さて、前回まで、財務デューデリジェンスや不動産鑑定のお話をしてきましたが、今回から、事業性評価のお話に入りたいと思います。


財務デューデリジェンスは、正常収益力や実態BSを把握するための作業でした。いわば、企業の現時点での収益力や純資産を明らかにすることを目的としています。


それに対し、事業性評価は(事業デューデリジェンスと言ったりもします)将来の収益や純資産の増加の可能性を判断することを目的としています。


事業性評価は外部環境評価と企業力評価を行います。検討項目としては、概ね下記のような項目となります。


1. 外部環境分析

 対象事業の市場規模と成長性

 対象事業の現状の収益性と将来の収益性

 競合状況

 法的規制等


2. 企業力評価

 対象企業の業界内でのポジション

 人材や技術力など社内経営資源の強みと弱み

 顧客や取引先からの評価

 部門別経営指標の分析


詳細な解説は次回以降にしたいと思いますが、ざっと説明しておきますと、外部環境分析における、市場規模や成長性は「言わずもがな」ですが、市場として成長したとしても、将来的に収益性はどうなるの? というところがポイントです。


例えば現在急激に普及している商品があったとします。普及過程で競合も増加するでしょうし、量産効果で単価も低下するでしょう。その段階で普及率が飽和してしまったらどうなるでしょうか。あとは買換え需要に頼るしかなくなるため、買換えサイクルが長期の商品の場合、急速に収益性が低下してしまう危険性があります。


法的規制に関しては、異業種からの参入障壁となる、というメリットもありますが、許認可等の絡みで会社分割等の組織再編行為が困難となり、再生スキームを制限されることがあるため、とても重要な検討事項です。


企業力評価は、「強みと弱みの分析」などと良く言われますが、要するに、その企業の競争力の源泉を明らかにすることがポイントです。再生途上にある企業とは言え、その企業がこれまで存続してこれた限りは、なんらかの競争力の源泉があったはずです。その競争力の源泉を武器として、再生計画を軌道に乗せていかなければなりません。


債務免除などの金融支援をしてもらったところで将来の収益可能性や競争力をブラッシュアップする企業努力がなければ二次破綻してしまいます。そうならない対策を立てるために事業性評価が必要なのです。



事業性評価はよくSWOT分析と言うフォーマットにまとめられます。企業力評価結果としての「強み(Strength)」、「弱み(Weakness)」、外部環境分析結果としての「機会(Opportunity)」、「脅威(Threat)」をマトリックスにしてまとめたものです。いろんなフォーマットがありますが、私は下図のようなフォーマットを使っています。

SWOT分析のメリットとしては、まとめる段階で論点が整理されること、一覧性があり、債権者など対外的に説明しやすいこと、が挙げられます。

一方こういったフォーマット形式というのは、まとめる段階でどうしてもフォーマットを埋めようとしてしまい、ミスリードしてしまうこともあります。なので、私は、SWOT分析のあと、その内容について、詳述するように心がけています。


ちょっと冗長な文章になってしまいました。これが私の「弱み(Weakness)」ですね。



ヴァリューマネジメント-経営のヒント--SWOT分析フォーマット