海外でブーム再燃中!日本の「急須」と「お茶」が直面している、意外な光と影。
こんにちは。杉山貢大です。
先日、愛知県常滑市にある「磯部商店」さんを訪れ、素晴らしい職人技が詰まった「常滑焼の急須」に出会いました。
お茶農家である自分にとっても、美味しいお茶を淹れるために急須は欠かせない存在です。
今回は、その奥深い急須の世界とお茶の意外な共通点についてお話しします。
職人の手から生まれる:常滑焼の急須
日本でも数少ない、手作りで急須を作れる職人が残る街、常滑。
自分がお迎えしたのは、熟練の職人さんが一つひとつ手作業で作り上げた、まさに芸術品のような急須です。
驚くほど精密な構造
常滑の手作り急須は、単なる器ではありません。
以下のパーツを別々に作り、絶妙な精度で組み合わせていきます。
・蓋と本体: お茶を注いでも、蓋の間から一滴も漏れない高精度な密着度。
・持ち手と注ぎ口: 手に馴染みやすく、注ぎやすさを追求した設計。
・セラメッシュ(陶製フィルター): 内部にある茶葉を越すための穴まで、手作業で開けられている。
この精密な設計により、安価な急須で起こりがちな「茶葉の詰まり」がほとんどなく、最後の一滴までスムーズに、かつ美味しく注ぎ切ることができるのです。
手間暇をかけた「黒」の美学
今回手にした黒色の急須は、実は一度焼いただけではこの色になりません。
1.一度焼き上げ、まずは赤色にする。
2.その後に籾殻(もみがら)などと一緒に再度焼き、黒色に仕上げる。
表面を少し削ると中から赤い色が見えるという、3手間も4手間もかかった特別な逸品です。
お茶と急須、それぞれの業界が抱える「光と影」
職人さんの話を聞くうちに、自分たちお茶農家の境遇と重なり、胸が熱くなる場面がありました。
1. 「需要」はあるが「作り手」が足りない
現在、海外での抹茶ブームなどの影響もあり、本物の急須やお茶への需要はかつてないほど高まっています。
今回の急須も、注文してから1年半待ちという人気ぶりです。
しかし、どちらの業界も高齢化が進み、その技術を継承する若者が極端に少ないという厳しい現実に直面しています。
2. 品質に見合わない「適正価格」への挑戦
「こんなに手間がかかっているのに、この値段でいいのか」と感じる部分も同じです。
職人さんが作り上げる高精度の急須が、小売価格8,000円前後から販売されているのは、技術力を考えれば破格と言えます。
自分たちが作る「浅蒸し茶」も、相場が低迷していた時期を乗り越え、ようやく品質に見合う評価が得られ始めたところです。
お茶と急須は一蓮托生。
お茶のポテンシャルを100%引き出すには、詰まりにくく、茶葉を最後の一滴まで泳がせて絞り切れる「精度の高い急須」が絶対に必要なんです。
自分たちの急須を作りたい
自分は今、自宅の一室を喫茶スペースを作ろうと計画しています。
そこで今回購入した急須の職人さんにオリジナル急須を制作してもらえないかと相談してきました。
喫茶スペースで使いたいからです。
まだまだハードルはありますが、実現に向けてコツコツ計画を進めていきます。
相場が良いのになぜ?清水の茶農家が「効率」と「次世代」のために選んだ道
こんにちは!杉山貢大です。
近頃の静岡は、雪が降るほどの厳しい寒さが続いています。
そんな中、私は今、ある大きな決断を実行に移しています。
それは、「絶好調なお茶の面積を減らし、みかん畑を増やす」ということ。
「お茶の相場がいいのにもったいない!」という声も聞こえてきそうですが、そこには自分が農業を末長く、そして楽しく続けていくための、切実かつ前向きな理由があります。今日はその舞台裏をお話しします。
なぜ今、あえて茶畑を減らすのか?
