今回の研究遍歴5は、発生研究の途上で、 #アレクサンダーテクニーク という #ボディーワーク に出会ったところからです。
それまで色々な練習によってそれなりに歌唱力は向上していったものの、依然としてまだまだ疑問がありました。
その中でもとりわけ知りたかった疑問が、歌のレッスンも、トレーニングと言えるほどの練習もしていないのに、プロレベルに近い歌唱をする人が世の中にはいる、ということについてでした。

そこにどんな秘密があるのか。その時の自分の結論は、立証できないまでも、全ては「バランス」なのだと感じていました。何のバランスなのか?喉の?身体?気持ち?筋肉?

 

舞台俳優に転向して以来 #クラシックバレエ を初めて何年かやっていたのですが、その時に行っていたクラシックバレエのスタジオで身体の使い方について詳しく指導していただいたおかげで、バーレッスンで身体のバランスを強く感じることができるようになりました。
歌にも良い影響がありましたが、それが常に直結するというものではなく、しかしかなりの影響もありました。
そして、他により発声バランスに特化した方法はないかと考えている時に、身体の効率良い使い方のメソッドとして、アレクサンダーテクニークという身体の使い方を勉強し練習する、ボディーワークというジャンルがあると知りました。
同時に野口体操という日本のボディーワークにも出会いました。
そして疑問を解決するには、効率よく身体を動かす(歌う)ための「バランス」をしっかり紐解いていく必要があるんだと確信しました。

 

アレクサンダーテクニークにはすぐにのめり込み、習いに行ったり歌の練習に取り入れてみました。今でこそよく聞くようになりましたが、当時はアレクサンダーテクニークの日本語の書籍は数冊しか出ておらず、全て読んで、すぐに習いに行きました。ニューヨークまで行って習ったりもしました。
(アレクサンダーの協会はその教えに対して非常に厳格なので、有資格者ではない僕がそれについて語るのは許さないと思いますので、あくまでも当時の僕が感じたことや個人的な考えとして読んでください。)

アレクサンダーテクニークの重要な感覚にプライマリーバランスというものがありますが、これこそほとんどの動きの核になる感覚だと自覚しました。そして、歌唱や練習で試しているうちに、全く個人的な感覚としてですが、プライマリーバランスで発声する感覚がわかってきました。
そうこうしているうちに、アレクサンダーや野口体操の他にも、#フェルデンクライス というボディーワークも発見し、その後すぐではないのですが、段々と色々な出会いがあり、#ヨガ #野口整体 (野口体操とは全く別物)などの整体系身体学、#ロルフィング  #フランクリンメソッド  などにも影響されていきました。

話を戻しますが、アレクサンダーテクニークなどを取り入れることで、全身の筋バランス(特に首)と声の連動性をそれまで以上に感じられるようになり、喉の動きがよりよく分かるようになりました。その辺りから発声研究から、発声における身体学研究へとシフトしていきます。
ナチュラルヴォイスストレッチ(NVストレッチ)という飛躍的な効果がある発声用のストレッチを開発したのもこの頃でした。

そして更にアレクサンダーテクニークの講習を受けていた中で、高音域を出した時に体験したのが、それは #ミックスボイス #ミドルボイス と呼ばれる声の状態でした。
22歳くらいまで無意識に出せていた記憶のあるその発声感覚を何年かぶりに使うことができました。
その発見により、ハイトーンの出し方(ミックスヴォイス)研究へと踏み込んでいくことになります。
次の研究遍歴6へ続きます。

前回までの遍歴は呼吸中心の練習から始まり共鳴感覚の利用と開発、その後舞台発声というジャンルに移ったところまで。今回もそこからの続きです。

舞台発声といっても発声的に何か限定された声を指しているのではなくて、大きく響き、喉の負担のなく毎日使い続けられる声ということにです。大きい舞台で長時間の公演を毎日行うことができる声出ないと仕事にならないからです。

 

それまでポップス中心に歌ったり、発声を追いかけてきた側から、舞台の世界に入って気がついた点がいくつかあり、それがその後の自分の研究に大きく影響したことは間違いありません。

 

ひとつは、身体を鍛えて整えるということで、声や歌を支えたり変えたりできという事。

舞台俳優を長くやっている人達は、しっかり響く美しい声と声量が身についていく確率が、ポップス歌唱(ロック、R&Bなどを含む)を長くしている人達よりありらかに高く、正直、音楽的素養が感じられないタイプの人でも、美声と声量のおかげでそれなりに上手くなっていきます。

だからと言ってミュージカル系の発声指導が特に優れているわけでもないです。他と特に違うことを教えている訳ではありませんでした。
ポップスとのちがいは声楽的な発声を取り入れている指導者が多いということもありますが、また声楽を取り入れているので優れている、という訳でもありません。
舞台は腹式呼吸をしっかりやっているような事を良く耳にしますが、僕が見る限りポップスや声楽のトレーニングと特に違うことをするわけでもないのです。

 

結論を簡単に言うと、

一つは、舞台は声以外にも身体表現全部が重要なので、ダンスを必須にしている場合も多く、とくにクラシックバレエを基礎としてやっている人が多く、姿勢と呼吸を組み合わせた身体のトレーニングをしていることにまります。またそれによって身体の軸を作ることにも集中します。それらが、自然と喉の位置を整え、発声に対する筋連鎖をスムーズなものにしてくれるのだ、という事が分かりました。

