2023年12/28【692】good 難易度3

 京大卒の臨床心理士が沖縄に生息する謎の怪しいヒーラー達の生態を探る、涙と笑いの学術エンターテイメント!ということで読んでみた。

 沖縄には独特の文化があり、謎のヒーラー達が多く生息しているらしい。 
 著者は大学で学んできた臨床心理に疑問を持ち、心の治療とは何か、なぜ沖縄には謎のヒーラーが多いのか、なぜ人々はそれで癒されるのか…
について、面白そうなのでちょっと調べてみることにしたという。 

 著者は某財団から資金をゲットし、そのお金であらゆる種類の『野の医者』=近代医学の外側で活動している怪しい治療者に会いに行き、インタビューし自ら施術を受けてみる。

 野の医者はかなり胡散臭い。 
低周波、オーガニック、高酵素カプセル、ハーブ、タロット…
 このあたりはまだマシなほうで、ミルミルイッテンシューチューだの、先祖のオバアがどうだの、愛と光を体に注入するだの、マインドブロックバスターだの… 
 相当数の胡散臭いヒーラー達が沖縄には存在しているようだ。 

まぁ、調査のしようがないので沖縄だけが特別なわけではないのかもしれないが。

 なぜ沖縄にヒーラーが多いのか。
 なぜこんなに内容が個性的なのか。 
本当に癒されるのか。 
本当に心の病は良くなっているのか。 
その力はホンモノなのか。
 その著者なりの答えが本書には載っていて「なるほどなぁ」と納得ではあったけれど。

 ちなみに「なぜ沖縄には多いのか」の答えを言ってしまえば… 
 沖縄島民は貧しく、貧困ゆえの不安から心の病に陥る人が多く、カウンセラー的な行為が受け入れられやすい。 
 そのカウンセラーによって心が癒された者は、自分が癒されたその施術を信じたいがために、他人にも施術しようとする(こうして新たなカウンセラーやヒーラーが誕生する)。 
 実際にそれはお金、つまりビジネスに繋がる。
 が基本的に個人事業となるため、彼らはマメな新規開拓が欠かせない。 
 よって沖縄ではスピリチュアルなイベントも多くなり、そのループによってどんどん野の医者が増えていく。
 というわけらしい。 

 なーんだ。
 結局世の中お金なのか(あくまで著者の推測ではあるが)。 
なんだかガッカリ。

 次に「本当に心の病が癒されるのか」については… 
 詳細はぜひ本書を手にとって確かめていただきたいためこちらでは割愛するが、結局のところ。

 みんな、悩んでいるのだ。 

癒す者も癒される者も、誰かに認めてもらいたい、必要とされたいのだ。
 みんなそれぞれ不安と悩みを抱え、自分なりの幸せと妥協点を探し、自分を納得させるために自分なりの人生を歩んでいる。

 野の医者も、元の元をたどれっていけばやがてフロイトやユングに行きつく。 
ではしかし、フロイトやユングと野の医者は何が違うのだろう。 

 臨床心理とは、正規の医療とは、何なのか。
 正規とは?医療とは?心の病とは?癒されるとは?「わからない」。 
ということが、私にも少しだけわかったような気がした。←こういうのが一番タチが悪い 

 そんなことよりも!

 私が本書について言いたいことはただ一つだけである。 
それは… 

 高野(秀行)さんには敵わないよ~っっ! 

 というのも本書、本文で著者自ら書いているが、ここでも度々書評している私が大好きな『辺境ノンフィクションライター・高野秀行』をお手本にしたものだそうだ(高野氏が面白かったため)。 

 文章の書き方も『怪しいところに付いていく』スタイルも非常に高野的であり、しかしそれがまた、スベっているんだなぁ。 

無理に真似して面白くしようとしている感がハンパない。
 へんな高野的ギャグなんて言わなくていいのに。。 

 個人的にはそのへん中途半端に作品の足を引っ張っているように思えて仕方なかった。
 あえて読者に媚を売ることなどせず、著者自身の言葉(文体)で綴ってくれたほうがよっぽど好感が持てたはず。 

 という一点だけが残念な本書であった。 
 もう一度出直してこーいっ!  ←偉そう