企業の経営分析を行う指標はたくさんあります。収益性であれば、売上総利益率、営業利益率、経常利益率、etc.、資産効率であれば、総資本回転率、固定資産回転率、流動資産回転率、棚卸資産回転率、etc.、負債効率であれば、固定負債回転率、流動負債回転率、買入債務回転率、etc.

数えるときりがないほどの経営指標があります。

指標の計算方法などは、経営分析の書籍がたくさん出ていますから、そちらをご覧下さい。

さて、企業再生においては、対象企業が再生できるのか、を判断しなければなりません。

再生の可能性を判断するためには、数多くある経営指標のうち、より重点的に分析するべき経営指標があります。前回、「再生を目指す企業の場合、キャッシュフローを最重視せざるを得ない」と書いた通り、キャッシュフローに関わる経営指標を重視すべきなのです。

以下、再生可能性を判断するために注意すべき指標を列挙します。

1. PL関連


原価分析

最もベーシックな分析項目です。流通業の場合はわかりやすいのですが、メーカーや建設業の場合は中身を細かく見る必要があります。原材料や燃料など、為替レートや原油価格など外部環境の変化によって大きく変動する可能性があるならば、計画にそれらを織り込まなければなりません

外注費もチェックポイントです。季節変動の激しい業種では、外注依存度が高まります。資金繰りのために無理な受注をし、外注コストが増加して採算性が悪化していることがないか、をチェックします。


損益分岐点

これもベーシックな分析項目です。計算式は下記の通りです。

限界利益=売上高-変動費     限界利益率=限界利益÷売上高

損益分岐点売上高=固定費÷限界利益率=固定費÷(1-変動費比率)

問題は固定費の考え方です。固定費は「売上の変動に関係なくかかる経費」というのが定義ではありますが、一般的には、売上が一定以上上がった場合には固定費も増加すると考えるべきです。

一方で、売上が下がった場合に急に下げることができない費用でもあります。

また、固定費削減はどこの会社でも取り組んでいることですが、固定費が下がると変動費が上がる、というのが一般的です。ものすごく余裕があり、固定費をふんだんに使っている会社は別ですが・・・。

固定費を変動費化する場合、事業の局面が拡大段階にあるのか、縮小段階にあるのかを見極めるべきです。拡大が見込まれるのであれば、内製化し固定費を増やすべきでしょうし、縮小が見込まれるあるいは不透明であるならば、多少利益率が悪化しても外部依存度(変動費)を高めリスク回避する、という選択をすべきです。


減価償却費

減価償却費は、償却限度内であれば、償却額は任意なので、収益状況が厳しい会社であれば、償却を控えているケースが結構あります。

再生計画上では適正償却が求められます。そもそも減価償却の趣旨は、減価償却費を計上して節税し、そこで浮いた資金を再投資にまわす、ということですから、減価償却費を計上できない、ということは、再投資余力がない、ということになります。

過去に適正償却ができていない場合で、再生計画上、適正償却をすると当然PLは悪化します。対象企業が債務超過状態にあれば、減価償却費によって債務超過解消までの期間が変わってくるため、要注意です。


④雑収入など

リベートや賃料収入などを雑収入として計上している会社もあります。安定的な収入であれば、利益計画に入れても良いのですが、保健収入のような一時的なものであれば計画からははずしておくべきです。

2.BS関連


現預金残高

資金繰り表を検証する、というのが本来の姿ですが、資金繰り表を入手する前段階として、決算書ベースでも現預金残高推移を見ることができます。減少傾向が続いていれば、資金繰りは厳しくなっている、と判断できるでしょう。

翌月1ヶ月の支払い予定額相当の現預金残高が不足している、という状態だと相当厳しいと判断できます。

BSの指標ですと「当座比率」というのがあります。当座資産(現預金、売掛金、受取手形など換金性の高い資産)/流動負債 という指標ですが、買掛金が減り当座比率が改善しているからといって安心はできません。取引条件が厳しくなった結果、買掛金が減少しているかもしれません。

また、PL上では、それなりに利益が出ているにも関わらず、現金がない、という状態は粉飾決算ということもあるかもしれません。

再生計画を立てようという企業の場合、当面の資金繰りが回るか、というのは最も重要なポイントです。


売掛金の回転期間

(受取手形+売掛金+割引手形+譲渡手形)/月平均売上高 で計算します。割引手形や譲渡手形を入れるのを忘れないで下さい。

売掛金の回転期間が長期化している、ということは、不良債権化している可能性があります。


買掛金の回転期間

(支払手形+買掛金+譲渡手形)/月平均売上原価 で計算します。月平均売上高で割る考え方もあります。買掛金の回転期間が長期化している、あるいは業界平均と比較して著しく長い場合は支払を猶予してもらっている可能性が高く、再生計画の中で正常化していかなければなりません。その際には、運転資金の増加を見込まなければなりません


棚卸資産の回転期間

棚卸資産/月平均売上原価で計算します。月平均売上高で割る考え方もあります。メーカーや小売業であれば、計画的に在庫削減に取り組んでいる場合は別として、それほど大きな変化はないはずです。建設業の場合は年度末の物件受注状況によって、未成工事支出金(仕掛品)が大きく変動しますので、内容は確認したほうが良いでしょう。


その他の資産・負債

さて、上記のような売掛・買掛・棚卸資産の回転期間の確認は一般的なのですが、再生の場合は、その他の資産、負債についても細かく見る必要があります。

例えば未払金には、社会保険料や税金の滞納分が含まれている可能性があります。これらの支払は再生計画の中で優先する必要があり、資金繰り悪化にもつながります。

前受金(建設業などでは未成工事受入金)の増減にも注意します。急激に増加している場合、資金繰りが悪化しているために、無理な受注をしている、採算性を度外視した受注をしている、という危険性があります。営業債務ですから、履行しなければならないのですが、履行した段階で、ドンと赤字が計上されてしまう、ということがないかどうか注意します。

また、貸付金や未収金については子会社や関係会社に対する債権が含まれている場合があります。この場合回収可能なのかどうか、再生計画において合併などの方法で消滅させるのかをよく検討する必要があります。(単純に免除したりすると寄付金扱いになってしまう可能性があります。)


遊休資産、投資等

投資等の中に、建設協力金や保証金が含まれているケースがあります。これらは返還されるような契約になっていたとしても、返還可能性について確認しておく必要があります。

遊休の土地・建物があるような場合は売却可能かどうかを検討します。再生計画の場合、遊休資産をそのままにしておくということは、債権者の了解が得られにくいので、担保物件となっている場合は担保権者の了解を得て売却することになります。会員権なども同様です。

もっとも、このご時勢、なかなか思ったような価格では売却できない、というのが実態でしょうけど・・・。