2024年2/5【702】Excellent!難易度3 

 アートとは何だろう。 
 美しいもの? 
写実的でリアルなもの? 
唯一無二のもの? 

 数年前に中野京子女史の【怖い絵】シリーズを読み始めたあたりからアートに興味が沸き、ときどき美術関連の本を読んでいる。 

 超写実的な西洋の宗教画が好きな私にはしかし、現代アートは正直未だによくわからなかった。 
 ピカソのキュビズム、マルセル・デュシャンの便器、じゃなくて泉、ジャクソン・ポロックの幼児のイタズラさながらハチャメチャ抽象画に、アンディ・ウォーホルのトマト缶…
(しかしよくここまで詳しくなったなと自分でも驚き)。

 それまでの常識を覆すかつて誰一人として発表しえなかった(知らんけど)斬新な作品たち。
 そこは素直にスゴいと思う。 

 見栄・権力・伝統蔓延る美術界によくぞ挑戦状を叩きつけてくれたよね、あるいは、単なる若気の至りなんじゃないの~?

と思っていたけれと。
 いやはやなんとも、めちゃくちゃすごいじゃん前途のアーティストたちよ!


 かつて『絵画』はプロパガンダであった。 
文字を読めない民衆への宗教的宣伝であり教養の象徴であった。 

それが19世紀、『カメラ』の出現によって状況は一変する。 
 絵画は絵画の意味を成さなくなってしまったのである。

 『絵画』とは何だったのか、そして何であるべきなのか。
 目に映るとおりに描くこと、遠近法の欠点、人は絵画に何を見ているか。 
それまで疑問を呈した者はいなかった(知らんけど)。

 そもそも。 
アート=視覚なのか? 
絵のなのか?物質なのか? 
リアルさとは何か?
なにがアートでありアートではないのか、アートにしかできないことは何なのか? 

 むむむ~
まさかの、どうでもいい哲学的問題に発展してしまったではないか。 

 そして前途のアーティスト達が(著者曰く)そんなトコロまで考えて考えて考え抜いたその結果がこれらの作品だというのか。

 ものすごく府に落ちた。
 そして改めて素直にスゴいと思った。

 意味不明な抽象画、便器やら絵の具の無駄遣いやらを作って
「どうだ!これがアートだ!」
なんて、彼らはおバカさんなのかしら。
 いやいや、彼らこそが天才なのだ!
 以前はそういうレベルでしか考えられなかったが、今は違う。 

 彼らは天才あるいはおバカさんなのではない。

ただ思考し続けた人たち、当たり前のことに初めて疑問を呈した人たち、そして常識への挑戦者たちなのだ(知らんけど)。

 そういう意味で、彼らこそが真の『アーティスト』と言えるのではないだろうか。
 その裏で巨額のお金が動いているのはまた別のお話で。

 一方日本美術に目を向ければ、画面からはみ出す勢いの西洋画に対し余白がありすぎどうしても物足りなさを感じていた私だが、その『空白』こそが私(を含む現代人)に足りないもの、人との対話、自分なりの思考…を生み出しているそうな。

そうだったのか…
日本の文化もなかなか奥が深いな、そして私は全然『思考』していなかったな。。


私にとって本書は【13歳からのアート思考】というよりは『近代美術史』といった側面のほうが強かったけれど、近代美術がたどってきた道こそが『問い』への道だったことを改めて思い知らされた。

残念ながら現在の教育現場では脇に追いやられがちな『自分なりもののの見方や考え方』。

13歳という年齢は無邪気な小学生から、高校進学を第一目的とする中学生になる年齢に相当する。

子どもから大人になるときに忘れないでほしいアート思考。

出来上がった結果(作品)だけが全てなのではなく、目に見えないがゆえに見過ごされがちな、そこまでの思考の道筋こそが、実は大切なのである。

自分だけの答えなんて見つからなくていい。
「見つからない」、それがその時点での答えといえるのかもしれない。

何度でも言おう。
大切なのは答えではなく、答えまでの過程なのである。