さて、事業性評価(事業デューデリジェンス)の個別論に入らせていただきます。
今回は市場規模と成長予測のお話です。
再生計画の策定に当たって、最も重要な点は将来の収益、キャッシュフローがどの程度生まれるのか、ということであり、その大前提となるのが、市場規模と成長予測です。
現在の市場規模に関しては、様々な統計データを検索し、加工すれば、大抵の市場規模は推定できます。
国のデータで言えば、人口や家計など一般家庭に関するデータは総務省、商業や工業に関しては経済産業省、道路や交通、建設に関しては国土交通省、ちょっと変わったところで病気に関するデータは構成労働省のホームページから統計データのページへアクセスすれば、国や県レベルのデータは入手可能です。政府統計のポータルサイトから検索するのも手っ取り早いです。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/eStatTopPortal.do
市区町村レベルのデータになると、県や市のホームページを検索してみましょう。
あとは業界団体のホームページです。どのような業界でも大体ホームページがあり、その中で業界の統計を公開しているケースが多いです。
問題となるのは将来予測です。業界によっては将来予測を出しているところもありますが、そういう業界は少なく、結局は自分たちで推計することになります。
再生計画の売上計画を「過去のトレンドで2%成長としました」と言っても納得できる数字なら良いですが、通常の場合は債権者の皆さんは納得してくれません。
再生計画の場合、「気合で頑張ります」と言っても駄目で、「客観的説明」が重要なのです。勿論、気合を入れて頑張ることは大事なのですが・・・・。
では、どのようにして、将来予測を説明すればよいのでしょうか。
国が予測する経済成長にしても、何にしても、絶対に達成できる、という保証はありません。それは誰でもわかっています。だけれども、債権者にしてみれば、納得できる説明がほしいというのも当然です。
私は、売上や市場規模の成長を直接説明するのではなく、事業環境を左右する因子を見つけ出し、その因子の変動を予測することにより、対象事業の売上や市場規模の予測をする、という手法を用いています。
勿論、その因子の変動が誰にでも納得できるものである、ことが重要です。
ちょっと事例を見てみたいと思います。次の事例は「木造在来工法住宅」の市場予測を行ったときのフローチャートです。
① まず最初に持家のストック数を推計します。
年齢階級別に分けるのは、年齢階級によって持家率がまったく異なること、将来的に高齢化が進み、年齢階級別の人口や世帯数が大きく異なってくるからです。
将来人口は「国立社会保障・人口問題研究所」のデータ、持家率は、総務省の「住宅・土地統計調査報告」の実績データを基に将来予測をします。
② 次にストック数の増加数に基づき、新規取得となる一次取得(フロー)の推計を行います。
③ 更にストック数をベースに二次取得(フロー)の推計を行います。
住宅取得を考えた場合、既存住宅からの買換え、既存住宅の建替えという方法もあるので、ストック数をベースに買換え、建替えの推計を行います。
④ 一次取得+二次取得が総住宅需要ということになりますが、住宅も新築と中古がありますし、マンションもあれば、戸建もある、工法も様々ということですので、住宅・土地統計調査報告」のデータを基に、これら取得住宅種別の推計を行い、最終目的である在来工法による戸建市場の将来推計値を算出します。
以上のように、ステップを設け、論理的に推計を行うことにより、「エイヤッ」と一発で出した予測よりも、かなり説得力は増すはずです。
勿論、こういった方法でやったとしても、当たるとは限りませんが・・・・・。
もう少し統計学的な手法をとる場合は様々な説明変数を用いて将来予測をする「重回帰分析」という手法もあります。この話をし始めると、ちょっとオタッキーになってしまい、本論の「再生計画策定」とは、だいぶ話が外れてしまいますので、この話はまた別のコーナーででも解説したいと思います。
さて、市場規模には、数量としての市場規模と金額としての市場規模があります。再生計画は「売上・収益計画」を立てるのが目的ですから、当然金額ベースの予測が必要です。
再生計画は個別の企業の計画なので、金額ベースの市場規模を厳密に予測する必要はないかもしれませんが、それでも単価が将来どのように推移するか、といった想定は必要です。
単価の想定は、製品によっても異なりますが、景気変動による需要と供給の関係、原材料の余剰・逼迫状況、普及率の増加に伴う量産効果による単価下落、などのデータを過去の実績から分析し、将来の単価を想定することになります。
以上のような方法で、金額ベースの市場規模の推計や再生計画における販売計画を策定していくことになります。
ではまた・・・・。
