言葉は、多くのひとに受け入れられた。
彼女以外だったら、こうはいかない。

恐るべしマジカル女優、元祖不思議ちゃんの市原悦子。

不思議ちゃんの源は、あの「声」にある。

市原悦子の声の最大の特徴は、均一であること。
子音と母音、発する音のテンポ、リズム、息の吐き方、音程、大きさ、
これら声を構成するすべての要素が極めて「均一」である。

均一というと言葉の響きはよいが、要は変化に乏しいこと。
音符で言うならば、四分音符がひたすら同じ音程で並んでいるようなもので、
変化ゼロだから音楽にならない。

次に声質。
市原悦子の声の高さは蚊が鳴くように高く、音量は小さく、消え入るようにか細い。
言葉の抑揚つまり、声が上がったり下がったりも、極めてその差が狭い。
話す速さは眠りそうなほどゆっくり。
市原悦子の言葉はすべて子守唄。

変化のない、消え入りそうな、眠りをさそう声。
普通ならどう料理しても大根役者である。
だが、彼女はそうならない。

なぜか。

ギリギリのバランスと、想定外のギャップが強く魅き付けるのである。

均一な声は息がしっかり吐けている呼吸の良さ(腹式呼吸)があるからこそ、
それゆえすべての言葉、セリフがしっかり聞き取れる。
声の表現の幅を抑えに抑え、ほんの小さな亀裂からにじむようにセリフを吐く。
あらゆる言葉の隅々に、びっしりと感情が詰め込まれる。

ひとつとして無駄と隙のない絶妙なバランスを保った強い演技に、
童顔とも言える丸顔と丸い目。

このバランスとギャップが市原悦子のインパクトになっている。
恐るべしマジカル女優、元祖不思議ちゃんである。

天才不思議ちゃん的女優は、もうひとりいる(X竹XXX)。
似ているようだが大違い。
上目遣い、半開きの口元、語尾はごにょごにょ。
市原悦子がマジカルインパクトならば、
こちらはもはや単なるぶりっ子にしか見えない。

声には、そのひとの本当のところ、人間性が現れる。
市原悦子の声質はか細いが、しぶといくらいに均一な声の出し方の中に、
肚がどしっと座った昭和ひとけた的な「生きる強さ」を感じる。
まっすぐ正面を見て話す、あの姿勢にもたくましい在り方が現れている。


マジカル市原悦子は枯れることなく増殖中。
どんぶらこ流れる桃をケータイしていて見逃しちゃうおばあさんの役を、ソフトバンク新CMで演じている。

ひさしぶりに、家政婦姿も観たいものであります。


*市原悦子さんはお花がお好きのご様子、薔薇写真を入れてみました。

森 裕喜子