研究遍歴10を書いてから結構時間が過ぎてしまいました。
今でも確実に研究は日々進化していて、前回の遍歴10の内容が、もうすでに10~15年前くらいの事で、遍歴の半分ちょっと過ぎたところでしかなく、まだ半分くらいですが、書くのが大変になってきたこともありまして、後半はちょっと大雑把にまとめていこうと思います。
今振り返っても遍歴10の時期に入った頃には、一通りの発声理論の角になるとこごはしっかりと見えてきていて、講師としての仕事も、この頃にはかなり楽になり、結果を出せないことがほとんどなくなっていました。
声を聴けば喉の位置や状態が見えるようになっていました。
そしてさらにそこから数年で、身体学の知識と体験から得た感覚によって、全身の筋反連鎖からの声帯への連鎖も手に取るように見え始め、その後の5年くらいでもう現在のスタイル「筋連鎖を利用した声帯の誘導」が出来上がってきました。
そして仕事内容も8割はプロレッスンとなり、書籍出版の依頼も複数いただき、レベルが変わっていく感覚もありました。
ボイストレーニング本に関しては同時期に出すと競合してしまうので、結局一社からしか出版できませんでしたが、その書籍を作るのにかなりの時間がかかってしましいまして、それがまた、研究を整理することができたり、違う角度から見たり、表現方法もかなり考察することができた、良い体験となりましたので、今回はその辺りを書いていこうと思います。
それまでですでに知識が多岐に渡り深すぎるがゆえに、一般的なヴォイストレーニング書籍のような、それっぽい事を、それらしく並べて書いて出すようなことはできませんでした。
そのためマニアックで専門的な内容を、編集の人たちに理解してもらわなくてはならなくなり、それにかなり時間がかかりました。そのやり取りがほとんどで、出版するのに4年半もかかってしまいました。
自分としては、今までの既存の本には書いていないことを、練習している人にとっては、わかりやすく解説していったのですが、声や歌を練習したことのない編集者には理解できないことだらけで、「分かりにくい」「一般的な表現ではない」「これでは読者からクレームが来る」という理由で、初めはかなりの部分を削除や変更されました。
こんな内容では自分が書く意味がないと思えるような、良くあるボイストレーニングの本にされそうになりました。
編集者のボイストレーニングってこんな感じでしょ、という思い込みに乗っ取って修正されてしまうわけです。
色々な既存の本から取ってきて、こういう言い方の方がいいとか、勝手に図や文章を当て込んでいく様子は、それなりにすごいなと思いました。ゴーストライターというか、ちょっと売れれば本なんて編集屋さんが書いてくれるものなんですね。ほとんどのノウハウ本がそんな感じで書かれてるのかと思うと腹が立ちました。
もちろんそんな本を出す気持ちはさらさら無いし、そっちの方がすぐに出版できて売れたのかもしれませんが、自分が書く意味を感じませんでした。
そこから必死に、一般的なボイストレーニングの教えは古いし意味がないことが多いことを説明して、原稿に書いた言葉やイメージが、上達するには必要なものであることをわかってもらうために、必死に食い下がりました。
何度も原稿を書き直し、説明を加え、ちゃんと練習している人にはわかってもらえる感覚であることを理解してもらえるように、言葉を尽くしました。
しかし、立場の違いや編集者のプライドもあるようで、何度も書いては直され書いては直されが続き、そのせいで執筆の依頼があってから出版まで異例の4年半という時間を費やす事になったわけです。
本当に大変でした。その間、編集者は2人も変わることになり、やっと3人目の編集者とのやりとりで進みましたが、それでも内容の6割から7割程度の表現で妥協することによって、やっと出版することができました。
なんとかありきたりのものではなくなりましたが、正直、不甲斐無さも同時に何割かあり、出版されても手放しで喜べない複雑な思いが残りました。
一応、自分の本としてはギリギリの線で納得できるラインでしたが、あまり宣伝もせず、1年くらいしてからやっと吹っ切れて、出版に対して前向きになることができました。
といった感じで、本当に大変で停滞した日々でしたが、このように書籍にまとめた事によって、自分の中の表現方法の矛盾に気が付けたり、同じ事を色々な違う言い方で表現することを学んだり、感覚的だった事をより具体的に説明できるように進化することができた期間となりました。
例えは、声帯の動きを感覚的に説明していた内容を、耳鼻科の先生に頼み込んで、実際に声帯を見られるカメラで映していただきながら発声して検証してみたり、より多くの解剖学的な資料を見る事に時間をつかいました。それによって、研究編歴10までの内容を、統合しまとめ上げることができた時期のなったと言っていいと思います。
そして表現をまとめた事により、自分にしか見えなかった講師目線の感覚を、弟子講師にも伝えることができるようになりました。
またこの知識と理論を若い世代に伝えていきたい気持ちも芽生え、講師育成コースを考えるようになっていきました。
その後も、未だに進化は日々続いています。
今では一般のボストレーナーとは全く違うところから感じていると自負しています。
また、ここ10年くらいの進化はについては、さらにマニアックになり過ぎて、今の所は遍歴として書く気持ちにすらなれないのですが、またその気になったら書いていこうと思います。
研究し始めてからあっという間に30年数年が過ぎ、講師として働くようになってからも20年以上が過ぎていました。
気がついたらとっくに若手研究者ではなくなっていました。
これからは、少しずつ技術をオープンにして、後進者に技術を残していけたらと思っています。
最近は、YouTubeとnoteというsnsの記事に、発声や歌に関する記事を上げていますので、よろしければそちらも是非見て読んでいただけたら幸いです。
まだまだ頑張りますので、どうか今後ともよろしくお願い致します。