埠頭から湾を臨む。
さらにその先には東京タワーと月が見える。
どちらも主張しすぎない暖かみのある光り方をしている。
もうすっかり寒くなり、吐き出したため息が余計に霞ませる。
眠らない夜を過ごす時は、現実すらも霞んでいる。
昨夜は久々にクラブで夜を過ごした。そのクラブからは東京タワーが見える。
日付も変わり夜が更けていき、ふと思い出すころにはその灯りは消えている。
改めて見渡すとそこには異常な空間が広がる。
音楽に合わせて皆楽しそうに踊ったり、男女で会話に盛り上がったり。
僕がクラブを好きなのは、皆で傷を慰めに来ているように感じるから。
虚栄や憧憬で身をまとい、闇を消すために表面では明るさを灯らせる。
明るさを失えば自分は深い闇に飲まれ、誰の目にも映らなくなる。
だから必死に光っている。夏の蛍みたいに。僕だってそう。
そして、そこで得る空虚な時間が毎日を乗り越える糧となる。
その連続が僕の行き先を少しずつゆがめていく。
どこにいても見えているはずなのに、
僕はもうどれだけ歩いても東京タワーにたどり着けなくなっているかもしれない。
空虚な心を埋めるのは記憶を奪うショットグラスでもなく、
昼過ぎにサヨナラを告げる名前しか知らない異性でもない。
それなら何が埋めてくれるのか。僕はまだそれを知らない。