競合状況を分析する意味は何でしょうか。

例えば、新規事業に進出したり、新製品を開発したりする場合は、主だった企業の商品構成、価格帯、商品特性や品質、シェア、販売チャネル、営業体制、物流体制といった視点で検討します。

小売業や飲食など店舗型の事業であれば、立地状況、商圏人口、顧客層、店舗面積、駐車場、品揃と価格帯、集客状況、接客力といった視点でしょうか。

これらの分析は、どちらかと言えば「売上がどの程度確保できるか」を検討するためのリサーチです。

勿論、企業再生のためには、売上確保は大前提ですから、上記のようなリサーチも必要ですが、これから再生を目指そうという企業の場合、事業構造そのものに目を向けていかなければなりません

競合企業の、もっと言えば競合の中でも優良企業の事業構造を分析し、当社の事業構造と比較することで、当社の強み・弱みを浮彫りにし、今後の戦略に活かしていく、ということが競合分析の目的です。

従って、必ずしも、「競合」である必要はなく、直接競合ではないが、「同業他社」や「類似企業」であっても、大いに参考になる点はあるはずです。

さて、簡単に書きましたが、実際に競合(同業他社)の事業構造をどうやって分析するのでしょうか。

最近では情報公開も盛んになり、ホームページや新聞、雑誌等でも、企業の事業活動内容がわかるようになりましたが、本当に知りたい部分まで、細かくわかるわけではありません。

私の場合は、まず経営指標等の定量的なデータを分析し、仮説を立て、それをヒアリング等で補足・検証する、という方法をとります。

経営指標等の定量的なデータは、上場企業であれば有価証券報告書がありますが、非上場会社の場合は、調査をするしかありません。

ヴァリューマネジメント社では、EVシリーズという企業価値評価ソフト を使っていますが、これは、約10万社のデータベースを搭載しており、かなりの経営指標を入手することが可能です。(指標のみで、実数はわかりません。)

小売業などは日経MJで売上や売場面積などの調査をやっていますから、こういったデータを活用することも有効です。

例えば、下の図は、地方百貨店8社の交差比率(棚卸資産回転率×粗利益率)の推移をプロットしたグラフです。M社、P社、U社の直近実績では、交差比率はほぼ同水準ですが、棚卸資産回転率と粗利率の水準はぜんぜん違います

おそらく、M社は、テナント形式の売場が多いため在庫はテナント負担となっている代わりに粗利率も低くなっている、逆にP社やU社は直営形式の売場が多いため粗利率は高いが在庫負担は自社で持っている、といった違いが推測されます。

どちらのほうが最終的に収益力があるかは一概に言えませんが、U社やP社のほうは、直営方式で売場作りや商品構成など自らの工夫で改善・コントロールはしやすいが、人件費がかかる。従って、コスト以上の営業効率(面積当たり売上、1人当たり売上等)が上がっていれば成功だが、そうじゃなければ・・・、といった戦略の比較分析ができます。



ヴァリューマネジメント-経営のヒント--百貨店の営業効率


次のデータは金属加工製品メーカー5社の経営指標の一部です。

指標は数多くありますが、ここでは、スペースの限界もありますので、4つほど掲載しています。

売上債権・買入債務の回転期間や固定負債の回転期間など、BS関連の指標も5社それぞれ大きく異なっています。なぜこれだけの違いが出てしまっているのか、各社の戦略の違いや問題点を推測してみてください。


ヴァリューマネジメント-経営のヒント--売上高EBITDA比率
ヴァリューマネジメント-経営のヒント--売上債権回転期間
ヴァリューマネジメント-経営のヒント--買入債務回転期間
ヴァリューマネジメント-経営のヒント--固定負債回転期間

さて、定量的なデータを基に、競合(同業他社)の戦略の違いを推測したら、今度は、それをヒアリング等で補足・検証します。

誰にヒアリングするか、ですが、業界によっても異なりますが、お取引先にヒアリングするのが最もわかりやすいと思います。取引先は、自社だけではなく、複数の同業他社との取引があるはずです。

別に取引条件を聞くとか企業秘密をヒアリングするわけではありません。営業方法や商品に対する評価、クレームに対する対応など、自社との比較の上で、率直な意見を聞けばよいのです。

そうした意見を聞きながら、競合(同業他社)が戦略上何を重視しているか、経営指標分析で立てた仮説は正しかったか、競争力の源泉としているのは、どういったことにあるのか、自社との違いはどこにあるのか、ということが明らかになってきます。

こういった地道な分析が再生計画を実現するための戦略策定に大いに役立つはずです。