 

もう一つは、舞台は演技も歌唱も、遠くの人に伝わる様に、表情筋を大きく豊かに使い感情表現をします。もちろん口を大きく開けることにも自然と慣れてきます。それによって表情筋や口腔内の筋肉もしっかり動くようになり、声帯への筋連鎖が習慣づいて安定した発声感覚が身についていくのです。

 

大きくはこれら2つの要素は、舞台をやるための当たり前の努力によって自然に身につくので、それによった舞台俳優の声の平均値は、ポップスを歌い続けている人達よりも確実に高くなっていきます。

 

要するにミュージカルのボイストレーニングが優れているとうわけではなく、舞台俳優としての演技の基礎トレーニングが自然と良い声と響きを作ってくれると言っても良いと思います。

それはやっている本人達は当たり前になっていて、なぜ声が育ってきたのか気がついてもいない人もいるようです。

 

しかしそこで一つの疑問にあたりました。

舞台の経験もなく、身体を鍛えてもいないのに、とても歌が上手で大きく歌える人もたまにいますが、そいいう人はなぜ存在するのか? そこに何の秘密があるのか?

 

また、毎日鍛えている舞台俳優や、ポップスシンガー、声楽家も、調子を崩して歌えない状態になってしまう場合や、上達できないケースがありますが、それは具体的にどういった事のせいなのか。

簡単に言うとそんな疑問が出てきて、それを解決すべく見つけてのめり込んだのがた、ボディーワークというジャンルで、まず初めにアレクサンダーテクニークというボディーワークに出会いました。

 

前回の続きになります。
前回の研究遍歴2の「共鳴の研究」の後半に書いた通りで、ボイストレーニングというのは、世界的にみてもこれが正しいという普遍的な理論などはない(たぶん今でも)訳です。

声帯や喉頭という見えない発声部分を色々な体動きの連動で演奏するわけで、それが当然なのかもしれません。

しかし自分としてはそこにチャレンジして解き明かしていきたいと思ってやっている日々です。
そしてやっと最近は外堀まで埋まって来たな、と感じています。

 

共鳴にのめり込んでいった頃の続きですが、共鳴にこだわると同時に、やっと腹で支える発声へのこだわりを捨てられて来た時期でもありましたが、それまで強くしっかりした発声に慣れきった喉は、なかなか軽い響きの良さを受け入れてくれませんでした。
頭でも耳でもわかっているのに、喉が軽い声の出し方についていけない日が続きました。
お腹の支え癖をやめた途端に不安定な歌唱になってしまったり、まるで素人としか思えない歌唱になってしまう事もあり、心理的にもかなりキツかった頃です。発声法を本気で見直すには、かなりの勇気と決意が必要です。
またその後、ちょうど主にやっていた音楽制作の仕事から、ミュージカル俳優に転向できるようなキッカケがあり、ミュージカル発声への興味もあったので生活を一変させました。
それまでと違い、仕事として毎日歌わないとならなくなったため、不安定な歌唱は何としても避けなくてはならず、共鳴感覚を追いかける練習もそこそこにして、声楽発声をかなり勉強し始めました。
当時のミュージカル俳優は声楽をベースに歌っている人がほとんどで、そのせいもあり、自分も何人かの声楽家の先生に師事してみました。そこでまた気がついたのが、フースラーの理論は声楽歌唱を主体に考えた歌唱法であり、ポップス歌唱に利用するには変換作業が必要だと実感しました。
そしてまた、声楽歌唱の時は声帯の角度や置き方が少し違っている事をハッキリと実感するようになりました。
また声楽的な声帯の使い方によって、物凄く共鳴を得られる事もわかって来ました。

要するに、共鳴法などどいう言葉がありますが、声帯の振動音の共振が共鳴として現れているものなので、声帯をうまく使えないと共鳴だけに意識を置いた練習は非効率で無意味に近いという結論が見えてきました。
しかしまた面白いのは、当時は声楽家の世界ですらもそういう認識はほとんどされてなくて、むしろ「頭に響かせろ」「胸に落とすように」「マスケラ(顔の表面)に響かせろ」などの共鳴を誘導する言葉を中心にレッスンが行われていました。(今も多いかもしれません。)
そして、ポップスと大きく違うのは共鳴法だと思っている人もいるくらいです。
しかし、確実にポップス歌唱よりも声楽の方が声帯の振動を安定して使う事を美徳としている要素を感じます。共鳴はそれに付いてきた結果ととらえて良いと思いました。
ミュージカル歌唱は、その2つの中間に位置し、どちらの業界からも邪道とかダサいとか嫌がられる要素が多々あります。しかし発声の完成度はかなり素晴らしい人が多く、発声だけなら一番成長できる業界だと思います。とても勉強になった実りある時期でもありました。
ポップスのボイストレーナーの方々にも、一度は声楽もミュージカルも是非経験してもらいたい要素がかなり多くあります。
そんなこんなで、呼吸中心の練習から共鳴中心に移り、その後は声楽とミュージカルや演劇を含む、舞台発声というジャンルにのめり込んでいきました。