さて、これまで、財務デューデリジェンス、事業デューデリジェンスについて書いてきましたが、今回から、再生計画の中身に入っていきたいと思います。
まずは再生計画の記載事項と再生計画成立の必要最低条件です。勿論、債権者の意向によって、記載事項や成立条件は変わってきますので、ここでは標準的なレベルが書いてある、と考えて下さい。
1. 窮境の原因
企業が私的整理をしなければならなくなった要因を分析します。過去のことなんて・・・と思われるかもしれませんが、債権者にとっては、重要な分析視点です。
l 過去、どのような経営判断と投資がなされ、借入金が増加し、返済困難な状況に陥ったか、
l 失敗要因を取り除くことが可能なのか
l 失敗要因を取り除いた場合に再生が可能なのか
を判断しなければなりません。例えば、本業以外のところで躓いており、本業は比較的堅調なケースと、本業そのものが不振なケースでは、判断が大きく異なってしまうからです。
窮境の原因を分析する際に、長期の売上やEBITDAの推移、借入金の推移、投資の推移を並べてみると、大筋のことがわかります。
2. 財務デューデリジェンスの要約
実態バランスシート、清算バランスシートを掲載します。
再生計画を立てなければならない企業の場合は、帳簿上では資産超過であっても、実態的には債務超過の場合が殆どです。
再生計画は実態ベースでの計画作成が求められます。現状のキャッシュフローで見た場合に実態債務超過解消までにどのくらいの年数がかかるのかを判断します。
清算バランスシートでは、その企業を清算した場合に、債権者が、どの程度回収できるのかを判断します。
再生計画を実行した場合の回収額 > 清算した場合の回収額 とならなければ、一般的には再生計画は成立しません。
3. 事業デューデリジェンスの要約
事業環境の将来展望、対象企業の経営分析を掲載します。成長性や収益性など、対象企業の将来計画のうち、とりわけPL計画策定のための前提条件を設定するための判断材料となります。
部門別の収益力分析では、存続事業と撤退事業の切り分けをします。
また、対象企業の競争力の源泉についても記載します。再生の可能性があるかどうかの判断材料となります。
4. 再生スキーム
再生スキームについては、金融支援の内容と組織再編方法について記載します。
金融支援には、下記のような種類があります。
① リスケジュール
返済計画の見直しです。キャッシュフローの範囲内で返済できるように返済期間の延長等を行います。
② 金利減免
文字通り、借入金の金利を低利率にします。
③ DDS
デット・デット・スワップ(Debt Debt Swap)、日本語では「資本的劣後ローン」と言います。
資本的劣後ローンには、「早期経営改善特例型」と「准資本型」の2種類があります。
「早期経営改善特例型」の場合は、債務者区分が要管理先・要注意先の債権を対象とし、優先債権完済後の返済となる、デフォルトした場合の請求権は他の債権より劣後する、といった特徴があります。
「准資本型」の場合は、債務者区分は問わない、償還期間が長期であることや金利が業績連動型であること等資本に近い性質である、といった特徴があります。
いずれも、金融機関の査定上では「資本」と看做されるため、実態債務超過の解消に役立ちます。一方、会社側から見れば借入金には違いないので、金利は減少する可能性はありますが、返済義務はあります。
④ DES
デット・エクイティ・スワップ(Debt Equity Swap)、日本語では「債務の株式化」と言います。
借入金を株式に交換することですが、これにより、会社側は債務が消滅するため、「債務消滅益」が発生することになります。欠損金がない場合は課税が発生するので、注意が必要です。尚、交換する借入金の額は「簿価」ではなく、「時価」ベースとなり、この簿価と時価の差額が「債務消滅益」となります。この「時価」の捉え方は難しいのですが、「担保や収益による弁済を考慮した回収可能額」ということになります。
DESのメリットとしては、金融機関の査定上でも、会社側から見ても、あるいは外部から見ても「資本」ということになり、DDSと違って明快です。
だし、金融機関にしてみれば、いつまでも対象会社の株式を持ち続ける、というわけにもいかないため、いつの時点でどのようにして売却するか、といった処理方法を考えておく必要があります。
⑤ 債務免除
金融機関にとっては最も重たい支援です。企業側にとっては「債務免除益」が計上され、欠損金がない場合、課税が発生してしまうので、注意が必要です。
尚、担保で保全されている額を割り込んでまで、債務免除されることは一般的にはありえません。
次に組織再編について簡単に説明しておきます。
① 既存会社存続方式
現在の会社をそのまま存続させ、金融支援等を行い再生する方法です。最もオーソドックスな方法です。許認可等の関係で会社分割や合併などの組織再編ができない場合には既存会社存続方式を使わざるを得ません。
② 合併
親会社・子会社、あるいは関係会社同士で合併して再生を図る、というケースがあります。
親会社・子会社間で借入・貸付の関係があり、消滅させたいような場合に合併させる、ということが考えられます。
合併には税制適格合併と非適格合併がありますが、適格合併の場合、「簿価」で資産・負債を引継ぎ、繰越欠損金も引継げる、というメリットがあります。
③ 会社分割
事業をGOOD事業とBAD事業に分け、GOOD事業を会社分割により切り離して再生を図る、BAD事業は清算する、といった再生スキームで活用します。
会社分割にも税制適格分割と非適格分割があります。
尚、適格合併や適格分割の場合、細かく適格要件が設定されています。適格要件の中に再編後も再編前の支配関係(株主)が継続すること、という条件があります。再生計画の場合、株主責任を問われ、株主構成が変わってしまうことが一般的ですので、スキームとして適格合併や適格分割を採用することは難しいと言えます。
④ 事業譲渡
事業の売却ですが、再生企業の場合、基本的には痛んでいる事業を売却したいはずなので、なかなか難しいのが現実です。但し、許認可の関係で、被買収事業が買収企業にとって魅力的な許認可を取得している、などの理由で成立する可能性はあります。
事業譲渡は、不動産取得税や登録免許税の税率が一般税率となっている、土地や有価証券以外の資産の譲渡に対して消費税がかかるなど税務面での負担が大きいというデメリットがあります。(不動産取得税は合併の場合非課税、分割の場合は一定の要件を満たせば非課税、登録免許税は合併、分割共に軽減措置あり、消費税は合併、分割共に対象外)
会社分割等組織再編の詳細については、また別のコーナーで解説したいと思います。