2023年9/30【672】good 難易度3

フランケンシュタインと言えば。

暗闇の実験室、外は嵐、雷が鳴り響き、横たわるツギハギの怪物フランケンシュタインと、傍らにはマッドサイエンティスト。
「グヘヘヘ~~」
ゴロゴロ…ピカッ!ドーーーーン
「キャーーーーーッッ!」

なんて場面を想像するのではないだろうか。


ところが!
ちょっと違うんだなぁ。

ここで少しフランケンシュタイントリビアをご紹介しよう。

①『フランケンシュタイン』とは怪物の名前ではなく、怪物をこの世に生み出した博士の名前である→これは知ってた

②作者は女性、しかも作品を書き始めたのは19歳(発表時21才)のときである→へぇ!

③この作品は作者が旅の途中にバイロン卿らと怪奇談義をするなかで思い付いた話である→へぇ!

④そのときバイロン卿が創作した話は『吸血鬼』である→へぇ!

⑤と思いきや、『吸血鬼』実際の作者はバイロン卿の専属医ポリドリである→へぇ!

⑥ちなみに「事実は小説より奇なり」という言葉はバイロン卿の言葉である→へぇ!

へぇ~へぇ~へぇ~!



えーさてこの作品。
今から約200年ほど前に発表されたものだが、なかなか斬新な手法で書かれていて少々驚いてしまった。


醜い怪物としてこの世に生を受けてしまったため人間から散々酷い仕打ちを受け苦しんだ、
と怪物は生みの親であるフランケンシュタイン博士に語った、
と博士は海で遭難しているところを助けてくれたウォルトンに語った、
とウォルトンは船旅の途中で姉に手紙で語った、
という手紙を我々は読んでいる、
という体になっている。
いわゆる三重(四重?五重?)構造である。

なんだか訳が分からなくなりそうではあるが、小娘(失礼)が書いたとは思えない大変読みやすい話であった。


現代に読んでも十二分に考えさせられることの多い題材であることも注目に値する。

科学の力を盲信し(本人曰く)決して作ってはいけなかった怪物をこの世に生み出してしまったフランケンシュタイン博士。
このあたりは原爆を作ってしまったオッペンハイマーの話が頭を過る。
 


そして『怪物』の暴走。
実は彼、ものすごーく頭が良く自分一人でどんどん知識を吸収し学習していくのだが、まさに人工知能とディープラーニングそのまま。

最近はAIに押されぎみで(私の中では)下火になっているクローン技術の話にももちろん通じるものがあり、たかが古典フィクションなどと言っていられない。


知性と感情を獲得した『怪物』の嘆きがまた、悲しい。

自分は好き好んで醜悪な化け物として生まれたわけではない。
それなのに周囲全ての人間、生みの親からさえも疎まれ嫌われ蔑まれる。
偏見に満ちた目で見られ誰一人怪物の話に耳を傾ける者はいない。
書物から知識を得、感動を覚えても、それを誰かと共有することができない。
ただただ孤独がツラい。
たった一人でいい、自分を理解してくれる人がほしいのだ、と。


現代に居きる私達の悩みも同じではないだろうか。


AIの暴走により人類は滅びる的な映画が最近は多いが、誰からも理解の得られない『怪物』の暴走は、この世の未来に思えてならない。


陳腐な感想になってしまうが、人間が人間らしくあること、自分とは違う他人を排除するのではなく認めあい、会話をし、心通わせること、そのことを忘れないようにしたいと切に思った。


ちなみに本書も、映画【メアリーの総て】をうっかりアマゾンプライムビデオで観てしまってから読んだ作品。
当時欧州の世界観や登場人物がとても美しい映画。


🌼コメント宜しくお願いします😊🌼