2024年1/18【697】very good 難易度3 

 最後に全てがひっくり返る 叙述ミステリー!

 おおっと、ネタバレしてしまった。 
 叙述ミステリーだと紹介すること、すなわち、
「最後に大どんでん返しが待っているからヨロシク」
と言っているようなものである。
 これはこれは失礼をば。 

 ハイそうなのです。 
 こちら『読者の先入観を利用し巧みな仕掛けを用いてミスリードへと導いていく小説技法』俗に言う『叙述トリック』が使われている作品なのです。

度々参考にさせていただいているミステリー音楽系ブロガーY様がご紹介されていたこともあり、初めからそれ前提で読みました。 

でも、全く気がつきませんでした!

 いや、違和感は最初からありましたよ?←負け惜しみ 

 でもね、なぜだろうか、「怪しい」と心の奥底で何かが蠢くんだけれど、それから先に思考が進まない。 
そして「ああ、こういう話なのね」と素直に話に没入してしまう。 
 これこそが先入観の恐ろしさ。

 そしてその思い込みによって進む物語は…

作者が本来意図した物語ではなく、私が勝手に作り出した全く別のストーリーなのである。
ということを作者は意図しているんだけど。

 私は正しい。 この記述はこういう意味である。
私の解釈は間違っていない。 
 そうやってガチガチに固められた思い込みと一般論を前提に読んでしまうんだよね。

 そうすると、もう世界観がそういうものにしか見えなくなる。
叙述ミステリーだとわかって読んでいてもなお。 

 嗚呼、つい先日【錯覚の科学】読んで学習したばかりなのにっ!

 私がみている世界が全てではないよ、人は文章で誘導される生き物なんだよ、って。
 ムキー、まんまと騙された!
悔しい~(そして快感っ)!

 あの、思考が完全停止する瞬間が楽しい。
 え?
私なにか間違ってました?
え?
ミスリードどこにあった?えっ?えっ?
と振り返るのが楽しい。 
 あーーアレねぇ~!
ハイハイ、おかしいと思ってたんだよね~! ←負け惜しみ 

 再読。 
すると、一度読んだにもかかわらず予想だにしなかった全く新しい別の物語が、姿を表すのである。

ひぇ~~ 

 本書は『再読率200!!!初読はミステリー、2度目はホラー』というキャッチコピーが付いているのだが、あながち間違ってもないなと思う。 

確かにホラーだわ… 
((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル 

 今まで読んできた叙述ミステリーは「騙された~!」で終了したものが多かったが、叙述トリック要素以外に注目しても、いちホラーファンとして、いち都市伝説ファンとして、いち心理学ファンとして、なかなか考えさせられる深い要素が込められている話ではと思う。 

 幾つか難を言わせてもらえば、
 ①視界に入った瞬間気になって文字が頭に入らなくなるため、傍点多用は止めてほしい(それも戦略か?)。 
 ②最後のネタバレ解説がくどい。あ、でも解説がなかったら「意味わからない」で終りそうだからあったほうが親切なのかしら。
 ③孤島&嵐&警察が来れないというお決まりのパターン、なんとかならんかね。 

 それにしても、私ってまだまだ先入観の塊だともう何度目かわからないけれども、再確認。
 いつか初読の最中で叙述トリックを見破るのが、私の夢である。