本来は雪が少ない里山を好むイノシシの生息域が、2メートル以上雪が積もる白山国立 公園に拡大していることが、石川県白山自然保護センターの調査で10日までに分かった 。標高1700メートル地点で昨夏、土を掘り返した痕跡が見つかり、秋には白山麓最大 のミズバショウ群落が食い荒らされた。国立公園では野生動物の捕獲が禁じられており、 現状ではイノシシ被害を食い止める手段は見つかっていない。
足が短いイノシシは積雪地での生息は困難とされてきたが、近年、多雪地帯である白山 国立公園でも冬場、たびたび出没するようになった。イノシシは、雪が積もらず地面が一 部露出した谷筋や斜面で餌を探しているとみられる。
このため、県白山自然保護センターは高山植物などの貴重な生態系が壊される恐れがあ るとみて、昨年春から国立公園の被害状況を調べ始めた。
雑食性のイノシシは植物の根や昆虫を食べるため土を掘り返す習性があり、白山の登山 道周辺や尾根など8カ所で食害や土を掘り返した痕跡、目撃情報が確認された。
8月には妙法山頂に近い標高1700メートル付近や、白山登山道の一部の石徹白(い としろ)道(同1200~1420メートル)で、それぞれ土を掘り返して何かを食べよ うとした跡があった。登山客でにぎわう白山登山口の別当出合(同1260メートル)で も目撃された。
9月には白山市白峰の根倉谷(ねぐらだに)園地(同800メートル)にある約250 0平方メートルのミズバショウ群落が食い荒らされたことが分かった。土の掘り返しがあ ったことからイノシシの仕業とみられる。被害は深刻で、群落が再生するかどうか分から ないという。
県内では1999(平成11)年からイノシシによる農作物被害が目立ち始めた。以降 、少雪や狩猟頭数の減少などの影響でイノシシは急増。99年度の被害額は44万円だっ たのに対し、2011年度は4509万円と100倍超に膨れ上がった。
県白山自然保護センターによると、白山国立公園周辺ではイノシシと同様にニホンジカ も増殖している。自然公園法では、国立公園内の特別保護地区で動植物を無断採取するこ とを禁じており、食害を防ぐ抜本的な手だてがない。
センターの有本勲研究員は、有効な対策を講じるため、生息状況や被害状況をさらに詳 しく把握しなければならないとした上で、「貴重な植物を柵で囲んだり、環境省に例外的 に捕獲を認めてもらうことも検討したい」と話した。
出典:北國新聞