人生には、いろんな時期がありますね。

私のように長く人生をやってくると、さまざまなことがあります。

 

ずっと音楽一筋の仕事をして来たように思う私ですが、

9年間、音楽を手放した時期がありました。

それは、結婚直後からの9年間。

 

結婚した相手の勤務先は宗教法人が経営する学校。

その学校の社宅に住んだのですが、社宅に住む条件がちょっと特殊でした。

妻は、仕事をしてはいけないというのです。

仕事をする代わりに学校や教団のお手伝いをする、という。

 

今から考えれば、もっと深くそのことに向き合って考えてみれば、その後の選択も違っていたのかもしれませんが、当時の私は、新しい局面に出会った時、深く物事を観察する、ということが全く出来ていませんでした。

なんだかそれまでと違った生活が出来る、というワクワク感のようなものに捉われて、

それまでやっていた音楽の仕事をすべて辞めて、社宅に入ったのです。

 

そして、9年間。

当時、全寮制だった高校男子寮の寮母をしていました。

 

こんな話をすると、大概の人は、「へぇ〜」って意外な顔をします。

半分、好奇心のような気持ちで入った社宅生活は、まあ、それはそれは、なかなかなものでした 笑

まるで「家政婦は見た」バリの、女性週刊誌かと思うほど、いろいろ体験しましたけど、

 

音楽を手放すときは、もう2度と音楽の仕事はしないんだろうなぁ、と漠然と思ったりしていました。

 

その頃、

私を娘のように可愛がってくれた大伯父から言われた言葉があります。

 

「音楽を捨てるんじゃなくて、ちょっとお休みするだけじゃ。また、出来るようになったらやったらええ!」

 

 

その言葉通り、9年後、社宅を出た私は、何の仕事をしようかと思ったとき、

心の拠り所になったのは、音楽の仕事でした。

 

 

そこからは、音楽の仕事一筋、

 

というわけには行かず、

 

やっぱり他の仕事にチャレンジしたりするんですが、

 

結局、音楽の仕事に戻ったということになりました。

 

 

 

 

長い人生、

 

自分がやりたいと思ったことでも上手く行かないことがあります。

 

そういうものは、手放したように見えて、やっぱり自分の手元に戻ってくることがあります。

 

 

手放すのではなく、人生の横に置いておけばいい。

 

また、時期が来れば、タイミングが来れば、それを取り出してまたチャレンジしてみる。

 

 

私は作家になりたいと文章の勉強をして、書き続けていましたが、

結局、音楽評論家という仕事になりました。

 

音楽を捨てて、文章を書くという仕事に気持ちを振り切ったはずなのに、

自分の文章を生かすものは、、音楽にあった、ということになります。

 

作家になりたいと思う気持ちも、今は、一旦、横に置いていますが、

いつかまた、取り出して、チャレンジする時が来るかもしれません。

 

 

 

あなたの人生の中にも、きっとそういう時期が来ると思います。

 

人生は長いのですから。

 

 

 

 

久道りょう