前回からの続きで、再生計画書の記載事項と再生の条件について説明します。


1. 再生計画(利益計画と弁済計画)

利益計画については、損益計画、貸借対照表計画、キャッシュフロー計画のほかにTaxプランを作成します。作成期間はケースバイケースですが、概ね10年程度の計画を作成することが多いように思います。

損益計画

原則として部門別に作成します。部門によって原価や経費の構造が異なっているためです。

また、損益計画の前提となる販売計画、粗利計画、経費計画は戦略(計画の根拠)をきちんと立てておく必要があります。

再生計画の場合、右肩上がりの計画はよほどの根拠がないと債権者に受け入れてもらえません。


貸借対照表計画

債務超過解消までの期間は35ですが、最近は、金融緩和策の効果もあり、7年程度まで認めてもらえる場合もあります。


キャッシュフロー

PL、BSからキャッシュフロー計画を作成しますが、設備投資が必要となる企業の場合、投資計画がきちんとされているかどうかがポイントです。

ここで計算されるフリーキャッシュフローが返済+支払利息の原資となります。


Taxプラン

債務免除等を受ける場合は、債務免除益への対応として、特例欠損金がどのくらい使えるのか、資産評価損益税制を使うのかどうか、といったことを検討します。

Taxは、再生の成否に大きく影響するので、十分な検討が必要です。

(詳細は (4)特例欠損金の使い方  を参照)

弁済計画

金融機関別、債権の種類別に弁済計画を作成します。債権の種類には、別除権付債権(担保物件を売却して弁済する債権)、収益弁済口債権(フリーキャッシュフローから弁済する債権)、保証付債権(保証協会等の保証履行による債権)DDSなどがあります。

再生計画の場合、通常の運転資金残高、DDSを除き、1015年間で完済する、というのが一般的です。また、収益弁済は原則として、各金融機関に対しプロラタで返済します。(各年の返済総額を金融機関ごとのシェアで配分し、平等に返済すること)

2. 経営責任と株主責任

私的整理に至ったことに対して、経営責任と株主責任は避けて通れない部分です。特に債務免除に至った場合には、厳しくなります。


経営責任

債務免除まで実施した場合は経営者は交代するケースが殆どです。経営者が交代するかどうかの判断は、その社長が「窮境の原因を作ってしまったかどうか」で判断するのが一般的です。ただ、中小企業の場合、オーナー社長であるケースが多く、しかも社長1人に経営上の重要事項が集中している場合があります。こういった場合に、すぐ社長が退社してしまうと業務がまわらなくなる可能性があるので、社長は降りてもらうとしても、当面顧問や一社員として再生に尽力してもらうケースもあります。


株主責任

債務免除まで実施した場合は、株主責任を取ってもらうことになるため、既存株主は100%減資を求められるのが原則です。

債務免除をしてもらわなければ実態債務超過の会社が殆どですから、理論的に株式価値はゼロとなります。債務免除をしてもらい、実態債務超過が解消され、株式価値が出る、ということになれば、債務免除をした金融機関にとっては不公平感が残ってしまいます。

但し、株主が取引先で、100%減資をした場合に、再生対象会社の信用が著しく低下してしまう場合、あるいは取引停止になってしまう場合などは、そもそも再生困難となってしまいますから、既存株主を残す、という選択もありえます

但し、そういった場合でも、新たな株主に増資を引き受けてもらい、既存株主のシェアを低下させるなどの対応が必要です。


保証履行

借入金に対して、代表者が個人保証を行っているケースが大半です。債務免除まで実施した場合は、個人保証履行を求められます。個人資産等を売却し、会社に代わって代位弁済をした場合、資産売却益に対して個人に課税されてしまいます。課税されないためには、代位弁済により発生した会社に対する求償権を放棄する(会社側が弁済できないことを証明する)必要があります。

所得税法642(資産の譲渡代金が回収不能となった場合等の所得計算の特例)を適用するわけですが、この適用にあたって、法律の解釈で揉めるケースもあるので注意が必要です。


3. その他の約束事項の記載

再生計画書には、上記以外にも、様々な約束事項を記載する必要があります。「コベナンツ」といったりしますが、下記のような事項を記載します。

· 財務内容等情報開示の方法

· 計画通りに返済ができなくなった場合の取扱

· 利益計画やキャッシュフロー計画が一定率を下回った場合など、計画の修正が必要になった場合の取扱

· 計画外の設備投資を行う場合、株主や役員の変更が必要となった場合など、金融機関との協議・合意を必要とする事項

大体、以上が再生計画の記載内容になります。

もう一度、再生計画の成立要件について、表にまとめておきます。あくまでも私的整理の場合です。


ヴァリューマネジメント-経営のヒント--再生計画成立要件