現在、私は少し作業性の悪い茶畑(約1反5畝ほど)の茶の木を抜き、みかんの木へ植え替える作業を進めています。お茶の相場が比較的高い今、そのままお茶を作り続ける選択肢もありました。しかし、あえて今、舵を切った理由は主に3つあります。
1. 父の体力と、現場の「作業性」の問題
うちの父は、もうすぐ80歳を迎えます。今でも現役でバリバリ働いてくれていますが、やはり体力的な負担は無視できません。
私たちが守っている清水の茶畑は、急傾斜地や段々畑が多く、管理や収穫に多大な労力がかかります。特に作業効率の悪い場所をそのままにしておくことは、将来的に大きなリスクになります。
「今、無理なく管理できる形」に整え効率を良くすることが、父の体を労り、農業を継続するための第一歩なのです。
2. 「みかん」という選択肢の可能性
茶畑としては作業効率が悪くても、日当たりが良く、傾斜もそこまで厳しくない場所は、実はみかん栽培には絶好の条件になります。
今回、新しく植えるのは「ゆら早生」という品種です。
和歌山や愛媛が発祥ですが、ここ清水の土地とも非常に相性が良く、驚くほど甘くて美味しいみかんが育ちます。
10月の秋真っ盛りに収穫・販売できるこの品種は、直売所でも非常に人気があり、私たちの新しい柱になってくれるでしょう。
3. 5年後、10年後の「未来の農園」のために
苗木を植えてから、しっかりとした実が成るまでには約5年かかります。
5年後、父が鍬を置き畑から卒業した時に、「自分が一人でも管理しきれる、効率の良い農園」が整っている状態にしたい。
「お茶もみかんも、最高の品質で届けたい。でも、自分たちが倒れてしまっては意味がない。」
だからこそ、あえて面積を整理し、防除(消毒)や管理がしやすい環境を今から作っています。
これは決して「縮小」ではなく、次世代へつなぐための「最適化」という攻めの決断です。
まとめ:美味しいものを届け続けるために
茶の木を抜く作業は、重機が入らない場所もあり、コツコツと手作業で運ぶなど体力勝負の連続でした。
でも、ようやく片付けが終わり、これからはバックホーで土を耕し、3月中旬の苗植えに向けて準備を進めていきます。
5年後、小学生になった娘や新しく生まれてくる家族と一緒に、この新しく作った畑で「ゆら」を食べる日が今から楽しみでなりません。
これからも「心に平穏を」お届けできるよう、時代に合わせて形を変えながら、清水の豊かな味を守り続けていきます。新しく生まれ変わる畑の成長を、ぜひ一緒に見守ってくださいね!
【完売御礼】感謝感謝の甘酸っぱい「はるみ」の物語
こんにちは。杉山貢大です。
先日より発送を進めていた柑橘「はるみ」ですが、おかげさまで我が家の在庫はすべて完売いたしました!
手に取ってくださった皆さま、本当にありがとうございました。
今年のはるみは「酸」が非常に強く出たのが特徴です。
少しでも酸味を落ち着かせるために発送時期を遅らせたりと、試行錯誤のシーズンでした。
サイズも小玉傾向で不揃いですが、その「酸っぱ旨い」刺激をポジティブに楽しんでいただけていたら嬉しいです。
発送作業中、平農園さんのタンカンを見る機会がありました。
ヘタの向きまでビシッと揃った梱包の美しさと、圧倒的なクオリティ……。
自分に足りない技術や設備を痛感すると同時に、「来年はもっといいものを作りたい!」と強く火がつきました。
自然の力には勝てない部分もありますが、だからこそ農業は奥深く面白いものです。
来年は「おかわり」注文に応えられる、十分な量の確保と品質向上を目指して精進していきます。
次は本業である「お茶」の季節がやってきます。
皆さんの心に平穏を届けられるよう、また一歩ずつ頑張ります。
来年のはるみも、どうぞお楽しみに!